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食料品の消費税率をゼロにする案や、給付付き税額控除の導入をめぐる議論が活発化しています。物価高対策として注目を集める一方で、その多くは目先の政策論に終始している印象も否めません。少子高齢化と財政悪化が進むなか、日本の消費税を中長期的にどう位置付けるべきなのか。本稿では、現在の議論を整理するとともに、将来を見据えた「消費税の骨太の方針」の必要性について考えます。

食料品消費税ゼロと給付付き税額控除をめぐる議論

食料品の消費税率をゼロにする案と給付付き税額控除の実施に向けて、社会保障国民会議の実務者会議および有識者会議では、6月の中間取りまとめに向けた議論が進められています。

議論されている主な論点を整理すると、次の3点に集約できます。

第1に、食料品の消費税率をゼロ%にする案と、レジ改修などの負担を考慮して1%に引き下げる案の両論があるものの、何らかの形で消費税減税を実施すべきだという考え方です。

第2に、消費税減税の効果を疑問視し、給付付き税額控除を優先すべきだとする考え方です。この場合、制度導入の第一歩として個人単位の簡素な仕組みを採用する案が検討されています。

第3に、食料品消費税ゼロや給付付き税額控除とは別に、中東情勢の緊迫化や物価高などによる経済不安に対応するため、迅速な給付措置を優先すべきだという意見です。

現在の情勢を踏まえると、この3つの選択肢のいずれかが採用される可能性が高いと考えられます。しかし、2月の総選挙で掲げられた公約との関係もあり、全体としては場当たり的な政策論に終始している印象を受けます。

「骨太の方針」と呼ぶにふさわしい議論なのか

政府は、小泉政権時代から使われてきた「骨太の方針」という言葉を好んで用いています。

この言葉からは「本格的な改革」や「長期的な国家戦略」といった印象を受けます。しかし、現在の消費税をめぐる議論を見ると、本当に「骨太」と呼べる内容になっているのか疑問を感じざるを得ません。

突然実施された総選挙と、それに伴う公約を背景として、短期間で結論を求める議論が進んでいます。その結果、目先の制度設計や実施時期ばかりが注目され、中長期的な税制の方向性についての議論が十分になされていないように思われます。

今必要なのは、現在進行中の政策論争とは別に、日本の消費税制度を将来的にどのような形にしていくのかという「骨太の方針」を示すことではないでしょうか。

消費税減税に対する慎重論も根強い

消費税減税は国民の関心を集める政策ですが、必ずしも幅広い支持を得ているわけではありません。

少子高齢化が進み、社会保障費の増加が避けられないなか、財政状況を考慮すれば、むしろ将来的な消費税率引き上げは避けられないという見方もあります。

しかし、消費税率引き上げは長年にわたり「政界のタブー」とされてきました。消費税増税を主張すると選挙で不利になるという考え方が、政治の世界では依然として根強く存在しています。

そのため、政治家は減税論を語りやすい一方で、税率引き上げを含めた中長期的な議論には踏み込みにくい状況にあります。

中長期的な税制の姿を示すべき時期に

来日したOECDの事務総長も、消費税減税には慎重な見解を示しています。

今後の税制を考えるうえでは、その時々の経済状況に応じて税率を上下させるだけではなく、日本の税制全体をどのような方向に導いていくのかという長期的な視点が欠かせません。

少子高齢化が進む日本では、所得税や法人税だけで社会保障財源を確保することは容易ではありません。そのため、安定的な税収を確保できる間接税が税制の中心的な役割を担うことになると考えられます。

また、欧州諸国の付加価値税率と比較すると、日本の消費税率10%は依然として低い水準にあります。将来的には15%程度、あるいはそれ以上の税率が必要になるとの見方も、税制関係者の間では決して珍しくありません。

目先の対策と将来の税制改革を分けて考えるべき

現在は、食料品消費税ゼロや給付付き税額控除をめぐる議論が過熱しています。そのため、消費税制度そのもののあり方について冷静に議論することは容易ではありません。

しかし、本来であれば、目先の物価高対策と中長期的な税制改革は分けて考えるべき問題です。

食料品消費税ゼロにするのか、給付付き税額控除を導入するのかという選択だけでなく、日本の税制を10年後、20年後にどのような姿にするのか。その視点を欠いたままでは、真の意味での「骨太の方針」とは言えないでしょう。

いま求められているのは、短期的な景気対策を超えた、消費税の将来像を示す本格的な議論なのであります。

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員