素手でヒョウと戦った男性(画像は『News24 2022年8月26日付「‘One of us was going to die’: Man fights off leopard with his bare hands」(Ntwaagae Seleka)』のスクリーンショット)

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野生動物の宝庫である南アフリカとはいえ、目の前に動物が現れるとそれは死をも意味することになる。ムプマランガ州ムボンベラ市の村に住むンドゥミソ・モナさん(Ndumiso Mona、23)は先月、自宅近くに現れた野生のヒョウとばったり遭遇、死を覚悟しながらも素手で戦い抜いた。体にも心にも深い傷を負ったモナさんは、その死闘の様子を『News24』に語っている。

モナさんがヒョウと戦ったのは7月21日朝のことだった。当時のモナさんは友人と近所の店の前にいたが、野生のヒョウが自宅の近くに出没しているという情報を聞いた。どうやらヒョウがクルーガー国立公園から逃げ出したらしく、小学校に通う2人のきょうだいがいるモナさんは「家に戻らなければ」と自宅に走って向かった。その途中、背後に唸り声を聞いたので振り向くと、そこに1頭のヒョウがいたのだ。「お互いの目をじっと見つめ、2分くらい向かい合って立っていた」とモナさんは当時の恐怖を語る。「心臓が激しく鼓動していた。ヒョウは口を開き、鋭い歯を見せ、今にも飛びかからんばかりに威嚇している。もう後戻りはできないと自分に言い聞かせて拳を握った。どちらかが死ぬことになるが、それは自分ではないと強く言い聞かせた」というモナさん。数分間見つめ合った後に、ヒョウは彼に飛びかかった。

ヒョウが右前足でモナさんを攻撃すると、モナさんはヒョウの胸を殴った。ヒョウは倒れたが、またすぐに飛びかかってくる。ヒョウが顔を狙ってくるので、モナさんはヒョウの首を掴んだ。すると後ろ足でズボンを引き裂かれたという。モナさんとヒョウは地面に倒れて転がるが、モナさんはヒョウの首を離さなかったそうだ。

双方が地面に倒れて睨み合いが続いたが、そこに1人の男性が現れてヒョウに何度も石を投げ、ついにヒョウは絶命した。ヒョウが死んでいることがわかってようやく力を抜いたモナさんは、すぐにロブ・フェレイラ病院に運ばれ、8日間入院することとなった。戦っている時は必死で気づかなかっただろうが、モナさんは顔が腫れ、鼻から左目にかけて大きな引っ掻き傷、顎から耳にかけても傷を負った。また左の手のひらには噛み傷があり、左腕は腫れ上がり、指を数本骨折していた。また心にも大きな傷を負ってしまったモナさんは、ヒョウと戦う夢でうなされるという。夢の中ではモナさんが勝ち、ヒョウも生きているそうだ。しかし殴りつけなければヒョウに喉元を噛み付かれていたかもしれず、モナさんは「自分の命を守ることで必死だった。命を落とすにはまだ若すぎると思っていました」と語っている。

息子がヒョウに襲われたと知った母親のシボンギレ・ンコシさん(Sibongile Nkosi)は、モナさんの命が助かったことに安堵しており「このエリアではヒョウに殺された人がたくさんいると聞いている。息子にカウンセリングを受けさせたいし、今回の件を補償してもらいたい」と明かした。

なおヒョウの亡骸は、クルーガー国立公園の職員と主張する人たちによって持ち去られた。クルーガー国立公園広報担当者イケ・ファーラさん(Ike Phaahla)によると、クルーガー国立公園や民間の保護区から逃亡した動物はすべて州当局の責任になるという。一方、ムプマランガ州観光・公園局(MTPA)の広報担当者クホロフェロ・ンカンブレさん(Kholofelo Nkambule)は「クルーガー国立公園周囲の獣用フェンスを調査しましたが、動物が逃げ出すような穴などは見つかりませんでした」と述べ、「MTPAはあくまで同州の動植物の自然保護を管理し、動物が起こす事件の補償を行う方針はありません。なぜなら同州内の全ての野生動物は誰のものでもないのですから」と反論している。

画像は『News24 2022年8月26日付「‘One of us was going to die’: Man fights off leopard with his bare hands」(Ntwaagae Seleka)』『The World News 2022年8月27日付「Ndumiso Mona fights and wins against a vicious stray leopard」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)