東武伊勢崎線や日比谷線などさまざまな路線が乗り入れ、駅ビルの巨大さで有名な足立区の「北千住駅」。通学や通勤での乗り換え利用者は非常に多い駅ですが、降りた先の街中には何があるのか。この記事で詳しく紹介します!

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北千住駅周辺に住宅・学校・職場などがない人は、北千住という街にどのようなイメージをお持ちでしょうか。足立区全体のイメージにもつながり「何だか薄暗い」「治安がちょっと……」という印象を持たれる場合も少なくないかもしれません。しかし実際に降りて歩いてみれば、いい意味で足立区らしい、下町や商店街が充実する温かい街なのです。

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北千住駅の基本情報:家賃相場はいくら?

北千住駅は東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)、東京メトロ日比谷線・千代田線、JR常磐線・上野東京ライン、つくばエクスプレス(TX)の4社が乗り入れる、足立区最大のターミナル駅。加えて、東武スカイツリーラインの一部電車は押上駅で半蔵門線に接続するので、乗り換えなしで都内のさまざまな場所に行ける非常に便利な駅です。また、千代田線のホームがあるのは地下のかな〜り深い場所。毎週平日の朝夕は、東武線や日比谷線のホームと千代田線ホームとの間で、乗り換えのため猛ダッシュする学生&社会人が続出することでも有名です。

駅周辺の家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約7.4万円、1LDKが約12.2万円、2LDKが14.4万円(SUUMO、2024年9月7日閲覧)。東武伊勢崎線内では始発の浅草駅より約1万円ほど安く部屋を借りられます。

江戸時代に宿場町として栄え、足立区最大の商業地帯に

北千住の地域は江戸時代から日光街道の宿場町「千住宿」として栄え、1896年には日本鉄道土浦線(現在のJR常磐線)が通って駅が開業。1960年代以降は乗り入れ路線の増加や駅舎改造によって規模が非常に大きくなり、それに伴って駅周辺の住宅街・商店街・繁華街も発展していきます。2000年代以降は駅前に大学キャンパスが誘致されるなど、足立区でも最大の商業地帯となりました。

駅ナカ、駅周辺には大型商業施設が複数

北千住駅は乗り入れ路線の多さだけでなく、改札内の店舗が多いことでも有名。東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)の駅改札内は「EQUiA(エキア)北千住」という、ちょっとしたショッピングモールになっています。1階ホームを上下から挟む形で、地下1階・2階フロアに「スターバックスコーヒー」「プロント」「サンマルクカフェ」「天丼てんや」「丸亀製麺」など飲食店、ほか雑貨店・書店・ヘアカットなどの店舗が連なっています。北千住駅の住民だけでなく、乗り換え時の食事や休憩、買い物にも便利なところが、北千住駅らしい特徴です。

駅から西口へ

駅から西口に出ると、そのまま地上に降りるのではなく、開放感あるペデストリアンデッキが広がっています。デッキからは北千住駅前通り(きたろーど1010)のアーケードが見えます。デッキ上にはベンチに腰掛けている人、待ち合わせや談笑をしている学生さんなど、地域の方々にとって広場や憩いの場としても機能しているようです。一方、吹き抜け部分のポールに目をやると、豪雨で荒川などが氾濫した際の想定浸水深の表示も。5.9メートルという数字に驚かされてしまいます。有事の際にはデッキのすぐ下まで濁流が迫るという事でしょうか……。隅田川と荒川の間にあり、かつ土地の大半が海抜0〜2メートルほどしかない、北千住周辺特有の事情を考えさせられます。

そびえ立つ「ルミネ北千住」「北千住マルイ」

デッキから駅方向を振り返ると、北千住の駅ビルとほぼ一体化している「ルミネ北千住」の姿がドーンと迫ってきます。街全体を見下ろす、巨大な壁のごとき存在感はかなりのもの。それから左を向いてすぐ見えるのが「北千住マルイ」。このルミネとマルイだけでも、北千住でのショッピング需要を十分に満たせそうです。北千住マルイの最上階(10〜11階)には「シアター1010(センジュ)」という劇場・総合文化施設もあります。さまざまな演劇・コンサートなどが行われているので、こうした催しが好きな人はチェックしてみてはいかがでしょうか。

西口には複数の懐かし商店街が!

