新キャプテンの谷口を中心に喜ぶ川崎の選手たち。清水に5-1で勝利した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[ルヴァンカップ第1節]川崎5-1清水/2月16日/等々力

 昨季リーグ3連覇を逃し、覇権奪回を目指す川崎が、今季初の公式戦となるルヴァンカップ・清水戦で幸先の良いスタートを切った。

 スコアは5-1。川崎らしい攻め勝つスタイルで快勝を収めたわけだが、なによりポジティブに映ったのは、昨季はやや陰りが見えた自慢の攻撃力が蘇った点だろう。

 要因はやはり今季から新たに導入した4-3-3のシステムにある。清水戦の並びはGKにチョン・ソンリョン、最終ラインは右から山根視来、ジェジエウ、谷口彰悟、登里享平、アンカーに田中碧、インサイドハーフに脇坂泰斗、大島僚太、3トップは右から宮代大聖、レアンドロ・ダミアン、長谷川竜也。

 開始1分には大島の好クロスから宮代が早速、決定機を迎えると、川崎は次々にチャンスを作り出し、10分には登里のクロスにL・ダミアンがヒールで合わせて先制。最終的には計18本のシュートを放ち、5ゴールを奪ってみせたのだ。

 強力な3トップはもとより、彼らに後方の選手が有機的に絡む崩しは、実に川崎らしく、鬼木達監督が今季の始動から口にし続けた「観ている方も、やっている本人たちも楽しいサッカー」を表現できた言えるだろう。

 右サイドでは「周りが良い位置にいてくれるので、出して、走ってという動きを繰り返せました」と新戦力の右SB山根が、インサイドハーフの脇坂、右ウイングの宮代らとリズミカルなパス交換を見せ、23分にはこの3人の関係性から、脇坂が右サイドを突破して長谷川のゴールをお膳立てしている。

 一方で左サイドの登里、大島、長谷川の連係も良好で、L・ダミアンのポストプレー、田中の攻撃参加も含め、「ゴール前に人が入って行けるようになっている」(鬼木監督)点が勝ち切れない試合が多かった昨季からの大きな変化だ。
 新キャプテンの谷口も「前に人数をかけられたのでチャンスを作れた。得点を多く取れたのが非常に良かった」と収穫を口にする。

 またこの試合は出場しなかったが、清水のGKで、かつては川崎でもプレーした西部洋平は「速くなったというのが印象ですね。元々、個々が上手いのは分かっていましたが、ボールを奪った後のスピードが上がっていました。もうポゼッションだけのチームではないのかなと」と古巣の印象を語っており、L・ダミアンへの縦パスを攻撃のスイッチに、シンプルにウイングへボールを展開し、手数をかけずにフィニッシュまで持って行く形は、新たな攻撃パターンと言える。

 さらにこの試合はベンチスタートだった小林悠(途中出場から2ゴール)、出場のなかった家長昭博、守田英正らが状況や調子に合わせて起用できると考えれば、期待値はさらに上がる。
 一方で、この試合の結果は、昨季のリーグ王者・横浜でコーチを務めたピーター・クラモフスキー氏を新監督に招聘し、攻撃的なサッカーへの転換を図っている清水が、真っ向勝負を挑んできてくれたからこそという見方もできる。

 清水は横浜同様に両SBを“偽のSB”と言えるような中央エリア寄りの高い位置にポジショニングさせ、より前傾姿勢を強めてきたからこそ、川崎は薄くなった相手の守備網を破りやすくなったとも言えるのだ。

 現に右SBの山根は「前に行ける機会が多かった分、できれば結果が欲しかった」と反省したように、オーバーラップをしやすい状況だったと捉えられるだろう。

 また川崎の選手たちが課題として挙げたのが守備面だ。4-3-3のシステムはどうしても中盤が薄くなり、なおかつアンカーの田中も前へ奪いにいく意識が高いだけに、最終ラインを高く保ち、相手をコンパクトな陣形の中に押し込めることがポイントとなる。ただ、そうすると自陣には広大なスペースが生まれ、CBとGKの負担も増えるのだが、CB谷口は「課題は奪った後、どう攻めるのか。持つのか、早く攻めるのか。そこの状況判断は合わせていきたいです」と話しつつ、こう続ける。