声優・永瀬アンナが今振り返る『呪術廻戦』という存在 「“大人の階段”を登るきっかけに」
『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』が、5月30日より公開中。本作は、呪術高専時代の五条悟や夏油傑の姿を描いた、TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」全5話を再構成したものだ。封切りに先立ち、2023年のオンエア当時に新人ながらメインキャラクター・天内理子役に抜擢された声優・永瀬アンナにインタビュー。様々な作品を経験した今、改めて当時の心境や役づくり、大先輩である中村悠一や櫻井孝宏との共演、そして自身にとっての『呪術廻戦』と“天内理子”という存在について聞いた。
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■黒井美里は“現実世界”でも支えてくれていた
ーーTVアニメ『呪術廻戦』で「懐玉・玉折」が放送されたのが2023年です。比較的キャリア初期と言える段階でメインキャラとなる天内理子役を勝ち取ったわけですが、当時のお気持ちはいかがでしたか?
永瀬アンナ(以下、永瀬):まずオーディションに呼んでいただけたこと自体がすごくビックリでしたし、まさか受かるなんて思っていなかったので、決まったときは本当に驚きました。マネージャーさんに「決まったよ」って言われたときは、「えっ……!」って感じで(笑)。理子ちゃんはすごく切なさや覚悟を背負ってる役だと思ったので、私自身も「これはちゃんと向き合わないと」と強く思いました。
ーー収録で印象的だったエピソードはありますか?
永瀬:黒井美里役の清水理沙さんに初めてお会いしたとき、「お守りしますよ」って言ってくださったのがすごく印象に残っています。理子ちゃんを守る役柄そのままで、現場でも本当に支えていただきました。だからこそ、自信を持って演じられたのかなと感じています。
ーー役づくりでは、どのような点を意識されていましたか?
永瀬:理子ちゃんって、“星漿体”という、いわば若くして呪術界のために命を捧げなければならない悲しい運命を背負っているんですが、一方で初登場シーンから「オラーー!」ってあの五条悟にビンタしたり、すごくエネルギッシュな女の子なんです(笑)。『呪術廻戦』は“暗くて重い”というイメージが強かったんですが、理子ちゃんはその中でもすごく明るくて、突き抜けた雰囲気があって、他のキャラと明らかにトーンが違う異質なキャラだな、と。なのでまず、「いくぞ!」という気持ちで、彼女の持つパワーやインパクトに負けないように大きな声で堂々と登場することを意識しました。
ーー実際に演じてみて、その印象は変わりましたか?
永瀬:そうですね。演じてみて「明るく振る舞っていても、心の中には覚悟や葛藤がたくさんある」ということを強く感じました。完成版の映像を観たときにも、苦しくなってしまったんです。未来がない子というのは、こんなにも切なく見えてしまうんだ……と。特に、櫻井孝宏さんの演じる夏油傑が理子ちゃんに「帰ろう」と手を差し出すシーンでは、そのとても穏やかで包み込むよう優しさを受けて、理子ちゃんも「この人になら頼れるかも」と思ったんだと思います。でも結局、未来はない……その切なさが強く胸に残りました。
■『呪術廻戦』出演後の反響
ーーTV放送から2年経ちましたが、その間に何か変化はありましたか?
永瀬:中学時代の同級生から突然「『呪術廻戦』出てるよね?」と、何回かLINEが来ました。(笑)。自分が声優だって話してなかったので、ビックリ。それでも気づかれるくらい『呪術廻戦』って大きな作品なんだなと改めて実感しました。あとは、理子ちゃんでの演技がきっかけで、別の作品の現場に呼んでいただいたり、オーディションに繋がったこともありました。ひとつの自信になりましたね。
ーーなるほど。
永瀬:一方で、「役の解釈をより深められたら、きっともっと素敵なものにできそうだな」と感じた2年でもありました。理子ちゃんを演じさせてもらったときは駆け出しのド新人で、その未熟さが役に上手くハマったのかと思いますが、あれから2年が経って様々な経験を積ませていただき、これから出会う役に対しての向き合い方やアプローチをいろいろ考えたいと思っています。
ーーその駆け出しのタイミングで、五条悟役の中村悠一さんと夏油傑役の櫻井孝宏さんというベテラン声優と一緒にお芝居をしたわけですが、お二人の印象はいかがでしたか?
永瀬:中村さんも櫻井さんも、本当に役に対する解像度が高く、そして何より芝居に対する姿勢がすごい。その印象は当時も今も変わりません。「AnimeJapan 2025」のステージイベントでご一緒させていただいたときも、お話を伺っていてキャラクターへの向き合い方や理解の深さに、自分にはまだ足りていないところがあることを感じると同時に、改めて尊敬できる方たちだなと改めて感じました。
ーーもしも今、2年前の「懐玉・玉折」収録当時、駆け出しの頃の自分にアドバイスを送れるとするなら、どんな言葉を伝えたいですか?
永瀬:「素直にやっていいよ」って言いたいです。作品によって、その現場によって求められることが違うので、当時はそのすべてに応えようとして「あわわわわ!」って慌てたり戸惑うこともあったんです。でも、もっと自分を信じて、「自分の思うように芝居をやっていいんだよ」って伝えたいですね。
ーー永瀬さんは現在20歳を迎えましたが、10年後……30歳の自分に贈りたい言葉はありますか?
永瀬:「30歳からが本番だよ」ですね。ある先輩から「今は“若さ”でお仕事をいただけているところもあるけど、30歳からは“実力”と“信頼”が試される」と言われまして。だから、今はその土台を築く大事な時間。おごらず、誠実に取り組んでいきたいと思います。
ーー改めて永瀬さんにとって『呪術廻戦 懐玉・玉折』という作品、“天内理子”というキャラクターはどのような存在でしょうか?
永瀬:「懐玉・玉折」って「青春」がキーワードだと思うんですけど、こんなに“青”という言葉が切なく感じたことはなかったです。ちょうど自分が17歳、18歳の頃に収録が行われていたんですが、今はもう取り戻せない五条と夏油の関係や、理子ちゃんの胸の内に秘められた本心など、作品に詰まった愛おしさや苦しさがすごくリアルに感じられたのを覚えています。理子ちゃんも、当時の精神がぶれぶれで未熟な自分と重なる部分もあって、いちキャラクターとしてだけじゃなく、人生の経験としてもすごく大きな存在でした。そしてこの『呪術廻戦』での経験があったからこそ、その後に色々なことに対して自信を持てたり、物事を深く考えるようになったり……自分が“大人の階段”を登るきっかけになれたのではないかと思っています。
ーー最後に、『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』を観る方へのメッセージをお願いします。
永瀬:『呪術廻戦』は人間のリアルな“怖さ”も描かれていますが、その中にふとした瞬間に光るコメディ要素もあって、誰でも楽しめる作品だと思います。劇場版総集編は5話分が凝縮されていて、感情の流れもより追いやすくなっていますし、キタニタツヤさんが歌う主題歌「青のすみか(Acoustic ver.)」など音の魅力も詰まっています。きっと満足していただける時間になるはずですので、ぜひご堪能ください。(文=小野瀬太一朗)

