●荒木は原作の大ファン「絶対に令児役を演じたいと…」

9月1日にスタートする新ドラマ『少年のアビス』(ドラマ特区 MBS毎週木曜24:59〜/tvk毎週木曜23:00〜ほか)で、ドラマ初主演を飾る荒木飛羽と、ヒロインを務める元乃木坂46の北野日奈子にインタビュー。生きる意味を問う衝撃作に2人はどう向き合っていったのか。役作りや初共演の感想を聞いた。



峰浪りょう氏の人気コミックを原作とする本作は、心中から始まる異色のラブストーリー。舞台は閉塞感漂う田舎町。荒木が演じる高校生の黒瀬令児は、引きこもりの兄、認知症の祖母の大ファン、その2人を相手に疲れ切った母親と家族4人で暮らしている。令児はある日、憧れのアイドルである青江ナギ(北野)と出会い、2人で心中しようと提案され……。監督は、[ALEXANDROS]やOfficial髭男dism、優里などのMVを多く手掛けてきた映像作家でアートディレクターのかとうみさとが務める。

――荒木さんはもともと原作コミックの大ファンだったそうですね。

荒木:最初は漫画の内容なんて全く知らず、『少年のアビス』の表紙に惹かれ、手に取ったことがきっかけで読みました。読んでいて、同級生やお母さんもみんなが自分最優先で動いちゃう素直さなどに驚きました。もしも自分があの環境で生きられたらどうなるんだろうと、僕自身もすごく興味を持ったので、ドラマ化されるなら絶対に令児役を演じてみたいと思いました。

北野:私はオファーをいただいてから、原作を読んだのですが、読み始めたら手が止まらなかったです。漫画はすごく衝撃的で、『少年のアビス』でしかこういう感情は生まれないのかなというほど引き込まれました。

――お二人ともとても難しい役だと思いますが、どんなところを意識して臨みましたか?

荒木:僕はあまり緊張などしない方ですが、本当に大好きな作品なので、自分がやっていいのか? みたいなことも考えてしまいました。でも、緊張やプレッシャーなども含めて、令児役に活かせるんじゃないかなと思い、頑張ってやろうと切り替えました。また、演じるうえでは、一つ一つの言葉に重みが出るように、ずっとお母さんの夕子(片岡礼子)をどこか心の隅に置くように心がけて演じました。

北野:私は乃木坂46というアイドルグループを軸に9年間やってきたので、演技の経験が少なく、果たして自分がナギちゃん役をやれるのかとすごく不安でした。なのでスタッフさんや制作の方に「ここのシーンはどう表現したらいいですか?」と、前々から打ち合わせでお聞きし、不安な面を解消してもらって撮影に挑みました。また、現場はとても温かくて、荒木くんもすごく大事にされていたので、私も皆さんみたいな気持ちで、一生懸命頑張りたいと思うようになりました。



――北野さんは、女優として活躍されている乃木坂46の元メンバーのどなたかに相談などはされたのでしょうか?

北野:生駒里奈さんとすごく仲良くさせていただいているので「ドラマと舞台の違いはどういうところにあるんですか?」とお聞きしました。そうしたら「ドラマはお客さんではなくて、カメラの向こう側に居る人を想像して、レンズの奥を意識してやってみるといいかも」といったアドバイスをいただきました。私はカメラ前だとどうしても緊張しちゃいますが、それを聞いてから、レンズの奥にいる人たちに届くようにと意識してみたら、緊張せずにやれたので、すごくありがたいアドバイスをいただいたと思っています。

――役柄に共感できた部分はありましたか?

