様々な想いを語ってくれた細貝。新クラブハウス完成はチームに好影響をもたらしそうだ。(C)SOCCER DIGEST

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 窓の外には2面の天然芝グラウンド、1面の人工芝グラウンド、その脇には3面のフットサルコートや天然芝の自由広場など壮観な景色が広がっている。クラブハウスもスタイリッシュで機能的だ。

 今年5月(天然芝グラウンドの利用などは8月)、J2を戦うザスパ群馬の新たな拠点が前橋市に完成したのをご存知だろうか。

 その名もThe Spark(ザスパーク)。約5万2900平方メートルの敷地内にはグランドのほか、選手たちと同じメニューを食べられる食堂、憩いの場となるカフェ、気軽に身体を動かせる遊び場など、地元・群馬を活気づける新たな施設としても注目されているのだ。

 ザスパークの建設は、2022年から前橋市、クラブ、そしてユニホームの“胸スポンサー”としても知られるカインズ(ホームセンター大手/ベイシアグループ)の連携事業として進められ、「企業版ふるさと納税」(国が認定した地方公共団体の地方創生の取り組みに対し、企業が寄付を行なった場合に、法人関係税から税額控除される制度)を活用し、総額24億円の“新拠点”がカインズから市に寄付される形で完成したという。

 先日、筆者も実際に足を運ばせてもらったが、2階建ての建物は大きく分けて、東の“クラブハウス棟”と西の“商業棟”から構成され、魅力的な設備が整っている。

 西の“商業棟”の1階には憩いの場となる「カインズフードサービス」が運営するカフェ「CAFE BRICCO(カフェブリッコ)」が設けられ、屋外テラスを含めてお薦めのマフィンや挽きたてコーヒーなどを片手にチームの練習を見守ることができる(同施設でのトップチームの練習は8月からを予定)。加えてこちらのカフェでは今年1月に群馬で現役引退を発表した前橋出身の元GK清水慶記が考案したマフィンも販売中。サポーターなら一度は食べてみたいデザートと言えるだろう。

 ちなみに清水は現在「クラブアンバサダー」として、PR活動やパートナー企業との協業などを進め、アスリートのセカンドキャリアとして新たな道を開拓中とのこと。現役時代からの趣味であったお菓子作りを活かし、自身のチョコレートブランド「よろこびをしるす。」を立ち上げ、魅惑的なスイーツをオンラインとスタジアムのキッチンカーで販売。他にも様々な可能性を探っているという。

 またそのカフェの横にはオフィシャルショップも併設。最新のアイテムなどを手に入れることもできるのだ。

 そして2階には食堂「ザスパ×TANITA」が設けられ、選手たち普段が食べている日替わりのアスリート定食や、タニタカフェのヘルシーメニュー、定食などを楽しむことができる。実際に食させてもらったが、ボリューム満点かつヘルシーなメニューばかりである。
【PHOTO】群馬の新クラブハウスを大公開!ロッカールーム、食堂などの様子は?
 一方、“クラブハウス棟”の2階、クラブスタッフたちのワークスペースの先にはシックで温かみのあるコミュニティスペースが広がる。ここでは選手たちが大型のスクリーンで試合をチェックしたり、コミュニケーションを取るほか、クラウドファンディングに参加したサポーターは選手たちと時間を分け、同じ空間を使用できるという。

 さらに会議室などが完備されているほか、1階には選手のロッカールーム、大型のミーティングルーム、浴室など、必要な設備が揃えられているのだ。

「こういう施設でサッカー選手として時間を送れるのはすごく幸せ」と称賛するのが、38歳の地元出身のレジェンド、MF細貝萌である。

 
 細貝といえば、ドイツのアウクスブルク、レバークーゼン、ヘルタ・ベルリン、シュツットガルト、トルコのブルサスポル、タイのブリーラム・ユナイテッド、バンコク・ユナイテッドなどでプレー。様々なクラブハウスを体験してきた。

「例えばベルリンだったらグラウンドが10面以上あるし、ピッチの下にはヒーターが入っていて冬は凍らないようになっていた。またトルコは選手ひとりにひとつの部屋が用意されていて、ホームの試合の時などは各自の部屋に泊まったりしていました。他にもレバークーゼンでは、スイッチひとつで深さを変えられる大きなプールがあったり。

 そういうクラブハウスを経験してきましたが、このザスパの施設は本当に素晴らしい。新しいという面もあると思いますが、間違いなく日本でトップレベルですし、その分、これからクラブとしてより成長していかなくてはいけない。今はなかなか厳しい時期ですが、こういう施設でできる選手は幸せだなと感じています」

 これまでチームは特に夏場は練習場を転々とし、食事を取る場所、その時間に困るなど、様々な課題を抱えていた。今回の新クラブハウス完成は、その意味で選手たちへの恩恵は大きいと細貝も話す。

「もちろんコンディション面もそうですし、選手たちのモチベーションを含めて、すごく恵まれた環境になったと思います。食事面もかなり大きいですよね。今までは練習を終えて『じゃあどこに食べに行こうか』と話していたのが、クラブハウスで食事を取れることによって、時間もそうですし、トレーニング後すぐにエネルギーを摂取できる。しかもバランスの取れた食事を提供してもらえる。それは長くサッカーをやっていくうえで必要なことで、当然、若い選手たちはそれで身体を作っていける。

