社会人としての初仕事は、「あいさつや自己紹介」。どのようにするのがいいのか?(写真:夢見る詩人 / PIXTA)

配属先でのあいさつ、歓迎会でのあいさつ、ランチ会でのあいさつ……。社会人生活の第一歩は、怒涛のように続くあいさつ・自己紹介から始まる。

「配属先での朝のあいさつと歓迎会は同じあいさつでいいの?」「同期会では、いったい何をいえばいいの?」――。あいさつや自己紹介の悩みは尽きない。そこで、今回は、さまざまなシチュエーションでの「あいさつ・自己紹介のポイント」をまとめた。


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「新入社員にありがちなのは、面接と同じ調子で自己紹介をしてしまうことです」と話すのは、人材派遣・紹介サービスや教育事業を手掛けるキャプランの教育・研修部門、Jプレゼンスアカデミー事業部の伊東絹子チーフインストラクターだ。

面接の目的は、自分の良さ、能力をわかってもらうことだ。「もし、採用してくれたら、こんなふうに働きますよ」といったことを熱く伝える自己PRの場だ。採用されるためには、ライバルたちよりも目立たなくてはならない。

面接で自己紹介するのとは違う

それに対して、入社後のあいさつの目的は、「入社した喜び」「仲間として迎え入れてもらったことへの感謝」「一人前になるまでのサポートやアドバイスのお願い」などを伝える場だ。謙虚さが非常に大切になる。一方、先輩たちはどんな後輩が入ってきたのか興味津々で見ている。だから、目立つ必要はないが、自分らしさを出すことも必要になってくる。

わかっていても、面接方式の自己紹介をしてしまうのは、暗記するほど練習を積み重ねてきたから。ふとしたきっかけで自己PRのスイッチが入ると、無意識にペラペラ話してしまう。面接スイッチが入らぬように注意して、謙虚で、自分らしく、しかも好印象をもってもらえるようなあいさつを目指したい。

最初に体験するのは、おそらく、配属先での自己紹介だろう。最初に意識したいのは立ち位置。上司や先輩などに紹介されるまでは、上司や先輩よりも2〜3歩下がった場所に立つ配慮が必要だ。名前を呼ばれたら前に出て、背筋を伸ばして、自己紹介をはじめる。

朝なら、「おはようございます」「みなさま、はじめまして」などのあいさつから入る。その後、「このたび配属になった〇〇です」と、自分の名前を「フルネーム」で名乗り、「どうぞ、よろしくお願いいたします」と続ける。「あいさつ→名乗り→あいさつ」と、名乗りをあいさつでサンドイッチにする形だ。

続けて、「一生懸命頑張ります」といった仕事への意気込み、「皆さんのサポートを必要としているのでよろしくお願いいたします」といった一言で終わらせるといった流れがオーソドックスだという。

「この時、意識してほしいのは順番。ポジティブな言葉を最後に持っていくほうがやる気が伝わります」(伊東氏)。下の文例ではAのほうがポジティブに見えるという。

(A)たくさん、ご迷惑をおかけすると思いますが、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いいたします。
(B)一生懸命頑張りますが、たくさんご迷惑をおかけすると思いますので、よろしくお願いいたします。

「キャッチフレーズ」をつくっておいたほうがいい

3〜5分程度の長めのあいさつをする場合、何を言えばいいのだろうか。「あらかじめ、自分のキャッチフレーズをつくっておくと、いろいろ応用できて便利です」(伊東氏)。

「友達から、よく、こんなふうに言われています」「なになにに例えれば、自分はこうです」といった簡単なもので構わない。ちなみに伊東氏の講師としてのキャッチフレーズは、「働く方へのビタミン剤になりたい」だそうだ。このようにキャッチフレーズを決めておけば、「仕事観」「生きる価値観」「自分のミッション」など、持ち時間に応じてさまざまなテーマで話を膨らませることができる。

キャッチフレーズをつくっておけば、歓迎会や同期会など、さまざまな場で応用できそうだ。思いつかなければ、自分の名前の漢字を使うのもいい。「親は元気な子どもに育ってほしい気持ちで『元』と名付けましたが、私は、皆様を元気づけて役立てる、こういう意味にとっています」といった具合に漢字をポジティブなメッセージにするわけだ。

「『明子』だから、名前のとおり明るい。この明るさで頑張りたい」といったストレートなメッセージでも構わない。重要なのは仕事にリンクさせた話にもっていくことだ。また、自分の名前ネタの話をすれば、名前を早く覚えてもらえるというメリットもある。

