実業家のイーロン・マスク氏はテスラのCEOやX(旧Twitter)のオーナーを務める傍ら、2023年7月にAIスタートアップ「xAI」を設立しました。経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルが9月に、「xAIがテスラにAIモデルのライセンスを供与する代わりに、テスラの収益の一部を受け取る取引について協議している」と報じましたが、マスク氏はこの報道を否定しました。

Exclusive | Musk’s xAI Has Discussed Deal for Share in Future Tesla Revenue - WSJ

https://www.wsj.com/tech/tesla-xai-partnership-elon-musk-30e22313



Musk denies report his xAI in talks over Tesla revenue | Reuters

https://www.reuters.com/technology/musks-xai-talks-share-future-tesla-revenue-wsj-reports-2024-09-08/

Elon Musk says Tesla has ‘no need’ to license xAI models | TechCrunch

https://techcrunch.com/2024/09/08/elon-musk-says-tesla-has-no-need-to-license-xai-models/

xAIは生成AIの「Grok」を開発しており、XではすでにGrokを用いたAIチャット機能が利用可能となっています。2024年3月にはGrokをオープンソース化したほか、4月には「GPT-4V」や「Gemini Pro 1.5」に匹敵する性能を備えたマルチモーダルAI「Grok-1.5」を発表しました。

5月には多数の投資家から60億ドル(当時のレートで約9400億円)の資金調達に成功しており、急ピッチで規模を拡大しています。

イーロン・マスクのAI企業「xAI」が約9400億円を調達してAGI開発に向けて人材を募集、H100を10万台配備予定であることも明かす - GIGAZINE



ウォール・ストリート・ジャーナルに証言した関係者によると、xAIは「テスラにAIモデルのライセンス供与を行い、運転支援ソフトウェアであるフルセルフドライビング(FSD)をサポートする代わりに、テスラの収益の一部をxAIと共有する」という取り決めについて議論しているとのこと。また、xAIはテスラの電気自動車に搭載されるSiriのような音声アシスタントや、人型ロボット「Optimus」のソフトウェア開発にも協力すると報じられています。

テスラが収益の一部と引き換えにAI開発をマスク氏が運営する別企業に委ねるというパートナーシップについて、ウォール・ストリート・ジャーナルは「これはテクノロジー界の大物であるマスク氏が、自身のビジネス帝国全体で資産を自由に共有するという慣行に拍車をかけることになるでしょう」と指摘しています。

実際にマスク氏は、過去にテスラが確保していた高性能チップ「H100」のうち1万2000個を、xAIへ出荷するよう指示していたことが報じられています。この際マスク氏は、テスラにチップを保管する場所がなかっただけだと主張していました。

また、xAIのAIモデルをトレーニングするために、Xへの投稿を利用することもマスク氏は明言しています。

「ツイートをAIで学習してテスラに役立てる」とイーロン・マスクが発言 - GIGAZINE



この報道に対しマスク氏は、「テスラはxAIのエンジニアとの議論から多くのことを学び、教師なしFSDの実現を加速しましたが、xAIから何らかのライセンスを取得する必要はありません。xAIのモデルは巨大であり、人間の知識のほとんどを圧縮形式で含んでいるため、テスラ車の推論コンピューターで実行することは不可能であり、また実行したいとも思っていません。テスラのAIモデルは現実の映像を運転操作に圧縮するため、信じられないほど高密度なインテリジェンスを備えていますが、メモリサイズと帯域幅がH100 GPUなどよりはるかに小さい約300Wのコンピューターで動作する必要があります。また、テスラの実世界AIはすべてのカメラからのビデオ履歴を合わせたサイズが数GBになるため、大規模言語モデルよりコンテキストサイズがはるかに大きくなります」と述べて否定しました。