北千住駅周辺の特徴は、駅直結の大型商業施設に負けじと、周辺で複数の商店街が元気に活動していることです。例えば、ペデストリアンデッキを降りてすぐ脇の路地にあるのが「ときわ通り」。居酒屋やカフェ、バーなどさまざまな飲食店と酒場が軒を並べており、「千住の永見(ながみ)」など、昔ながらの雰囲気が色濃い居酒屋も多々あります。ひたすら安価な「せんべろ」系のお店や、常連さんと店員さんの人情味あるワイワイガヤガヤな交流など楽しみも多く、気取らず無礼講で飲み明かしたい時はここに立ち寄るのがベストです。

さまざまな地元特化の商店街が並ぶ

また、真っすぐ西方向に伸びるのが、雨の日も安心な屋根付きアーケード街の「北千住駅前通り」。ここには「きたろーど1010」の別名もあり、商店街内に垂れ幕がかかっています。この商店街にある飲食店・雑貨・ショップ・サービスは膨大なほか、途中には「ドン・キホーテ」「イトーヨーカドー」といった量販店も。普段の買い物に非常に便利なスポットです。しかもこの商店街から横道に入る形で「宿場町通り商店街」「千住ほんちょう商店街」「ハッピーロード商店街」など、さまざまな地元特化の商店街が伸びています。ちょっと横にそれてみれば、意外な名店が見つかるかもしれないですね。商店街をずっと西へ歩いていくと国道4号に行き着きます。この国道をさらに南へ進んだ先には、北千住周辺の歴史や文化を伝える「千住宿歴史プチテラス」、京成本線の千住大橋駅、東京都中央卸売市場・足立市場、石洞美術館などが。ちょっとしたロングウォーキングで、いろいろと楽しめる場所がありそうです。

駅東口から徒歩10秒の大学&学生街

北千住駅西口に戻り、構内を渡って東口に移動します。こちらにはデッキなどはなく、階段を降りた先はもう商店街! 西口の商店街よりもいっそう下町色、ローカル色が強い、にぎやかな街並みです。そんな東口駅前に2012年開設されたのが、「東京電機大学 東京千住キャンパス」。100周年記念キャンパスとも呼ばれています。建物は1〜5号館まであり、大学のど真ん中を「電大通り」が突っ切っているという、かなり思い切った構成。校舎の直角なデザインがスタイリッシュです。また1号館1階の外向きの場所では、一般利用も可能な「イタリアン・トマト CafeJr.」も営業しています。キャンパス見学ついでにひと休みするのにちょうど良さそうですね。

なお、北千住駅の東口には、他にも足立学園中学校・高等学校や、足立区立千寿常東小学校などがあり、学生街としての雰囲気も色濃く感じられます。

個性的なお店がずらり

大学を後にして商店街へ戻りましょう。北千住駅の東口から広がる「学園通り旭町商店街」(以下、学園通り)には、安価な町中華やスーパーマーケットのほか、よーく見ると妙に個性的なお店が点在していることに気付かされます。ハワイアンでラム肉なカフェ、「ボイン」なる名前とフォントがインパクト大な高級食パンのサンドイッチ屋、コーヒーとスナックの「バナナ」など、他の商店街ではあまり見ないタイプの店舗がそこかしこにありました。若くて活気ある学生さんが主に利用する街だけあって、店舗側も若い活力とアイデアのあるチャレンジャーが入りやすい風土なのかもしれません。