出身地のネタなども望ましい。同郷の人がいれば、仲良くなるきっかけにもなるし、場所によってはご当地ネタで盛り上がることもあるだろう。

一方、出身大学については言わないほうがベター。大学の難易度と、仕事ができる、できないは関係がないし、「大学時代を引きずっている新人」という印象を与えかねない。社会人としてのスタートの場なので、会社でイチから頑張っていくことを印象付けるためにも大学の話は持ち出さないほうが無難だ。

また趣味の話などでも、仕事にリンクさせられるような話ならOKだが、単に「麻雀に夢中な4年間でした」といった遊びだけの話は、避けたほうがいい。

緊張していれば句読点ごとに視線を移す

好感をもたれるあいさつのためには、できれば視線も意識したい。大勢の先輩たち全員の顔をいちいち見ながら話せば落ち着きなく見えるし、一人の顔をじっと見つめれば、見られたほうは落ち着かない。

「よくスピーチの本には、ワンセンテンス・ワンパーソンと書いてありますが、ワンセンテンスは意外と長いものです。そこで、句読点で次の人に視線を移すことをお勧めしています」(伊東氏)

大勢の人の前で話すのは、誰でも緊張する。だから、まず、自分の話を熱心に聞いている人を探そう。自分の話をちゃんと聞いてくれる人がいると、緊張がほぐれていくからだ。

その人を中心に句読点ごとに視線を移していく。再び緊張してきたら、また、その人に視線を戻す。その繰り返しで、続けていけば自然とみんなに配慮した好感度の高いあいさつになる。

歓迎会やランチ会では、あいさつの冒頭に、「今日は私(私たち)のためにこのような会を開いていただきありがとうございます」と、会を開いてくれたこと、または会に招いてくれたことへの感謝の意を伝えることが基本だ。その後は、あいさつと、名乗り、あいさつのサンドイッチの原則は、配属のあいさつと変わらない。

その後は、あいさつの持ち時間に応じて、自分のキャッチフレーズネタや名前の漢字ネタなどをコンパクトに、あるいはより詳しく披露するなど、配属のあいさつの内容をアレンジしていけばよい。

気を付けたいのは、先輩たちへの感謝の言葉だ。歓迎会やランチ会が開催される頃には、研修は一通り終わり、すでに仕事は始まっているだろう。

困った時に助けてくれたチューター役の先輩などに、感謝の言葉などを述べたくなるが、あまりに、その先輩のことばかり褒めていると、他の先輩たちはいい気分はしない。だから、「皆さまのお助けがあり、温かく見守ってくださったから、こうして楽しく仕事ができます」といった具合に、個人名ではなく、全員に伝わるメッセージを言ったほうがベターだ。

一方、同期会の場合、一番考えるべきポイントは「未来軸」。これから、うれしいこと、苦しいことを共有し合う仲間になるための第一歩となるあいさつだからだ。

「たとえば、『2018年の新入社員はみな頑張っているなと思われるように、自分も頑張りたい』とか、『お互いのパワーが相乗的に働くように頑張ろう』といった絆を感じられるような言葉を入れてもいいかもしれません」(伊東氏)

新人に安心感を与えるのが、先輩の立場のあいさつ

あいさつするのは新入社員だけではない。時には、先輩社員も自己紹介をさせられる。できれば、少しかっこよくいきたいものだ。

「そもそも新入社員は、先輩たちという安全基地があってはじめて安心してチャレンジができます。ですから、先輩からのあいさつは『私たちがいるから、頑張ってやってごらん』というメッセージを伝えられると後輩から慕われます」(伊東氏)

「この分野の仕事で困ったら、いつでも相談して」「このジャンルなら任せとけ」、あるいは、「人生相談が得意だ」といったことでも構わない。

失敗談の披露も、新人を安心させるためには効果的だが、「発注ミスして大変だったけど、何とかなったよ。アハハ」といった話はNG。ミスしても平気だという油断を生み、同様のミスが後輩たちにも広がる可能性がある。発注ミスの話であれば、「仲間のフォローでなんとかカバーでき、仲間のありがたさを痛感した。しかし、ミスを犯すと大変なことになる。だからミスしないように頑張ってね」という話にもっていけば効果的だ。

ここまであいさつの方法について解説してきたが、ポイントは、なんのためのあいさつなのか、集まりの趣旨を理解すること。そして、「謙虚さ」「ポジティブ」「未来軸」の大切さを意識しておけば、自然に好感をもたれるあいさつができるはずだ。