何げなくリサイクルボックスに入れる私たちは、どのようなことに注意して排出したらいいのでしょうか(筆者撮影)

猛暑の中を外出していると自動販売機付近のリサイクルボックスがいっぱいとなり飲料容器があふれ出ている光景を見かける。それらはいつの間にか片付けられ、再度回収ができる状態に整えられている――。

全国清涼飲料連合会は2030年までに使用済みのペットボトルを再度ペットボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル水平リサイクル比率50%を目指す」と宣言しており、今後私たちが手にするペットボトルはリサイクルされたものが主流になっていくとみられている。

自動販売機付近に設置されたリサイクルボックスに排出されるペットボトルも「ボトルtoボトル水平リサイクル」に回される。何げなくリサイクルボックスに入れる私たちは、どのようなことに注意して排出したらいいのだろうか。

今回は実際にリサイクルボックスに入れられた容器を収集する業務を行っている人にスポットライトを当て、その視点からペットボトルのリサイクルについて述べてみたい。

リサイクルボックスの収集人はルートセールススタッフ

自動販売機付近のリサイクルボックスに排出される瓶・缶・ペットボトルは、産業廃棄物として扱われ、自動販売機に飲料を補充するルートセールススタッフ(以下、ルートスタッフ)が業務の一環で排出された瓶・缶・ペットボトルを収集している。

筆者はサントリービバレッジソリューションの協力を得てルートスタッフに1日密着させてもらい、2人1組となって行う15カ所程度ある屋外、駅構内、オフィスビル内などで行われる補充作業の様子やリサイクルボックスの収集を見学した。

最近の飲料の自動販売機は優れており、どの商品が何本売れたといったデータをサーバに送信する機能を有する。これにより、売れ筋商品や在庫状況を把握できるようになっている。

ルートスタッフは当該データを分析して補充数を決めたり、エリアの顧客のニーズに合わせた品揃えに変更したりする。ルートスタッフの手元にある端末には、自動販売機毎に補充すべき種類の飲料と本数が示されており、それに従って飲料を補充する。


自動販売機に飲料を補充する様子。端末を確認しながら作業を進めている(筆者撮影)

補充が終われば付近に設置されているリサイクルボックスに排出された瓶・缶・ペットボトルを収集する。リサイクルボックスから空き容器の入ったビニール袋を取り出し、新しいビニール袋を設置していく作業を続けていく。


空き容器を取り出し、ビニール袋を設置する様子(筆者撮影)

収集した空き容器は車に積み込む

収集した空き容器の袋はルートカー(飲み物を運ぶ車、ボトルカーとも呼ばれる)の天井へと積み上げていく。状況によりけりであるが、持ち上げたり投げ込んだりする。


ルートカーの天井に積み上げる様子(筆者撮影)

そしてヘルメットを装着してルートカーの天井へと登り、強風や走行中に落下しないように容器の袋を前から順番に並べてネットをかぶせていく。


天井に登ってペットボトル等の袋を整理してネットで覆っていく(筆者撮影)

夏場には排出量が多くなるため、ルートカーの天井に立つ人の胸の高さ程度まで空き容器のビニール袋が積み上がっていく。


ルートカーの天井の様子。夏場には手の位置まで空き容器の袋が積み上がる(筆者撮影)

企業、公共機関、大学、専門学校、進学塾などを訪問して、飲料の補充とリサイクルボックスの収集を15カ所程度繰り返していく。また、同一場所に自動販売機を設置している他社とも連携して、当番で他社分のリサイクルボックスの収集を行うこともある。

最後は営業所に戻り、ルートカーに積み込んできた空き容器の袋をコンテナに移し替える。このコンテナは、『ペットボトルに平気でごみを入れ捨てる人の盲点』にも記載した、さいたま市にあるリサイクル・プラザJBの中間処理施設へと運ばれ選別が行われていく。その後は『「大量廃棄」に危機感持った男性のただならぬ決意』に記載した協栄産業などのペットボトルを水平リサイクルできるリサイクラーへと運ばれ、再度ペットボトルとして生まれ変わっていく。


営業所に戻り天井に積み込んだ空き容器の袋をコンテナに移しかえていく(筆者撮影)

リサイクルボックスはごみ箱ではない

今回の収集作業見学で、「リサイクルボックスをごみ箱と考えている人が多い」と痛感した。自動販売機付近のリサイクルボックスは、あくまでも当該販売機で商品を購入し、その場で飲み干し排出する際の回収箱である。他所で購入した商品が入っていたり、自動販売機では販売していない酒類の容器が入っていたりしたケースが散見された。

