バイきんぐ、ザコシショウ、錦鯉…育ての親が明かした「異色芸人をやる気にさせる」言葉の魔力

平井精一。右は新人芸人のやす子
MCとしても活躍する小峠英二(44)、キャンプ芸人としても人気の西村瑞樹(44)によるコンビ、バイきんぐ。誇張ものまねで『R-1』を制したハリウッドザコシショウ(47)。昨年、『M-1』4位ながら、強烈な爪痕を残した長谷川雅紀(49)と渡辺隆(43)の中年コンビ、錦鯉。ほかにもアキラ100%(46)、コウメ太夫(49)……。
ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)の曲者たちが、バラエティ界を席巻している。かつては “芸人の墓場” などといわれたSMAだが、いまや売れっ子だらけ。
その礎を築いたのが、SMAビジュアルエンタテインメント本部次長の平井精一氏(52)。渡辺プロダクションで7年間ホンジャマカのマネージャーを務めた後、1998年にSMAに入社。2004年12月に、お笑い部門を立ち上げた。
「当時は『エンタの神様』や『爆笑オンエアバトル』によるお笑いブームで、そういうときって人が集まるんですよ。テレビを見て『あんなんだったら、俺でもできる』ってやつが芸人を目指す。
当時、吉本興業以外の東京の事務所って、少数精鋭主義が多かった。芸人は30組ぐらいしかいなくて、誰かが新しく入ったら誰かがやめざるを得ないシステム。だったら、ほかの事務所であぶれたやつも、全部うちに入れちゃおうと」
立ち上げ当初は「社内の人も、どうせ失敗するだろうけど頑張ってねって、そんな感じでした」と笑う。
「チラシに『事務所立ち上げました、SMA芸人募集』って書いて、ライブの日程だけ告知するという見切り発車でした。それでも、フリーの芸人は死ぬほど来るだろうと踏んでたら、やっぱり集まってきた(笑)。
12月から始めて3月の初ライブまでに50組は集まっていました。所属芸人たちには、『4月からランキング制の事務所ライブをやる。お笑い番組に出演させる。2005年4月にはレギュラー番組を獲る』と約束したんです」
そして、集まった“異色芸人”たちの力を引き出したのは、平井氏から芸人たちへのアドバイス力だった。
■芸人が場数が踏める育成の場所を提供
2005年4月3日に、「第1回SMAトライアウトライブ(笑)」を開催した。半年後には、早くも “スター第1号” がSMAから誕生する。
「10月にコウメ太夫が『エンタの神様』に出てハネたんです。SMAのライブに、『エンタ』のスタッフが見に来てくれていて。コウメはネタ見せは普段着でいいのに、必ず白塗りにしてくるくらい真面目な男。
でも、作家の駄目出しがきつくて心が折れちゃって、『やめる』って言い出したんです。だから、別の作家に見てもらったらおもしろがってくれたんです。
そしたらライブに出て『エンタ』に見出され……そこからはトントン拍子。営業オファーの電話が鳴り止まなかったですね」
2007年には、常設のお笑いライブハウス「Beach V(びーちぶ)」をオープン。
「興行メインじゃなくて、芸人が場数を踏める育成の場にしようと。平日は2万円ほどで芸人に貸しているので、自分でも興行が打てる。もともと音楽のライブハウスで、壁は集音材なので笑い声が響かないんですけど(笑)」

『キングオブコント』を制覇したバイきんぐのデビュー当時
そして2012年、バイきんぐが『キングオブコント』を制覇して大ブレイクする。
「小峠なんて、狂ったネタしかやってなかった(笑)。交通事故でぶつかった、腸が飛び出た、それで縄跳びする……みたいな。シュールどころじゃない、常人が考えられないようなネタ。その手のネタを全部捨てて、抜群におもしろくなりました。
『キングオブコント』を獲ったとき、芸人の間ではウケていたんですが、世間一般的にはまったくの無名。未知の強豪が登場っていうのがハマった感じです」
いきなり強いネタを持ち込んで賞レースに殴り込む手法は、SMAのお家芸だ。
「2015年にマツモトクラブが『R-1』で決勝に進んだとき、『ストリートミュージシャン』ってネタがあったんです。それで『このネタなら必ず決勝にいけるから、半年間はほかでやるな』と指示しました。
誰も知らないネタで、彗星のごとく現われたやつのほうが紙、ラジオ、テレビすべてが取り上げるから、一瞬でピークに持っていけるんです。
だから温存しろって言ったら準決勝で負けて、僕がビビるという(笑)。敗者復活で決勝にいけたから、『言ったとおりだろ』と声が裏返りつつ、危ねーと思ってました」
2016年に『R-1』を制したハリウッドザコシショウは、地上波ゴールデン番組で裸芸人が大暴れという驚きを視聴者にもたらした。
「あのとき、エハラマサヒロさんが『スタジオ内の雰囲気が全部ザコシショウに吹いている。優勝しますよ』って声をかけてくれたんです。
ザコシショウも真面目でいいやつなんですよ。もうちょっとトークで暴れてもいいんですけど、優しすぎちゃって、険のあることが言えないんです」
2017年には、アキラ100%が『R-1』で優勝。2年連続でSMAの裸芸人が栄冠に輝いた。
「予選ですごくウケたので、ザコシショウのときのように風を吹かせようと、『決勝の観客は女性が多いから、裸芸を見たときに引かれることもある。だけど、予選で大爆笑を獲った頭の30秒の雰囲気を引っ張れれば、決勝も風でいける』と話しました。作戦どおり、ドドーンと勢いでいってくれましたね」
■早くバイト生活から抜け出してほしい
2020年には、お笑い部門立ち上げ当初から所属していた錦鯉が大ブレイクを果たす。
「頭を叩きすぎとか、いろいろ言いました。漫才の最初のひと言も『弟は46歳だよ!』なら、客にお前がすげえジジイだって伝わるけど、『一文無し、参上!』なんて言っても、お前が貧乏かどうかなんて誰も知らないんだからおもしろくないんだよと。
長谷川には、結婚するまで引っ越しするなって言ってます。タワマンに住んでアウディに乗ってたら笑えないよって(笑)」
平井氏は、専門店ではなく、百貨店のようにいろいろなタイプの芸人を売っていきたいと言う。そして、その延長線上にSMAの最終目標がある。
「芸人がバイト生活から抜け出してくれるのが嬉しいですね。とにかくネタだけやってほしい。ネタがおもしろければ、合いそうな番組にあてはめていきますから、オーディションに落ちたらマネージャーのせいにしていい。ネタに全集中させたい。3分のネタ2本とトーク力があれば売れるんです。
重視しているのは、3大賞レース(『M-1』『R-1』『キングオブコント』)と、『THE W』『おもしろ荘』でウケるネタ作りと、売れている芸人の分析です。
三四郎の小宮さんが事故って歯を折っても『ゴッドタン』に出てハネた。『お前、怪我する勇気あるか?』って。『ティモンディの高岸さんは140kg投げられるから売れたんだ。お前らも今から肩鍛えろ』とか(笑)。
目標を与えて、バイト以外はネタのことだけ考えて、早く売れてバイトをやめてほしい。全員が芸能だけで食えるようになるのがいちばんの目標です」
(週刊FLASH 2021年6月15日号)
