ドンファン裁判 無罪でも元妻は「来年11月まで出て来られないし遺産も使えない」「その間に控訴審でひっくり返る可能性も」

“紀州のドンファン”と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時77)の元妻・須藤早貴被告(28)が殺人罪に問われた裁判で、12月12日、和歌山地裁は無罪を言い渡した。だが、これで須藤被告は“無罪放免”になったわけではない。「別事件」の実刑判決が確定しているため、その刑期を終えるまでは拘置所で過ごさなければならないのだ。
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裁判員裁判が「裏目に出た」という声も
社会全体が須藤被告に対して疑念を持つ中で出た劇的な無罪判決だった。検察側は、9月12日に初公判が始まって以降全22回のハードな公判スケジュールの中で28人もの証人を出廷させた。

「密室の中で覚醒剤を飲ませたという直接証拠がない中、状況証拠を積み重ねることで有罪を立証できたと検察側は自信満々でした。結局『野崎さんが誤って覚醒剤を摂取したことは否定できない』という理由で無罪になりましたが、取材した記者たちの間でも『そんなことがあるのか』と驚きの声が上がっています」(社会部記者)
裁判員裁判が「裏目に出た」という声も出ているという。
「裁判員裁判では、裁判官裁判よりも量刑が重くなる傾向があると言われています。ただ、今回の裁判員は直接証拠がない中、殺人という重い罪での選択を迫られた。疑わしきは罰せずの慎重論に傾いたのでしょう」(同)
検察は間違いなく控訴する
須藤被告は無罪が言い渡された後、泣きながら判決理由を聞いていたという。だが、これで疑惑から完全に解き放たれたわけではない。言うまでもなくまだ判決が確定したわけではないからだ。
「検察は間違いなく控訴してくるでしょう。実際、控訴審で裁判員裁判の判決がひっくり返るケースはいくつもあります」(同)
しかもその結末を拘置所で待たなければならない。別事件で実刑判決が出ているからだ。須藤被告は、野崎さんとは別の男性から留学費用などと偽って現金約3000万円をだまし取った詐欺罪に問われ、今年9月2日、和歌山地裁から懲役3年6カ月の判決を受けた。双方が控訴しなかったため、同月18日、1審判決は確定している。
その刑期が未決勾留日数を差し引いても来年11月まで残っているのである。
「その間に控訴審が始まり判決まで出るでしょう。そこで重ねて無罪を勝ち取り、残りの刑期を終えてはじめて釈放されることになります」(同)
遺言訴訟に親族が負ければ「相続が減る」
当然、それまで野崎さんが残した遺産にも手を触れることはできない。しかもその間にもらえる遺産が大きく変動する可能性がある。遺言訴訟が続いているからだ。
野崎さんは田辺市に全額遺産を寄付するとの遺言を残していたが、野崎さんの親族が「本人以外が作成した可能性が高い」と主張。遺言書の無効を訴える訴訟を起こして田辺市と争っている最中だ。7月に出た1審判決では田辺市が勝訴したが、親族側は不当だとして控訴している。
遺産問題の決着は、遺言訴訟と須藤被告の裁判の結果次第で4つのパターンが想定される。相続人が被相続人を死亡させた場合、相続の立場を失う。つまり、早貴被告が殺人の罪で実刑判決を受ければ、遺産を相続できなくなってしまう。
「その場合、遺言が有効だと判断されると田辺市が全額、無効だった場合は親族が全額相続することになります」(同)
須藤被告の無罪がこのまま確定すると、
「遺言が有効だった場合は遺留分を須藤被告が主張できて田辺市と折半。無効だった場合は4分の3を須藤被告、残り4分の1を親族が相続することになります」(同)
公判でもカネのための結婚だったと堂々と明かした須藤被告にとっては、遺言裁判の行方も気になるところなのだ。被告人質問で須藤被告は夫だった野崎さんに対しこう言い放った。
「もうちょっと、死に方を考えてほしかった。社長がこのタイミングで死んだせいで、私は何年も人殺し扱いなので。クソ」
無罪をもぎ取った今、拘置所の中で金の使い道を考え始めているのかもしれない。
デイリー新潮編集部