 今は練習を終えて身体のケアもしなくてはいけないので、マッサージなどを受けているとその間を補食でつなぐこともあったので、すぐに食べられるというのはやっぱり大きいですよ」
 
 そして細貝はさらなる付加価値も強調する。

「こういう施設があるということで、やっぱりザスパの選手でやりたいというモチベーションにもなるでしょうし、ここが練習拠点になれば、駐車場なのか、グッズショップなのか、カフェなのか、食堂なのかアカデミーの子らとすれ違う機会が生まれると思うんです。そういう機会は若い選手たちにとってすごく大事で、例えばヘルタ・ベルリンではアカデミーの子たちがトップチームと同じ施設で練習していて、時間こそ違えど、少し端っこでトップチームの練習を見ている子たちがいました。

 やっぱり子どもたちは選手とすれ違ったりすると、『あ、あの選手だ!!』となりますし、接点ができるのはすごく大事だと思います。改めてアカデミーの子たちがこのクラブのトップチームでやりたいと感じることは大切で、もちろんヨーロッパに行きたいとか、レアル、バルサに行きたいという子たちがいるのは当然ですが、そのステップとして、地元のクラブで活躍して欲しい。

 今だってアカデミーの子たちは群馬出身の子が多いですし、地元出身としてそのままトップチームに上がってこられる、目指したくなるようなブランド力がないとダメだと思います。相乗効果ではないですが、良い関係性で、よりクラブが良い方向に進んでいくために間違いなくデメリットはありませんよね」
 
 群馬は7月22日時点で、2勝7分15敗の成績でJ2全20チームのうち最下位に位置し、19位の栃木とは勝点で8差を付けられている(今季は18位、19位、20位の3チームがJ3に降格)。5月8日には大槻毅監督との契約解除を発表し、武藤覚ヘッドコーチが就任した。

 その後も苦しい戦いが続いているが、7月7日の23節・愛媛戦に4−0で大勝。ここからペースを上げていけるか注目されている。

 その試合で途中出場を果たした細貝も改めてこう話す。

「J2、J3ってかなり差があると思うんですね。僕も何度か口にしているんですが、J3に落ちてしまうと、やっぱり上がるにはそう簡単なものではない。可能性の問題ですが、そう甘くはないと思います。

 僕としてはここは地元のクラブで、群馬県に、地元にJ2のクラブがあるのは本当に素晴らしいと思うんです。僕は前橋で育って、そこにプロサッカークラブがある幸せを実感している。当然、全国にはJクラブがない県もあるわけで、だからこそどうにかこのクラブをJ2に残したいと真剣に考えています。

 シーズンは残り半分を切って、昨シーズンは前半戦が良くて後半戦になかなか結果が出なかった一方、今シーズンは今のところ本当に厳しい状況ですが、僕としてもチームとしても諦めていない。

 対戦相手は群馬戦を落とせない一戦として臨んでくるはずですが、どうにか挽回できるチャンスを掴みたい。勝点を積み重ねるチャンスはまだあると思っています。『相当大変だったけど、後半に巻き返して残留したよね』と、それで来季、新たに向かっていけるようにイメージして踏ん張りたいです。

 チームとして結果を出せずに監督が交代したわけで、やっぱり変えていかなくてはいけない面は多い。いろんな面で選手たちはマインドを変えなくてはいけないし、変わらないと結果が出ないままのはず。チーム全体で特に現場で僕ら選手と、スタッフ陣がより意識を変えないといけないと思います。こんなに結果が出ないことも、なかなかないですが、いろんなものをみんなが感じているはずなので、一緒になってやっていければと。

 今後5、10年と、このクラブがもっと良いクラブになっているように、そのキッカケになるように、クラブハウスを作っていただいたので、もっとやらなくちゃいけないと自分たちにプレッシャーをかけながらプレーしています」

 
 38歳の細貝自身は前述の愛媛戦がリーグ戦での今季初出場となった。だが、まだまだ選手として挑戦を続ける覚悟だ。

「僕自身もっと試合に絡んでいかなくてはいけない。身体はそんなに悪くはないと思っています。ブレてしまうとそれこそ自分のためにならないので、できる限りブレることなく、自分にできることを精一杯やっていきたい。表に見えなくてもチームのためになるように自分らしくやっていきたいです。

 ただ自分は選手なので選手として輝けるように努力していきたい。周りはいろんな選手が引退をしていって、先日、同い年で岡ちゃん(岡崎慎司)からも引退発表前に電話をもらって話をしました。周りの選手たちが少しずつそういう決断をしていくなかで、ただ僕らより上の年齢でやっている方々はいますし、僕も今をしっかり選手として歩んでいきたい」

 ただ一方で若い時に比べチーム内での振る舞い方も変わってきた。

「今は試合に絡めていない状況がありますが、自分のことはもちろんその他の情報も自然に見るようになって、自然に入ってくるようになりました。そういう立場になったということなんですが、いろんな情報を余裕を持って見られるようになりました」

 今回クラブハウスの建設に関して、ロッカールームからグラウンドの動線などには細貝のアイデアも反映されているという。細貝のロッカーの位置も、全体を見渡すことができ、アカデミー選手や練習生に声をかけられる場所だという。

 こうした経験豊富な選手がチームにいてくれることはプラスに違いない。

 そして強力な援護射撃となる新クラブハウスの完成が、チームにどんな影響をもたらすのか大いに注目だ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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