夏の甲子園100回大会もいよいよ大詰めを迎えようとしている。今大会は春夏連覇を狙う大阪桐蔭の根尾昂(ねお・あきら)、藤原恭大(きょうた)を筆頭に、才能溢れる多くの逸材が出場。スカウトたちも選手たちの一挙手一投足に熱い視線を送っていた。また、2年生、1年生といった下級生たちの活躍も大会を彩った。

 そんな逸材たちが溢れた100回大会のベストナインを選ぶとしたら……はたして目利きのスカウトたちはどの選手を選んだのだろうか。今回、3人の現役スカウトと昨年まで日本ハムのスカウトを5年間していた芝草宇宙(ひろし)氏に、100回大会のベストナインを選出してもらった。
※選手のポジションについては、実際のものと違うところがありますが、スカウトの判断により選出いたしました。


身長168センチながら龍谷大平安の3番を打つ松本渉

■30代/セ・リーグ球団スカウト

投 手:西純矢(創志学園/2年/右投右打)
捕 手:有馬諒(近江/2年/右投右打)
一塁手:野村佑希(花咲徳栄/3年/右投右打)
二塁手:斉藤大輝(横浜/3年/右投右打)
三塁手:北村恵吾(近江/3年/右投右打)
遊撃手:小園海斗(報徳学園/3年/右投左打)
左翼手:松本渉(龍谷大平安/3年/右投左打)
中堅手:藤原恭大(大阪桐蔭/3年/左投左打)
右翼手:根尾昂(大阪桐蔭/3年/右投左打)

「龍谷大平安の松本くんを選んだのは、あの暴走気味のベースランニングが気に入ったからです。鳥取城北との試合で、打球が右中間に転がった瞬間、『三塁打だ!』決めつけているような走りだった。一塁手と接触しそうになったのに、あきらめる気配もなくグングンスピードを上げていく。最近の高校生は、50メートルを5秒台で走れる足があるのに全力疾走しない子が結構います。そんななか、あの走塁意欲は印象的でした。身長は高くないけど、立派に平安の3番を務めています。おそらく、体も強いと思いますし、なにより負けん気の強さを感じます」


2回戦の沖学園戦ではレフト方向に会心の本塁打を放った大阪桐蔭・藤原恭大

■40代/パ・リーグ球団スカウト

投 手:西純矢(創志学園/2年/右投右打)
捕 手:田島光祐(龍谷大平安/3年/右投右打)
一塁手:野村佑希(花咲徳栄/3年/右投右打)
二塁手:奈良間大己(常葉大菊川/3年/右投右打)
三塁手:松田憲之朗(龍谷大平安/3年/右投右打)
遊撃手:小園海斗(報徳学園/3年/右投左打)
左翼手:蛭間拓哉(浦和学院/3年/左投左打)
中堅手:藤原恭大(大阪桐蔭/3年/左投左打)
右翼手:根尾昂(大阪桐蔭/3年/右投左打)

「大阪桐蔭の藤原くんのバッティングは、もうすでにプロのレベルにあります。ファーストストライクをフルスイングして、ほとんど打ち損じがない。とにかくバッティングの精度が高い。凡退した打席でも、完璧にジャストミートした打球がほとんど。いいスイングをしている証拠。木製のバットになっても、しっかり対応してくると思います」


プロ注目の強肩捕手・龍谷大平安の田島光祐

■30代/パ・リーグ球団スカウト

投 手:渡辺勇太朗(浦和学院/3年/右投右打)
捕 手:田島光祐(龍谷大平安/3年/右投右打)
一塁手:該当者なし
二塁手:奈良間大己(常葉大菊川/3年/右投右打)
三塁手:根尾昂(大阪桐蔭/3年/右投左打)
遊撃手:小園海斗(報徳学園/3年/右投左打)
左翼手:蛭間拓哉(浦和学院/3年/左投左打)
中堅手:藤原恭大(大阪桐蔭/3年/左投左打)
右翼手:該当者なし

「キャッチャーは、敏捷性のある常葉大菊川の根来(龍真)くんと迷ったのですが、経験値の高さとスローイングの安定感を買って田島くんにしました。彼のスローイングは、下半身と上半身がしっかり連動している。いくら強肩といっても、肩だけで投げているキャッチャーは1年間持ちません。その点、田島くんは理想のスローイングをしている。ケガも少ないでしょうし、コントロールもいいはずです」


奈良大会で打率.545をマークした奈良大付の宮川寛志

■元日本ハムスカウト/芝草宇宙氏

投 手:西純矢(創志学園/2年/右投右打)
捕 手:蓑尾海斗(日南学園/3年/右投右打)
一塁手:大谷拓海(中央学院/3年/右投左打)
二塁手:奈良間大己(常葉大菊川/3年/右投右打)
三塁手:北村恵吾(近江/3年/右投右打)
遊撃手:小園海斗(報徳学園/3年/右投左打)
左翼手:宮川寛志(奈良大付/3年/右投左打)
中堅手:藤原恭大(大阪桐蔭/3年/左投左打)
右翼手:根尾昂(大阪桐蔭/3年/右投左打)

「創志学園の西くんはピッチング自体に破壊力がありますよね。投げるコースがよく、左バッターの内角ギリギリに投げ込める2年生なんていませんよ。しかも球速は145キロ前後でしょ。それにスライダーのキレも抜群で、空振りが取れる勝負球を持っているというのは、上の世界で野球をやっていくための絶対条件ですから。

 キャッチャーで蓑尾くんの選出したのは、野球に対する一瞬の判断力っていうんですか……とっさの動きがすごくよかった。ベンチからの指示がなくても自分から動ける。いろんな情報を発信できる、グラウンドの監督的な存在になれる素質があると思います。

 あと宮川くんについては、私もノーマークだったんですけど、初戦の最初の打席でセンターの横に打球が抜けたのですが、ものすごい打球でした。ストライドが大きく柔らかな走りにも将来性を感じますし、ホームランを打つなど長打力もある。時々いるんですよ、彼みたいに甲子園で自分の将来を切り開いていく選手が……」