医薬研究開発コンサルティングと情報処理システム支援のメディビック<2369>は、同社の手がける「ゲノム創薬」事業の承認が遅れ、03年の株式公開後、足踏みを余儀なくされている。同社によると、情報システムと新薬開発への投資で、今期も純損益の赤字が続くと予想しているが、そろそろ投資効果が現れてくる頃だという。橋本康弘社長に、今後の見通しなどを聞いた。

前編

――前期(05年3月期)の業績は?

 04年度の業績だが、売上げが3億8500万円と03年度より落ち込んだ。純損益も6億3200万円の赤字を計上した。これには2つ大きな原因がある。

 1つはゲノム創薬のトレンドが予測ほど早く進行しなかったこと。それを察知し、新しい情報処理システムにかなりの時間をかけることになり、研究開発費が大きく膨らんだ。人的な資源が限られているが、営業力を割いて将来のために、新しいシステム作りに注力した。

 もう1つは薬に対する投資。最先端の技術情報を使い、副作用が少なく、それぞれの人に効きやすい薬作りを支援しているが、多くの株主や患者からオリジナルの薬を作ってほしいとの声もあった。少し時期が早かったが、われわれの技術でよりよい薬を作るのが最終ゴールであり、昨年非常にいい薬の候補をみつけたので、独自の医薬品開発を始めることにした。アメリカで臨床開発テストの「フェーズ3」という最終段階にあり、しかも「ファーストトラック」という、優先的に審査してもらえるがんの薬を日本で開発する権利を導入するチャンスを得た。それを日本にライセンスして本年度より臨床開発を行う計画で、それに対する投資がかさんだ。

 システムと薬の候補に対するライセンス投資、この2つで大きく研究開発費が膨らみ、また、限られた人的資源を集中させたので、売り上げが大きく落ち込んだ。

――今期の業績予想と今後の方針は?

 昨年つくったシステムの売り上げが伸びつつある。また、子会社のメディビックアライアンスが事業を積極的に行うことによって、売り上げが増加すると期待している。売上高は8億900万円を見込んでいる。

 メディビックアライアンスのビジネスモデルでは、欧米の技術を導入し、日本のマーケットに合うような技術に改良、開発して業界に提供する。提携時に投資もすることで相手の企業の開発や営業の方針に大きな影響を与えることができ、一心同体で開発を進るという戦略をとっている。さらにメディビックアライアンスは、単独でもバイオの領域の有望な企業があれば、投資や周辺ビジネスのサポートを行う。

 こうしたことで売り上げははるかに回復するものの、薬の開発を今年も引き続き行うので、昨年と同額の研究開発費が必要。研究開発費の負担は大きく、今期も残念なことに純損益は3億5000万円程度の赤字の予想。来期はさらに売り上げが伸びるので、研究開発費が同額で推移すれば、利益でも明るい見通しが出る。

 将来的には、個人に適した薬を作る「テーラーメード創薬」が一般化する。一方で、独自に作っている医薬品候補化合物がアメリカでフェーズ3まで進んでおり、日本でも開発がスムーズに進み、われわれ自身も薬を世に出せる。さらに昨年度投資した新しい技術が世に出て売り上げに貢献し、製薬企業の新薬の製造開発の効率化に貢献できるようになり、来年度あたりから売り上げも利益もかなり順調に成長すると考えている。

 この化合物はすい臓がんへの適用を考えている。すい臓がんはほかによい薬がなく、マーケットに出せば非常に強いポジションが取れる。しかも開発時間が短くて済むと、かなり期待を持っている。2010年ぐらいから売り上げに貢献すると思うが、もっと早期に売り上げが伸びるよう努力していく。

 「テーラーメード医療」が後退することはない。次々に新しい考え方で薬が作られることは間違いない。新しい考え方なので国内で行っている既存の企業はないし、ベンチャーであっても他社はかなり規模が小さい。われわれはマーケットでかなりのお客さんをつかんでおり、業界全体がこの方向に発展していけば、われわれのビジネスも並行して、あるいはそれ以上に成長する。(つづく)

後編

【会社概要】
商号株式会社メディビック

設立

2000年2月
上場03年9月(東証マザーズ上場:証券コード 2369)
資本金14億1132万円
売上高3億8500万円(04年12月期連結)
代表取締役社長橋本康弘(はしもと・やすひろ)
従業員数35人(05年3月末)
本社東京都千代田区霞が関1-4-2 大同生命霞が関ビル8F
電話番号03-5510-2407(代表)
URL http:// www.medibic.com/


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