Googleは折に触れて偽情報と戦う姿勢を打ち出していますが、実際には偽情報を拡散するシステムに収益を与えてしまっていることが、アメリカの非営利報道機関のProPublicaによる調査で判明しました。

How Google’s Ad Business Funds Disinformation - ProPublica

https://www.propublica.org/article/google-alphabet-ads-fund-disinformation-covid-elections

ProPublicaは今回の調査で、ファクトチェック機関や研究者、ウェブサイト監視団体から提供されたデータを元に、フランスやドイツ語、スペイン語など複数の言語で作られた数千のウェブサイトに掲載された1万3000以上の記事をスキャンし、それらがGoogleから広告収入を得ているかどうかを分析しました。これは、英語以外の言語を対象としたこの種の調査としては、過去最大の規模だったとのこと。

その結果、ファクトチェック機関によって「新型コロナウイルス感染症に関する虚偽の主張を掲載している」と評価された約800件の記事のうち41%にGoogleが広告を掲載していることが判明しました。また、気候変動に関する偽情報を流しているサイトの20%にもGoogleの広告が入っていました。

その具体例の1つが以下。セルビアで新型コロナウイルス感染症の治療薬の使用が開始されるという偽情報を流したATVというサイトの記事に、Googleを通じてアメリカのアパレルブランド・GUESSや高級百貨店チェーンのSaks Fifth Avenue、ECサービス大手のeBayなどの広告が掲載されていました。



ProPublicaによると、ATVはロシアによるウクライナ侵略を支持している民族主義強硬派の政治家であるミロラド・ドディク氏とウラジーミル・プーチン大統領の会談を称賛する記事を掲載したり、ドディク氏が主張しているボスニア紛争中の大量虐殺についての懐疑論を報じたりしているとのこと。

GoogleによってATVに広告が掲載されてしまったSaks Fifth Avenueの広報担当者は、「このサイトに広告を掲載することは、広告パートナーとの間で定めているブランド安全ガイドラインに違反しており、当社の意図したことではありません」と述べて、今後はATVを広告の配信先からブロックすると話しました。また、eBayの広報担当者も「当社はATVへの広告掲載を意図していませんでした」と釈明したとのことです。

全体としてセルビア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナで疑わしい情報を配信していたサイトの87%、個別の記事の62%にGoogleの広告が掲載されていました。



今回の調査では他にも、ブラジルのSNSでよく共有されている「偽情報や誤解を招きやすい主張を含むサイト」の80%、スペインの同様のサイトの44%、トルコの偽情報サイトの90%でGoogleが広告を掲載していることを突き止めています。

また、反移民サイトなどを含むドイツ語圏の極右サイトの33%がGoogleから広告収入を得ていたほか、ギニアやマリ、コートジボワールなどアフリカにあるフランス語圏の偽情報サイトの66%でもGoogleの広告が配信されていました。



匿名を条件にProPublicaに情報を提供した元Googleの幹部の話によると、Googleは会社の評判や規制当局による監視の目、自社の収益への影響を重視しているため、英語圏における安全性の取り組みには積極的であるものの、それ以外の言語圏の市場には英語圏ほどの力を入れていないとのこと。

この結果についてProPublicaは、「今回の調査でフランス語圏、ドイツ語圏、スペイン語圏の国々で新型コロナウイルス感染症や気候変動に関する虚偽を展開しているサイトに、Googleが恒常的に広告を掲載していることが明らかになりました。こうした広告収益は、信頼性の低いサイトを運営する人々やグループに多額の資金をもたらしている可能性があり、また同時にGoogleにとっても収入源となっています」と非難しました。

一方、Googleの広報担当者はProPublicaに対して、「私たちは選挙や新型コロナウイルス感染症、気候変動を対象としたポリシーを作成するなど、広告プラットフォーム上のフェイクニュース対策として幅広い施策を50以上の言語で実施しています。例えば、2021年には私たちは17億以上のページと6万3000のサイトから広告を削除しました。しかし、私たちのこうした仕事はまだ終わっていないのも確かですので、今後も信頼できない主張を検出し、世界中のユーザーを保護できるシステムに投資を続けていきます」と話しました。