エドテックの旗振り役、「教育」は「学び」に変わる
本質的な意義、伝えたい
―経済産業省は「『未来の教室』とEdtech研究会」で、ITを活用した次世代教育について議論してきました。どんな印象を持ちましたか。
「エドテックは『デジタルテクノロジーを活用した教育のイノベーション』と定義されます。教育は長らく、教室や先生といった、既存の枠組みを前提に捉えられてきました。しかし、今回の議論はこれまでの教育を前提とせず、社会はどんな人材を求めているのか、どんな人材が活躍できるのか、つまり社会の変化から必要とする教育のあり方を自由に議論することができました。エドテック推進の旗を振ってきた身からすると、ある種の感慨もあります」
「テクノロジーを融合することで社会の仕組み自体を変革させる動きは教育に限らず、あらゆる産業で広がっています。代表例は金融分野のフィンテック(FinTech)ですが、その本質は単なるビットコインやブロックチェーンといった技術革新ではなく、これらを用いてビジネスや仕組みを大きく変えることで、新たな価値を生み出す点にあります。教育も同じです。エドテックがもたらす本質的な意義を、分かりやすい形で広く発信することが、僕自身に課せられた今後の課題と感じています」
エドテックのダイナミズム
―具体的にはどんなことですか。
「これまで知識を習得するには、学校という『場』に足を運び、先生という識者に教えを『乞う』ことが唯一の手段でした。ところが、ITがインフラ化した現代においては、学びの選択肢は格段に広がり、学習者は既存の手段に限られず、自ら学びを自由に手に入れることができます」
「例えば、インターネット・クラウド環境下においては、学校・塾・家庭が継ぎ目なく繋がります。教科書やノート、学習履歴がクラウド上に保管され、重い教材を持ち運ばなくても、いつでもどこでも自分の学習履歴を確認できます。そうすると、今日、学校で学んだことを塾の先生が確認し、今日やるべきことを適切に指導できたり、そのデータを家庭や学校にもシェアし、学習者にとって最適な学びを社会が支援する仕組みができます。本当の意味での学習者中心の世界が手に入るわけです。つまり『教育』から『学び』に変わることこそ、エドテックの本質であり、ダイナミズムです」
―主語が「教える側」から「学び手」に変われば、可能性が広がり時間軸も変わってくると。
「そうです。入試を例に挙げれば、現在は実質的に選抜という意味が大きいです。学習者の能力・思考や学校のアドミッションポリシーも多様化する中、個々のログ・ポートフォリオをテクノロジーで管理できれば、『選抜』から『マッチング』に変えることができるのではないでしょうか。また入試や試験は、学習成果の定点観測という見方もできます。インフルエンザの流行期に行われる一発勝負の試験では、運不運も左右するでしょう」
「しかし、テクノロジーを活用すれば日々の学習をログ化でき、定点観測から常時観測に変えられる可能性があります。ある一定レベルに達すれば、学齢や年齢に関係なく進学することも可能になると思います。これらはやや極論に聞こえるかもしれませんが、何をどんな形でログ化すべきか、どんな効果をもたらすのか、まずはそういった議論を始めるべきです」