迷路のような柳原地区で見つけたもの

学園通りを抜けた先は雰囲気が一転し、細い路地や抜け道が複雑に絡み合う中に一軒家が延々と続く、足立区柳原の住宅街へ入っていきます。頭上の街灯をよく見ると「柳原商栄会」の表示が。実はここも「商店街」なのです。歩いている途中で、パン屋の前にワゴンを置いて営業しているコーヒーのテイクアウト店舗を発見しました。こちら「あなたのとなりのコーヒー」は北千住の東側で、移動する小さなコーヒー焙煎所を営んでいます。

ワゴン内にいらっしゃった店主さんにお話を聞いたところ、30年ほど前までは、この柳原商栄会も名前通りに「栄」えていたそうです。現在は道の左右を見ても大半は普通の住宅ばかり、商店らしき建物があってもシャッターを下ろしているなど、商店街らしい面影は希薄になってしまいました。その一方、近くにある「稲荷寿し 松むら 千住支店」の稲荷寿司はその味の良さで愛され、遠方からもお客が訪れるそうです。「あなたのとなりのコーヒー」が店先を間借りしている「パン工房 かわぐち」も創業60年以上になる名店で、地域の人々に愛されているとのこと。長い伝統と地域の絆に支えられたお店が、この地域ではまだ現役で活動中です。

「あなたのとなりのコーヒー」店主さんにお礼を言い、お店を後にしてしばらく散策してみます。なんだか鬼ばかりの世間を渡っていそうな「幸楽」というお店を発見。居酒屋「さん角」は交差点近くの文字通り三角地帯にあるお店。以前よりは探しづらくなったとしても、この地域でまだまだ「商栄」の火は消えていないようです。迷路のような住宅のどこかに自分好みの良店があるのかもと、探してみるのも面白いですね。

荒川沿いには穏やかな日常風景が

柳原地区を抜けた先は荒川沿いの土手。その上からは、川沿いの広大な河川敷を一望できます。サッカー場や野球場があるほか、ランニングにも最適な場所で、平日の夕方には多くの人が右へ左へと走り去っていきます。遠くの鉄橋を電車がのんびり通過していくのを眺めていると、何とも心が和みます。ビル群と川面が隣接した隅田川沿いの風景とはまた趣きが異なる、荒川沿いの穏やかな日常風景です。

北千住は「銭湯の聖地」!

駅の東西に数多くの下町や商店街が伸び、そのどれもが特有な個性と事情を持っている街・北千住。そんな下町と相性が良いものといえば、銭湯! 北千住は駅から歩いて行ける銭湯が、なんと6軒もあるんです。駅の東側にある銭湯は3軒。「梅の湯」はなんと北千住駅東口からわずか2分という、ものすごい「駅チカ」銭湯です。学園通りと柳原地区の境目にあるのが「美登利湯」。タオルのレンタルがあるので手ぶらでも行けます。柳原地区内の「大和湯」は近年リノベーションされた人気銭湯で、店内の清潔感から特に人気です。北千住駅の西側にも、駅から若干の距離がありますが、銭湯が3軒。「ニコニコ湯」は「湯あそびひろば」という文字がポワポワ&虹色でかわいいですね。「金の湯」はサウナ・水風呂・半露天風呂を完備しており、設備が充実!そして最後は、店先が他よりひときわ豪奢(ごうしゃ)な造りの「タカラ湯」。2021〜2022年の特撮ヒーロー番組『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系)の舞台「しあわせ湯」としてロケ地にも選ばれました。

北千住の銭湯はお寺のような和風の外観をした、昔ながらの立派な宮造り建築が多いことも特徴です。銭湯マニアにとっては、湯船だけでなく建築自体を外から・中から見比べてみるのも、さまざまな発見がありそうですね。

【結論】北千住は商店街の多さ、銭湯、下町の匂いが魅力!

北千住駅周辺は駅ナカ&駅近辺の大型商業施設もさることながら、東西に伸びるさまざまな商店街に街ごとの魅力や個性が感じられ、銭湯も多いので歩いていて楽しい街です。ちょっとした探検気分で散策をしてみると、意外な発見があるかもしれません。

この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)