例えば、コンビニで購入した2ℓのペットボトルをリサイクルボックスのふたを開けて中に入れているケースもあった。だが、この飲料容器はリサイクル資源になることに鑑みると、ギリギリ許容されると思われる。


清涼飲料水のリサイクルボックスにアルコール飲料の缶が投棄されていた(筆者撮影)

しかし、明らかに間違いであるのは、リサイクルボックスにごみを投棄するケースである。主なものとしては、紙製の容器、コンビニ弁当のガラ、使用済みマスク・ティッシュペーパーなどが挙げられる。


リサイクルボックスに入れられたコンビニで購入した弁当類のガラ(筆者撮影)

さらには、ふたを開けてスプレー缶を入れたり、リサイクルボックスの中に入りきらない傘を横に置いたりするケースも見受けられた。


リサイクルボックスの横に投棄されたビニール傘(筆者撮影)

リサイクルボックスにはその他にもさまざまなものが入れられる。ルートスタッフによると、スプレー缶、除草剤の容器、薬品の容器をはじめ、タバコの吸い殻、ガムといったごみ、さらにはマネキンの首、美容室から出たごみ(髪の毛)、一斗缶までもリサイクルボックスに入れられていたという。


スプレー缶が入れられている時もある(筆者撮影)

リサイクルボックスに飲料容器以外のごみが混入されていても、その場に残置することができず、いったんはスタッフが回収せざるをえない。そしてその後の中間処理にて取り除いていくしかない。排出者は何気なく投棄したのかもしれないが、その後の対応に多くの人があくせく働いていることをしっかりと認識する必要がある。

一方で、リサイクルボックスの空き容器回収への協力者に会うことができた。その方は専門学校の清掃スタッフで、リサイクルボックスに入れられたごみを自発的に取り除き、飲み残しがあれば捨てて袋に入れ直していた。飲料容器のリサイクルは裏方スタッフの細やかな配慮により支えられている。


ごみを取り除き瓶・缶・ペットボトルを袋に入れ直している清掃スタッフ(筆者撮影)

飲み残しがあるままリサイクルボックスに入れるのはNG

同行して気づいたのが、飲み残しがあるままリサイクルボックスに容器を入れているのが意外と多い点である。ペットボトルの水平リサイクルを行う際には、飲み残しがある場合は中間処理ではじかれ、再度ペットボトルとしてリサイクルされない。

中身が飲料かどうかの判断ができないため水平リサイクルが難しいと判断せざるをえないからである。

それに加え、中身を残したままリサイクルボックスに入れてしまうと、それをルートカーの上に上げる際に作業員や、人通りの多い場所では通行人にかかってしまう可能性もある。飲み干すか捨てるかして、ペットボトル内には飲料を残さずにリサイクルボックスに入れる必要がある。


ルートカーの上に上げる際には作業員のみならず通行人にもかかる可能性がある(筆者撮影)

ペットボトルの水平リサイクルが推進されつつある中、メーカーのみならず私たち消費者も多少の協力をすれば、化石由来原料(石油)の新規使用を限りなく少なくする循環型社会を構築することができるようになる。

小さく畳めば収集回数が減少し、ガソリン使用量も減る

私たち消費者にできることは、外出先でペットボトルの飲料を購入して飲む場合には、必ず飲み干して、小さく畳んでリサイクルボックスに入れることである。

家庭からの排出と同様に、外出先でもペットボトルを潰して排出すると、かさが小さくなり収集車やルートカーに載せられる量が増加し収集効率が上がる。それにつれ収集回数が減少していき、ガソリン使用量も減る。

また、ペットボトルを潰すという行為自体がキャップを外すことや飲料の飲み干しを前提とするため、ボトルtoボトル水平リサイクルの推進にもつながっていく。

一方でメーカー側は、ペットボトルを畳んで排出できるよう、畳めるペットボトルの開発を進めている。例えば、サントリーでは、「天然水」の2ℓのペットボトルを改良し、約1/6のサイズまで小さく畳めるようにして販売している。


(左)約1/6まで畳めるペットボトル。(右)畳んだ状態。簡単に畳める(筆者撮影)

このようなメーカー側の努力に加え、それを利用する消費者側の私たちがペットボトルのキャップやラベルを取って畳んで排出するというほんの少しの手間をかけることで、社会全体で協力してペットボトルの水平リサイクルを推進し、資源循環社会を構築していけるようになるだろう。


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(藤井 誠一郎 : 立教大学コミュニティ福祉学部准教授)