「おとり物件」に気をつけて、納得のいく賃貸物件を契約しましょう(写真:つむぎ/PIXTA)

3月は1年で最も引っ越しが多いシーズン。今も物件探しに励む人は多くいるでしょう。そんな人たちに、気をつけてほしいのが「おとり物件」です。実際には存在しないのに、集客のためだけに物件サイトに掲載される、おとり物件に騙されないためのノウハウを、テレビ番組「有吉ゼミ」(日本テレビ系)にも出演する不動産アドバイザーの鈴木誠さんが解説します。

賃貸物件を探すときに気をつけてほしいのが、「おとり物件」です。これは、言葉のとおり「おとり」であって、実在しない物件やワナのような物件のことを指します。

賃貸物件情報サイトなどに掲載されているおとり物件。駅近で、格安で、日当たりもいい、というような、ちょっとよさげな物件を見て、不動産会社に問い合わせてみると、すでに申し込みが入っていたり、契約が終わっていたりする状態になっている。そこからは、営業マンに言われるままに別の物件を紹介され、営業マンにとって都合のよい物件をあてがわれ、契約させられることが多くあります。

最近では、不動産業界も重たい腰をあげて、「おとり広告」の排除に乗り出しました。2018年11月の朝日新聞の記事によれば、2017年度、大手不動産情報サイトでは、大阪で全国最多の503件のおとり広告が見つかったほか、兵庫で198件、京都では54件あったそう。しかし、まだ氷山の一角でしかありません。

「おとり物件」の特徴

もちろん、業界の言い分として、申し込みした方がキャンセルされるかもしれないので、サイトへの掲載が消せない、というのもわかるのですが、これでは、物件を問い合わせたお客をがっかりさせてしまいますし、さらに時間を無駄にすることになります。

お客をだまし、時間を浪費させる、深刻なおとり物件の問題ですが、実は見分け方がいくつかあります。

まず、非常に魅力的な物件で即入居可なのにネットの更新日から1カ月も経っているような場合。また、周囲の物件より明らかに「家賃が安い」「敷金・礼金がゼロ」「広い」などの物件は「おとり物件」の可能性があります。

また、問い合わせをした際に「とりあえずお越しください」というような曖昧な回答も怪しい。行ってみると「この物件はもうすでに決まってしまいました」とか「入居審査や大家さんがやたら厳しい」などとウソの理由を告げられるケースが多い。

おとりを使ってお客を呼び込む会社ですから、一度問い合わせれば、あとは怒濤のように営業されることになります。

<おとり物件の見分け方>
■好条件すぎる
不動産の価格は、相場から大幅に外れることはありません。
大幅に値崩れしているものは、事故物件やおとり物件の可能性があります。
■ネットの更新日から1カ月以上経っている
建物名や住所の詳細が記載されているかどうか、更新が滞っていないかを確認しましょう。
■現地待ち合わせで内見できるかどうか
不動産屋に問い合わせした際に「まずはお越しください」という曖昧な回答をする場合は、おとり物件を呼び水に来店させる手口であることがあります。
■敷金・礼金がゼロ
引っ越しの際、初期費用を抑えたい人の目につく「敷金・礼金ゼロ」の文字。これもおとり物件であることがあるので注意が必要です。ほかに保証金などが付いていないか確認しましょう。
■路面店の不動産屋に掲げられた看板
看板に掲載されている物件は好条件のものが多いのですが、自社で簡単に出せる分、おとり物件の可能性があります。

不動産業界に対するモヤモヤ

おとり物件は徐々に減っているようですが、まだまだ仕事をしているうえでの疑問は尽きないのが現在の不動産業界です。僕が、普段疑問に思っていることを書き連ねると、いまだ改善されない不条理な点があります。

<不動産業界の問題点>
・保証会社をつけているのに保証人もつける(保証料も借りる側が払う)
・更新料が家賃の1.5カ月分(家賃は相場どおりで安くない)
・礼金はないものの保証金があり全額償却(別途クリーニング代があるので礼金とまったく変わらない)
・消火器、除菌消臭代は必須
・解約予告は部屋を出る2カ月前にする
・新築なのに鍵交換代
・契約時に、不動産屋の都合で申込書の書き直しをさせる



解約予告2カ月前については、入居者からしてみると、新しく物件が決まって審査が通過して解約届を出しても1カ月以上家賃がダブります。だからといって、解約を伝えてから家を出る直前に物件を探すのは、リスクを伴う。不動産屋への解約予告が2カ月前必須なら、新居の申込みをしてから家賃が発生するのも1カ月先というのが、お客にとって平等な対応ではないでしょうか。

このように、今の不動産業界は、突っ込みどころが満載なのですが、業界のことを知らない方にとっては、「そういうものなんだ」と思ってしまいがちです。引っ越しを検討する際、疑問に思ったら、ぜひ聞いてください。そして、交渉できる部分はできるだけしたほうが得策です。