クラウドワークス代表取締役社長兼CEO 吉田浩一郎氏●1974年、兵庫県生まれ。東京学芸大学卒業後、パイオニア、リードエグジビションジャパンなどを経て、ドリコム執行役員として東証マザーズ上場を経験した後に独立。2011年、同社創業。

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人には同じ24時間しかないのに、なぜ仕事の進み具合に差が出るのだろう。成果を挙げる人たちの話を聞いてみると、業界は違っても、段取りに対する共通の意識が見えてきた。

■1対1のメールを創業時から禁止する理由

クラウドワークスは、吉田浩一郎社長が2011年に創業したベンチャー企業だ。同社は、インターネットを通じて仕事の受発注を行うクラウドソーシング事業を展開している。

サービス開始からの2年で、四半期ごとの契約額は43倍以上に急成長。現在、同社には、電通やサイバーエージェント、リクルートが総額15億円近くを出資する。事業のさらなる拡大の中で吉田さんは、年に200回の講演を行いながら、ときに1日10件以上のアポイントをこなしている。多忙なスケジュールを組み立てるうえで彼が「大きなポイント」と挙げるのは、「会議を極限まで少なくする」ことだ。

「報告のための会議をすべて排除しました。会議とは本来、全員が事前に資料に目を通して発言しなければ意味がありません」

代わりに同社では契約状況などの情報を社内システムですべて公開、約500の項目を1日単位で誰もが比較できるようにしている。各部門長とのやり取りも30分に限定。これも定例化することなく、必要がなければ行わない。

「うちでは1対1のメールも創業時から禁止しています。すべての情報をオープンにすれば、社員が社内情報を集めるために時間を費やすこともありません。情報の偏りは派閥を生みますから、それは私も含めみんなのストレスにもなってしまう」

こうした情報の共有化は、吉田さん自身のスケジュールについても同様だ。彼のスケジュールはグーグルカレンダー上で公開されており、社員は空いている時間におのおのが予定を入れていく。そのため、吉田さんはこれまで自身の予定を管理するための秘書も雇ってこなかった。グーグルカレンダーは前日の夜と朝に確認。その日の状況に合わせてスーツを着るかどうかを判断して出社するという。

ただ、それだけでは社員の都合で瞬く間に1日の予定が埋まってしまう、という問題もある。そこで彼は1週間のうちに半日程度、事前にスケジュールをブロックしておく。常に予定表に空白を確保することには、2つの効用があるという。

「1つは優先順位の高い会合や面会を入れられること。もう1つは予定が入らなかった際、未来の事業や戦略をイメージする時間に充てられることです」

そんなときは誰にも邪魔されずに1人で思考を深めようと、社員に黙って近くのコワーキングスペース(共同オフィス)に行くこともある。

「いまは飛行機の予約、宿の手配まで自分でやっていますが、今後は秘書を導入する予定です。それによってできた時間を、事業について思考する時間に充てたいですね」

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【QUESTION】どうやって集中力を高めているか?
昼食後に30分程度、仮眠の時間をとるようにしています。場所は会社のデスク。椅子は座り心地がよくて、リクライニングできるバロンチェア(岡村製作所製)を使っています。思考を深めるためには、十分な睡眠が不可欠だと思います。1日の睡眠時間は5時間ほどですが、もっと欲しい。昼に仮眠の時間がとれないときは、移動中のタクシーで寝ることも多いですね。

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(稲泉 連=文 向井 渉=撮影)