国産セダンが相次いで廃止! 日産・ホンダは1車種のみ!? セダンがサッパリ売れなくなった訳

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セダンを1車種も扱っていないメーカーも存在

 クルマのカテゴリーのひとつ「セダン」は、バブル経済の1990年頃まで売れ筋でした。居住空間の後部に荷物を収めるトランクスペースが独立して配置されるセダンがかつて乗用車の基本形でしたが、今となっては少数派です。
 
 日産のセダンは「スカイライン」だけとなり、しかもハイブリッドは廃止され、購入できるのは3リッターターボのみ。

日産唯一のセダン「スカイライン」ハイブリッドは廃止されターボ車のみに

 ホンダのセダンは「アコード」がありますが、フルモデルチェンジを控えており、現在は販売を停止。新型アコードについて「日本を含めたグローバルで販売を予定」とホンダは説明しているものの、ホンダ販売店によると「発売時期は未定」とのことです。

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 スバルは2023年にフルモデルチェンジして登場する新型「インプレッサ」の概要を公表しましたが、6代目となる新型モデルはハッチバックのみとなり、セダンの「インプレッサ G4」は廃止されました。「レガシィ B4」も日本での販売を2020年に終了しており、現在、スバルのセダンは「WRX S4」のみです。

 このほか三菱とスズキはセダンを扱っておらず、ダイハツはトヨタ製OEM車の「アルティス」だけ。そうなると「マツダ3」と「マツダ6」にセダンを用意するマツダは、セダンのラインナップが豊富なメーカーといえるでしょう。

 セダンがもっとも多いのはトヨタで、「カローラ/カローラアクシオ」「カムリ」「センチュリー」「MIRAI」があり、SUV風の新型「クラウンクロスオーバー」も独立したトランクスペースを備えるセダンといえます。また、新型「クラウンセダン」の登場も予定されています。

 そしてレクサスにも、「LS」「ES」「IS」という3種類のセダンがあります。

 トヨタやレクサスにはセダンが相応に用意されるのに、ほかのメーカーがセダンを急速に廃止したのはなぜなのでしょうか。

 この背景には複数の理由があります。まずは世界的なセダン需要の冷え込みです。

 今は日本車を含めて、海外でもSUVが人気を高めました。この影響もあり、フォードがセダン市場からの撤退を表明するなど、各メーカーともセダンのラインナップを減らしています。

 日本国内では軽自動車が人気となっており、2022年に販売された新車のうち、軽自動車が39%を占めました。次の人気カテゴリーはコンパクトカー&ハッチバックの24%ですから、国内で販売される新車の60%以上がコンパクトな車種という状況です。

 SUVのシェアは16%、ミニバンは14%で、軽・コンパクトカーを含めた4つのカテゴリーの合計は93%に達します。セダン・ワゴン・クーペが残りの7%です。

 昨今は空間効率に優れた背の高い車種が好まれ、セダンやワゴンなど天井の低いクルマの人気が低迷していることがうかがえます。

 セダンは居住空間の後部に独立した背の低いトランクスペースを備えるため、空間効率では不利なボディ形状といえ、コンパクトな車種が支持される時代になると、セダンの売れ行きは必然的に下がってしまうのです。

セダンのメリットって一体何?

 セダンの低迷にはクルマの価格上昇も影響を与えているでしょう。

 現在のクルマの価格は、2005年頃と比べておおむね1.2倍から1.4倍に上がりました。それでも、安全装備や運転支援機能は価格上昇を上回る水準で充実しており、今の新車は以前よりも買い得になったともいえますが、かつてより大幅に値上げされたことも事実です。

 アコードを例にすると、2005年当時は「20A」が203万7000円、最上級の「ユーロR」でも265万6500円でしたが、2023年1月に終了した従来型はe:HEV(ハイブリッド)の搭載もあって465万円でした。

米国でひと足先に登場したホンダ新型「アコード」

 2005年のユーロRと比べても、直近のアコードは1.4倍どころか1.8倍まで値上げされており、セダンは海外志向を強めて大幅に価格が上昇したことから需要を衰退させたといえます。

 クルマの価格が上昇する一方で所得は伸び悩んでおり、新車に乗り替える時はサイズを小さくするユーザーが増加。

 一般的にクルマを選ぶ際、ファミリー層を中心に、予算を漠然と200万円にすることが多く、現在販売ランキングの上位に入る軽自動車やコンパクトな車種は170万円から200万円前後で販売されています。

 ホンダ「N-BOXカスタムL」が178万9700円、トヨタ「ルーミーカスタムG」が192万4000円、トヨタ「ヤリス1.5Z」が200万8000円という具合なのですが、2005年頃には200万円前後の価格帯でさまざまなセダンが選べました。

 価格面から捉えてみても、かつてファミリーカーとして使われていたトヨタ「プレミオ」や日産「プリメーラ」といったミドルサイズセダンが、今は軽自動車とコンパクトな車種に置き換わり、人気車になったのです。

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 さまざまな理由によって消滅に向かっているセダンにも、もちろんメリットもあります。それは、重心が低く、なおかつ居住空間とトランクスペースの間に隔壁が設置されるため、ボディ剛性を高めやすいことです。

 セダンは背の高いSUVなどに比べると、危険回避を含めて走行安定性が優れています。前後左右に振られにくいため、乗り心地も快適です。

 トランクスペースのなかには後輪が収まるホイールハウスがあり、居住空間と区分されるため、後輪が路上を転がる時に発する騒音も遮断しやすいです。

 セダンは「安心と快適」が優れているため、高速で長距離を頻繁に移動する欧州車には、今でもセダンが多いのです。

 メルセデス・ベンツやBMWのほか、レクサスに3車種のセダンが用意されるは、安心と快適を重視しているからでしょう。

 同じ予算であれば、トヨタ「ハリアー」やマツダ「CX-60」のような高級SUVを検討するのも良いですが、輸入車を含めてセダンも試乗してみると、忘れていたセダンの良さを思い出すことができるかもしれません。