ウェブブラウザ「Google Chrome」の最新安定版であるバージョン143がリリースされました。UnicodeサポートライブラリのICUがバージョン77にアップグレードされたことにより、Unicodeバージョン16.0.0がサポートされ、同時にロケールデータも更新されます。変更対象のロケールには日本語も含まれており、特定のフォーマットを前提とするウェブコンテンツは更新による影響に注意する必要があります。

Chrome 143  |  Release notes  |  Chrome for Developers

https://developer.chrome.com/release-notes/143

◆ICU 77:Unicodeバージョン16.0.0をサポート

UnicodeサポートライブラリのICU(International Components for Unicode)がバージョン74.2から77.1にアップグレードされます。ICUの更新に伴い、Unicodeバージョン16.0.0がサポートされ、またロケールデータも更新されます。これにより、以下の影響が発生します。

・イタリア語ロケールの数値形式で、4桁の数値の3桁区切りが省略される(1.234 → 1234)

・一部の英語ロケールで、曜日の後にカンマが追加される(「Saturday 30 April 2011」→「Saturday, 30 April 2011」)

・IntlとRegExp(V8)に多数の細かな変更

・IDNAのアップグレード

・テキストのセグメンテーション:「word-break: auto-phrase」を使用した際の日本語の改行が改善

「テキストのセグメンテーション」については、Chrome 119で実装された「日本語の改行ルール変更」に関連する変更となっています。いずれも通常は問題になる変更ではありませんが、もしウェブコンテンツが特定のフォーマットで表示されることを前提としている場合、更新の影響を受けて予期せぬ挙動を引き起こす可能性があるため、該当するコンテンツの開発者に限っては注意が必要です。

◆CSS:アンカー・フォールバック・コンテナクエリ

CSSに「@container anchored(fallback)」が導入されます。これは、適用されるposition-try-fallbacks値に基づいてアンカー配置要素の子孫をスタイル設定するものです。

#anchored {
position-try-fallbacks: flip-block;
container-type: anchored;
}

@container anchored(fallback: flip-block) {
#anchored > .arrow {
--arrow-rotation: 180deg;
}
}

このクエリを利用することで、アンカーとアンカー要素の相対的な位置関係に基づいて、アンカー要素のテザーやアニメーションのスタイルを設定できます。

◆EditContext API:TextFormat underlineStyleおよびunderlineThickness

ChromiumがリリースしたEditContext APIに不具合が含まれていたため、修正されました。具体的には、textformatupdateイベントによって提供されるTextFormatオブジェクトが、underlineStyleプロパティとunderlineThicknessプロパティに誤った値の組み合わせを返していたため、正しいものに修正されました。

・{“None”, “Solid”, “Dotted”, “Dashed”, “Squiggle”} → {“none”, “solid”, “dotted”, “dashed”, “wavy”}

・{“None”, “Thin”, “Thick”} → {“none”, “thin”, “thick”}

◆CSS:font-language-override

CSSにfont-language-overrideプロパティが実装されました。このプロパティを使用して言語タグを指定することで、OpenTypeグリフの置換に使用されるシステム言語をオーバーライドできます。

font-language-override: "ENG"; /* 英語の字形 */
font-language-override: "TRK"; /* トルコ語の字形 */

これにより、きめ細かいタイポグラフィ制御が可能になり、多言語コンテンツや言語固有のグリフバリアントを含むフォントの使用が便利になります。なお、これまでのChromiumはOpenTypeグリフの置換はシステムの言語設定に完全に依存していましたが、今回の更新によりFirefoxと同等の挙動となります。

◆contenteditable要素への入力イベントのDataTransferプロパティ

コンテンツ編集可能なcontenteditable要素での編集操作中にクリップボードやドラッグ&ドロップのデータにアクセスできるようにするため、InputEventのdataTransferプロパティにinputTypeとしてinsertFromPaste・insertFromDrop・insertReplacementTextを設定します。その際、dataTransferオブジェクトにはbeforeinputイベントで使用されていたものと同じデータが含まれます。なお、この変更はcontenteditable要素のみが対象であるため、<textarea>や<input>といった一般のフォームコントロールには適用されません。

◆IWA:Web Smart Card API

独立したウェブアプリ(IWA)向けにWeb Smart Card APIがサポートされます。この機能により、スマートカードを扱うアプリケーションをウェブプラットフォームに移行できるようになります。管理者は次の2つの方法でこのAPIの利用可否を制御できます。

・グローバル:DefaultSmartCardConnectSettingポリシーを使用する

・アプリ単位:SmartCardConnectAllowedForUrlsポリシーとSmartCardConnectBlockedForUrlsポリシーを使用する

◆ゲームパッド:ongamepadconnected・ongamepaddisconnectedイベントハンドラ属性のサポート

WindowEventHandlersインターフェースミックスインにongamepadconnectedイベントハンドラおよびongamepaddisconnectedイベントハンドラを追加します。これにより、次のイベントハンドラ属性が有効になります。

・window.ongamepadconnected

・document.body.ongamepadconnected

・window.ongamepaddisconnected

・document.body.ongamepaddisconnected

◆background-position-x/yの一括指定

background-positionの一括指定プロパティで、背景画像の端の1つに対する相対的な位置を指定できるようになります。

.element {
background-image: url(flower.gif);
background-repeat: no-repeat;
background-position-x: left 30px;
background-position-y: bottom 20px;
}

◆その他の更新

・JavaScript:DOM APIがより多くの文字数を受け入れられるように

・FedCM:IdPからの構造化JSONレスポンスをサポート

・投機ルール:モバイルの「eager」の積極性を改善

・ウェブアプリマニフェスト:マニフェスト仕様にアップデート対象に関するアルゴリズムを追加

・WebGPU:テクスチャコンポーネントのスウィズルを使用し、GPUTextureViewsによるカラーコンポーネントの再配置・置換が可能に

・WebTransportアプリケーション・プロトコル・ネゴシエーション:WebTransportハンドシェイク内で使用するプロトコルをネゴシエート可能に

◆オリジントライアル

・Digital Credentials API:デジタル認証情報の発行をサポート

・TCPソケット:接続プールの上限をランダム化

◆廃止予定・段階的廃止

・Intl Locale Infoのゲッターを非推奨に

・XSLTを非推奨に

・クライアントメタデータのFedCMプライバシー適用:メタデータを悪用した複数サイトでのユーザーID関連付けを禁止

・FedCM:nonceパラメータをトップレベルからparamsオブジェクトのフィールドに移行

・ FedCM:IdentityCredentialErrorのcode属性の名前をerrorに変更

また、Google Chrome 143には13件のセキュリティバグフィックスが含まれています。

なお、次期安定版の「Google Chrome 144」は現地時間の2026年1月13日(火)にリリース予定です。