集中豪雨の3分の2は「線状降水帯」で発生。積乱雲の“一生”を観測せよ!

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 近年、豪雨の発生は局地・甚大化する傾向にあり、特に積乱雲が連なる「線状降水帯」を伴う豪雨は、河川の氾濫や浸水、土砂崩れなど大きな被害をもたらしやすい。その発生予測技術の確立は急務だ。従来は捕捉困難とされた積乱雲の動きをより早く、より高精度に捉えて防災につなげようと、最新の知見や技術を活用した取り組みが進む。

 防災科学技術研究所の加藤亮平特別研究員らが95年から09年の豪雨を解析した結果、台風の直接的な影響がない集中豪雨の約3分の2は、線状降水帯に伴って発生していたことが分かった。

 線状降水帯では、風上で次々と新しい積乱雲が発生し、世代交代しながら風下で雨を降らす。その結果、特定の地点では数時間にわたって積乱雲が停滞した状態となって豪雨が続く。

 だが、こうした積乱雲の組織化プロセスは解明されておらず、線状降水帯に伴う降雨予測は現状では難しい。また、積乱雲発生には、気流や地表の温度傾度のほか、山地への衝突などの「トリガー」が影響する。各トリガーがどの程度寄与するかやそのメカニズムも不明な部分が多い。

 そこで防災科研は、積乱雲が誕生してから発達、雨を降らす最盛期を迎えるまでの「一生観測」に取り組んでいる。高精度の観測ができる雨量レーダー「XバンドMPレーダー」をはじめ、雲レーダー、レーザー光を使って風の分布を測定する「ドップラーライダー」、マイクロ波放射計を首都圏へ高密度に展開。これらを組み合わせ、“雲のもと”になる水蒸気量や雲を発達させる気流を観測し、積乱雲の詳細な挙動解明を進める。

 数値予測にこうした観測値を反映できれば、雨の降る場所や雨量の予測は格段に向上する。加藤特別研究員は、「用途によって求められる項目も精度も違う。河川の氾濫管理では、流域の積算雨量の高精度な予測が重要。ニーズを聞きながら開発し、防災・減災に役立てたい」と述べる。

「雪のもと」捉える。30秒で3次元画像
 豪雨の早期予測に向け、雲のもとの検知はさらに進化している。防災科研は17年11月、雲を立体的に観測する電波と、雨粒や氷粒の大きさなどを観測する電波を同時に出す最新型の気象レーダー「マルチパラメーターフェーズドアレイ気象レーダー(MP―PAWR)」を埼玉大学に設置した。

 30秒で上空を立体スキャンし、雲の3次元構造を得られる。従来のレーダーでは5分以上かかり、10分程度で急速に発達する積乱雲を捉えられなかった。情報通信研究機構などが内閣府の府省連携プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環で開発した。

 より早く、豪雨発生の可能性を捉えるための研究も進む。気象庁気象研究所は、全球測位衛星システム(GNSS)を活用し、船舶による海上水蒸気観測に取り組む。

 GNSSは、豪雨予測に重要な大気中の水蒸気量計測に利用できる。水蒸気は、衛星から受信する電波に遅れを生じさせる。この遅れを解析することで、降雨時にも水蒸気量を求められる。

 陸上ではGNSSによる水蒸気観測がすでに実用化され、09年から全国1300点以上で計測している。だが、陸上の予測だけでは豪雨発生の直前にしか捉えられない。

 気象研の気象衛星・観測システム研究部の小司禎教室長は「四方を海に囲まれた日本では、海上での水蒸気観測が重要」と指摘。九州北部豪雨でも海上からの流入量を予測できず、予測精度を高められなかった。

 従来、GNSSによる水蒸気観測は、船舶のような移動体での適用は不可能とされていた。だが、「測位衛星数の増加、ネット環境の整備、移動体の測位精度向上といった周辺技術の進展で実現できた」(小司室長)。