日本ではハイブリッド車ガラパゴス化している?

 いま(2020年11月)から1年後に、年間販売数でEV(電気自動車)がハイブリッド車を抜く。調査会社や自動車業界の一部で、そんな予測を立てている。これは、世界市場全体についてのことだが、日本人の感覚では「10年後とか、20年後というならわからなくもないが、来年と言われても……」と思うはず。

 なぜそう思うかというと、日本は世界でも稀なハイブリッド大国だからだ。実際、現時点で世界市場全体のハイブリッド車販売の半分弱が日本国内向けである。モデルで見れば、王道トヨタ「プリウス」を筆頭に、「アルファード」も「RAV4」もハイブリッド車人気は高く、ホンダ「フィット」もハイブリッド率が高い。

 一方で、EVといえば定番の日産「リーフ」。さらに、2020年はホンダ初の量産型EVである「ホンダe」が話題を振りまいた。年明け早々には、マツダ「MX-30」のEVバージョン登場が決定している。

 そのほか、テスラ人気は「モデルS」「モデルX」で定着し、最近は都心で「モデル3」を見かける機会が一気に増えた。また、欧州車ではメルセデスEQシリーズが続々登場し、フランス車ではプジョー「e-208」が日本上陸となる。

 こうしてEVモデルは確かに増えているとはいえ、ハイブリッド車をあと1年で抜くほどEVの普及速度が早いというイメージはない。

その国に合った環境対策が重要だ

 世界に目を向けると、EV普及の速度が加速している国や地域がある。それは欧州であり、中国であり、そしてアメリカだ。背景にあるのは、CO2の総量規制や、電動車の販売台数規制である。

 欧州連合の執行機関である欧州委員会が推進する、欧州グリーンディール政策による厳しいCO2規制によって、自動車メーカー各社は企業間平均燃費(CAFE)に頭を悩ませている。規定をクリアするためには、プラグインハイブリッド車の多モデル化とEV導入が必須である。

 中国でも、CAFEに加えて新エネルギー車(NEV)の事実上の台数規制がある。さらに、これまで世界の環境規制をけん引してきた、米カリフォルニア州のゼロエミッションヴィークル(ZEV)規制が大型トラックへも適用されることが決まっている。

 一方、日本では先日、菅義偉総理が「2050年までに社会全体としてカーボンニュートラルを実現する」と宣言している。EV需要が増えることが予想されるが、日本でEVが普及するには、それなりの時間が必要だと感じる人が多いはずだ。そもそも日本には、中国やカリフォルニア州のようなEV販売台数規制がない。

 このように、世界で着々と進むEVシフトのなか、日本はハイブリッド車のガラパゴス化している印象がある。ただし、これを日本が世界に遅れをとっていると解釈するのは間違いだと思う。電動化など、クルマの環境対策は国や地域の社会環境に応じた、ローカルベストになることが大切である。