―主語が「教える側」から「学び手」に変われば、可能性が広がり時間軸も変わってくると。
 「そうです。入試を例に挙げれば、現在は実質的に選抜という意味が大きいです。学習者の能力・思考や学校のアドミッションポリシーも多様化する中、個々のログ・ポートフォリオをテクノロジーで管理できれば、『選抜』から『マッチング』に変えることができるのではないでしょうか。また入試や試験は、学習成果の定点観測という見方もできます。インフルエンザの流行期に行われる一発勝負の試験では、運不運も左右するでしょう」

 「しかし、テクノロジーを活用すれば日々の学習をログ化でき、定点観測から常時観測に変えられる可能性があります。ある一定レベルに達すれば、学齢や年齢に関係なく進学することも可能になると思います。これらはやや極論に聞こえるかもしれませんが、何をどんな形でログ化すべきか、どんな効果をもたらすのか、まずはそういった議論を始めるべきです」

 ―教育に真のイノベーションを起こすには、何が必要ですか。
 「二つのアプローチを考えています。ひとつは、エドテックベンチャーや教育関係者、企業内研修の担当者などで、教育を変えようとしているイノベーターたちの挑戦を後押しすること。教育の変革はイノベーターからしか生まれないと思っているからです。もうひとつは、学びの選択肢が広がっている姿を実際に示すことです。これは教育ビジネスに携わる民間主導の取り組みとなるでしょう」

 ―ご自身もNTTなどの大企業での経験やベンチャー企業を設立するなど起業家でもありますよね。
 「僕がエドテックを推進する背景には、小さな成功と大きな失敗体験があります。テクノロジーの有用性をユーザーに、なかなか理解してもらえなかった起業家としての苦い経験を踏まえ、現在は大学教員としての立場から、変革に挑んでいます。ですので、僕ができなかったことに挑戦しているエドテックベンチャーや教育イノベーターの皆さんには心からリスペクトしています」

既成概念との戦い
 ―佐藤さんは何と戦っているのですか。
 「『教育はこうあるべき』という既成概念です。テクノロジーをきっかけに覚醒した、既成概念にとらわれない教育イノベーターが数多く誕生し、新たな学びの選択肢が広がり、結果として学びの風景が変わっていく―。そんな未来を描いています」

 ―テクノロジーを活用して日本の教育が活路を見いだす上で、必要な視点は。