シリーズ・トップに聞く 第6回 メディビック 橋本康弘社長(前編)
医薬研究開発コンサルティングと情報処理システム支援のメディビック<2369>は、同社の手がける「ゲノム創薬」事業の承認が遅れ、03年の株式公開後、足踏みを余儀なくされている。同社によると、情報システムと新薬開発への投資で、今期も純損益の赤字が続くと予想しているが、そろそろ投資効果が現れてくる頃だという。橋本康弘社長に、今後の見通しなどを聞いた。
――創業の経緯と事業内容は?
バックグラウンドから話すと、私は大阪大学の医学部を卒業後、アメリカで3年間研究員をし、その後7年間やはりアメリカで基礎研究をして自分の研究室を持った。その後10年間、世界最大手の製薬企業で創薬プロセスの技術やノウハウを身につけた。
99年の後半に、解析が終わろうとしていたヒトゲノムを使ってよりよい薬を作ろうという動きが出てきた。私は大手の製薬企業で、そういう大きな変化を目の当たりにしていたが、日本の製薬・医療業界はかなり動きが遅れていた。コストが非常に高くつくので、手をつける必要はないだろうといわれていた。しかし、技術の進歩でコストが安くなるはずなので、私はよりよい医療を最新の技術を使って行う時代が来るに違いないと考えた。
これは人々のためになるし、ビジネスチャンスだと感じ、当時世界一だったグラクソウェルカム社を99年末に退社。このチャンスを生かせば日本の医療に貢献できると思い、ゲノムの技術を使って副作用の少ない薬を作ることを目指し、アメリカにたくさんあるバイオベンチャーのように製薬企業の薬作りを効率的に支援する会社を作りたいという気持ちで創業した。
日本の製薬企業の状況を詳しく分析する必要があったので、最初の一年間はコンサルティング事業を中心に多くの製薬企業と話をした。私自身の欧米での経験とネットワークのおかげで、情報源として重宝してもらい、コンサルティングビジネスは非常にうまくいった。まず気づいたのは、最先端の技術を使ってよりよい薬を作る前提としての、情報を分析するITの力が日本の製薬企業は非常に弱く、遅れているということだった。
01年にベンチャーキャピタルから4億円を資金調達し、それぞれ製薬企業のニーズにあった情報システム、すなわち先端的な技術、特に山ほどあるゲノムの情報をうまく利用できるような情報システム開発に投資し、それぞれの企業に最適なものを提供してきた。
その結果順調に売り上げを伸ばし、03年度には4億8000万円強となった。監査法人のデロイトトーマツから急成長企業として選ばれ、「2004年デロイト トウシュ トーマツ 日本テクノロジー Fast50」第1位を受賞した。業界のニーズにあった新しい薬の作り方「ゲノム創薬」を支援することでビジネスが大きく飛躍し、03年9月に株式公開(IPO)できた。
その後順調にシステムの営業は進んだが、ゲノム創薬の進行は思うほど早くなかった。03年のIPOまでは売上高が急速に伸びたが、ゲノム創薬は「業界の期待ほど結果が出てない」という声が出始めた。また、ゲノム創薬の国からのガイドラインが出ず、承認が遅れたことで、それまでのビジネスは足踏みとなった。
対策として、ゲノム創薬または最先端の技術を使った創薬を支援する新たなデータ処理システム、つまり、たんぱく質、細胞表面や血液の解析などさまざまなデータを処理するプラットフォームに、昨年度思い切って投資した。今期から売り上げとして貢献する。
幸いなことにゲノム創薬、テーラーメード創薬の開発指針がアメリカで発表され、日本でも指針案として発表されたので、製薬企業の意欲も徐々に高まってきた。
――御社の特長と強みは?
われわれの事業の強みは最先端の技術をいかに処理するかというところ。日本国内では最先端の技術を使っておらず、経験した人や企業がほとんどない。もともとは欧米から持ってきた技術・ノウハウで、クライアントと独占的に話をすることにより、日本でマッチするような技術を作り出すことができたのが強み。言葉を換えると、コンサル事業を通してクライアントのニーズをいつも適切に把握してシステム・技術に反映させることができるのが最大の強みだと考える。(つづく)
中編 後編
【会社概要】
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――創業の経緯と事業内容は?