荒木:共感というか、実家の近くに川がありまして。登下校とかする時も通るのですが、川に対しての気持ちというのがすごくわかるなと。そこが令児に関して共感できたところかなと思います。

北野:私は「太陽っぽいよね」と言われることが多いのですが、自分ではそこまで“陽”じゃないなと思っていて。私自身もアイドル時代に休業した期間があり、そういったところはナギちゃんと重なります。私はすごくありがたい環境にいたので、ちゃんとまた戻ってこられたのですが、やはり誰にでもある心の影は自分も持っていて、そこはナギちゃんに共感しやすかったです。

●お互い役にぴったり「のめり込んで気持ちを作れた」



――現場の雰囲気がとても良いそうですが、お二人の距離が縮まったようなきっかけがあれば教えてください。

荒木:笹舟を作るシーンがあるんですが、そのシーンの間にしゃべった時でしょうか。

北野:そのシーンを夕日が沈む前に撮ろうということで、私は荒木くんが笹舟を作っている横でやることがなくて空を見ていたんです。そうしたら雲がプーさんの横顔にめちゃくちゃ似ていると気づき、そのことをどうしても言いたくなってしまって(笑)

荒木:そうそう。急に「プーさんじゃない?」と言われて、見たら本当にそうだったので「ええ!」って思いました(笑)

北野:私は人見知りなので、いつも共演者がどういう風に来られるんだろうと思ってしまうのですが、荒木くんは空気感が明るくて、どんどん引き込まれていきました。男の子に対して言うのもなんですが、「かわいいなあ」と。現場ですごくおしゃべりをしてもらい、本当にありがとうございます。



――お互いの演技に関しても、共演した感想を聞かせてください。

荒木:最初にいい意味で、すごくイメージ通りだったのでびっくりしました。一緒に演技していると「ああ、本当にナギだな」と思えたんです。だから僕はまったく違和感なく本当に役に入り込めたというか、ナギに対してのめり込んで気持ちを作れました。

――「本当にナギだ」と思った、北野さんとナギとの共通点は何だったのでしょうか?

荒木:話しているトーンというか、カメラが回ってない時とは違い、急にナギが来る感じです。トーンや表情がリンクして変わるので、びっくりしました。

――北野さんは、荒木さんと共演してみていかがですか?

北野:年下の男の子との現場は初めてで、しかも主演の子が年下だという点にハードルを感じていたんです。でも、私自身も大人になり切れてない部分があり、ケラケラ笑うのもすごく好きだし、荒木くんは本当に明るいので、カメラが回ってない時は、荒木くんをけしかけて笑っていました。でも荒木くんはいざカメラが回って令児になると、すごく闇深い目をされるのが印象的で。とはいえ役柄上、ナギちゃんは引き込まれちゃダメなので、自分を保つのが大変でした。また、荒木くんはビジュアルが令児すぎます。台本の1冊目の表紙が令児くんですが、荒木くんがいないシーンでも、それをかざしてもらって演技をしていたくらいで、そこも素晴らしいなと思いました。

――最後に、今後ドラマを楽しみにしている方々へのメッセージをお願いします。

荒木:僕なりの黒瀬令児役をやれるように精一杯頑張っているので、ドラマならではの令児を楽しんでいただけたらいいなと思います。

北野:たぶん皆さんにもあると思う悩みや黒い部分に本作が届いて、少しでもそういう悩みが晴れるようにと、ちゃんと作品を大事にしながらナギちゃんとして、残りの撮影を頑張っていきたいです。

■荒木飛羽(あらき・とわ)

2005年9月28日生まれ、茨城県出身。2014年にドラマ『死神くん』でデビュー。2018年に大河ドラマ『西郷どん』や、同年の連続テレビ小説『半分、青い。』に出演。近作のドラマは、『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(21)、『愛しい嘘〜優しい闇〜』(22)など。映画の代表作は『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(20)やドラマにも出演した『あなたの番です 劇場版』(21)など。『耳をすませば』が10月14日公開予定。

■北野日奈子(きたの・ひなこ)

1996年7月17日生まれ。北海道小樽市出身、千葉県育ち。2013年3月、乃木坂46の2期生オーディションに合格し、2014年4月に8thシングル「気づいたら片想い」で初選抜、正規メンバーに昇格。今年4月30日をもって乃木坂46を卒業した。女優としては、乃木坂46のメンバーとともに、舞台『じょしらく』シリーズ(2015、2016)や『あさひなぐ』(2017)などに出演。グループ卒業後初の演技の仕事として、今年7月に舞台『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』に出演した。

荒木飛羽=ヘアメイク:反田やよい スタイリング:Yoh U 北野日奈子=ヘアメイク:大場聡美 スタイリング:優哉 衣装:NAKAGAMI(NAKAGAMI nakameguro)