99年の後半に、解析が終わろうとしていたヒトゲノムを使ってよりよい薬を作ろうという動きが出てきた。私は大手の製薬企業で、そういう大きな変化を目の当たりにしていたが、日本の製薬・医療業界はかなり動きが遅れていた。コストが非常に高くつくので、手をつける必要はないだろうといわれていた。しかし、技術の進歩でコストが安くなるはずなので、私はよりよい医療を最新の技術を使って行う時代が来るに違いないと考えた。
これは人々のためになるし、ビジネスチャンスだと感じ、当時世界一だったグラクソウェルカム社を99年末に退社。このチャンスを生かせば日本の医療に貢献できると思い、ゲノムの技術を使って副作用の少ない薬を作ることを目指し、アメリカにたくさんあるバイオベンチャーのように製薬企業の薬作りを効率的に支援する会社を作りたいという気持ちで創業した。
日本の製薬企業の状況を詳しく分析する必要があったので、最初の一年間はコンサルティング事業を中心に多くの製薬企業と話をした。私自身の欧米での経験とネットワークのおかげで、情報源として重宝してもらい、コンサルティングビジネスは非常にうまくいった。まず気づいたのは、最先端の技術を使ってよりよい薬を作る前提としての、情報を分析するITの力が日本の製薬企業は非常に弱く、遅れているということだった。
01年にベンチャーキャピタルから4億円を資金調達し、それぞれ製薬企業のニーズにあった情報システム、すなわち先端的な技術、特に山ほどあるゲノムの情報をうまく利用できるような情報システム開発に投資し、それぞれの企業に最適なものを提供してきた。
その結果順調に売り上げを伸ばし、03年度には4億8000万円強となった。監査法人のデロイトトーマツから急成長企業として選ばれ、「2004年デロイト トウシュ トーマツ 日本テクノロジー Fast50」第1位を受賞した。業界のニーズにあった新しい薬の作り方「ゲノム創薬」を支援することでビジネスが大きく飛躍し、03年9月に株式公開(IPO)できた。
その後順調にシステムの営業は進んだが、ゲノム創薬の進行は思うほど早くなかった。03年のIPOまでは売上高が急速に伸びたが、ゲノム創薬は「業界の期待ほど結果が出てない」という声が出始めた。また、ゲノム創薬の国からのガイドラインが出ず、承認が遅れたことで、それまでのビジネスは足踏みとなった。
対策として、ゲノム創薬または最先端の技術を使った創薬を支援する新たなデータ処理システム、つまり、たんぱく質、細胞表面や血液の解析などさまざまなデータを処理するプラットフォームに、昨年度思い切って投資した。今期から売り上げとして貢献する。
幸いなことにゲノム創薬、テーラーメード創薬の開発指針がアメリカで発表され、日本でも指針案として発表されたので、製薬企業の意欲も徐々に高まってきた。
――御社の特長と強みは?
われわれの事業の強みは最先端の技術をいかに処理するかというところ。日本国内では最先端の技術を使っておらず、経験した人や企業がほとんどない。もともとは欧米から持ってきた技術・ノウハウで、クライアントと独占的に話をすることにより、日本でマッチするような技術を作り出すことができたのが強み。言葉を換えると、コンサル事業を通してクライアントのニーズをいつも適切に把握してシステム・技術に反映させることができるのが最大の強みだと考える。(つづく)
中編 後編
【会社概要】
商号 | 株式会社メディビック |
設立 | 2000年2月 |
上場 | 03年9月(東証マザーズ上場:証券コード 2369) |
資本金 | 14億1132万円 |
売上高 | 3億8500万円(04年12月期連結) |
代表取締役社長 | 橋本康弘(はしもと・やすひろ) |
従業員数 | 35人(05年3月末) |
本社 | 東京都千代田区霞が関1-4-2 大同生命霞が関ビル8F |
電話番号 | 03-5510-2407(代表) |
URL | http:// www.medibic.com/ |
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