20世紀フォックス映画から今年も年賀状が送られてきたわけですが、そのラインアップの中に2010年夏公開予定として、なんとあの名作アクションSF映画「プレデター」をロバート・ロドリゲスがプロデュースしてリメイクした「プレデターズ(仮題)」というとんでもないタイトルを発見、「ロバート・ロドリゲスのプロデュースのもと、新たに蘇る!」と書かれていました。今回は「何が起こるかわからないプレデターの母星にて、囚人、そして軍人のグループが、お互いを信用できない中、協定を結んで未知の恐怖に立ち向かう」話になるらしい。

で、なんとその「プレデターズ」にルイ・オザワ・チャンチェン(Louis Ozawa Changchien)という日系人の俳優が出演、日本に里帰りするタイミングでインタビューすることに成功しました。これまでその全貌が謎に包まれていた「プレデターズ」について、次々といろいろなことが判明しており、非常に興味深い内容になっています。

ルイ・オザワ・チャンチェン氏へのインタビューは以下から。
◆「Predators(プレデターズ)」の撮影について


インタビュアー(以下、Gと省略):かつて1987年に公開されたあの「プレデター」をリメイクというかリイマジネーションして2010年7月から「Predators(プレデターズ)」というタイトルで全米公開予定らしいのですが、本当に撮影は進んでいるのでしょうか?

ルイ・オザワ・チャンチェン(以下、Lと省略):ホントに進んでます。あと一週間で撮影終了です。

G:どれくらい撮影期間があったのですか?

L:全部で3カ月です。ハワイで3週間、テキサスは2カ月半ですね。殆どテキサスです。

注…この映画のプロデューサーであるロバート・ロドリゲスが持っているトラブルメーカー・スタジオ(テキサス州オースティン)で主に撮影。ここは飛行機格納庫を改造した撮影スタジオ。

G:なぜハワイとテキサスで撮影を?

L:ハワイ島では色々な映画のロケが行われていますし、安全なところですから。虫は多いけれど、マラリアもないし。それに蛇もいないんです。

G:ハワイには蛇がいないのですか?

L:全くいないですね。知らなかったでしょ(笑)
津波はあるけれどね(笑)

G:テキサスには蛇がいっぱいいるのでは?

L:でも冬なので全然いなかった。テキサスのロケ地は、まさにエイリアンのプラネットのように感じました。洪水が押し流した土地の上で撮影したんですよ。砂地なんですが、それこそ文字通り月の上を歩いているような感じでした。

G:テキサスに洪水?

L:アメリカで一番湖の多いのがテキサス州なんです。ミネソタと争っていますが、テキサスの方が多いです。撮影は快調に進んでいてあと一週間で撮影が終わります。それからポストプロダクションですね。

G:撮影はテキサス州のオースティンにあるスタジオなどで行われているとのことですが、ほかにはどのような場所で撮影を行いましたか?

L:テキサスに「Hamilton Pool」という自然にできたプールのような場所があるんです。真っ青で滝が流れていて、洞窟になっている。ここでも撮影しました。ハワイでは「Maui's Valley of the Kings」でも撮影しました。

G:撮影の中心となった、トラブルメーカー・スタジオでの撮影はどのような様子でしたか?

L:スタジオはオースティンの飛行場を改造したもので「シンシティ」の撮影もしたスタジオになります。
(今回の撮影では)コンテナを40個借りてきてそれを立てかけて、その中に本物の石を並べて、本物の木もいっぱい持ってきて……。そこまでのものは僕も初めてだったのですが、そうやって本物の植栽物に囲まれた凄いジャングルのセットを作り上げました。当然、すごいお金もかけて、本当のハワイのように見えるようにしました。
それが(物語の中心である)「ハンティング・キャンプ」と呼ばれる舞台です。


(注:「ハンティング・キャンプ」とはプレデターが人間を誘拐して放り込む「狩り場」のこと。今回の「プレデターズ」はプレデターがいろんなタイプの獲物(人間)をさらってきて、ハンティング用の惑星に放り込んで、狩りをするという設定)

◆「Predators(プレデターズ)」に出演する俳優について


G:12月18日に海外の各映画系サイトで話題になっていましたが、「マトリックス」のモーフィアス役で有名なローレンス・フィッシュバーンもこの「Predators」に出演するとのことですが、本当ですか?

L:本当です(笑)
僕らも本当にフィッシュバーン来るんですかと毎日聞いていたくらいです。みんなも喜んで彼の到着を待っていました。色んな噂があったんですよ。ブルース・ウィリスとか、アーノルド・シュワルツェネッガーとかジャン=クロード・ヴァンダムとか……。
でもローレンスになって良かった。
今回の彼の役はモーフィアス(映画「マトリックス」の登場人物、重要な役目を果たす)とは全然違って面白いです。(モーフィアスの役柄よりも)なんとなく怪しい、クレイジーな印象です。ひとりで生き残っているからね。ネズミみたいな(笑)
僕もその役柄を知らなくて、撮影前のリハーサルはみんな観に行きました。ショックでしたね。

G:現場での彼は尊敬されていましたか?

L:もちろん尊敬されていますよ。これまで彼は色んな役柄をこなしていますし、「マトリックス」がとてもポピュラーになったので、みんなモーフィアスのイメージが強いかも知れないけれど、僕はその前の彼の出演作の時から好きでした。ニューヨークで舞台演劇などもやっていますし。

G:2009年12月14日にセット・ビジットが行われていたそうで、そこで観ることのできたセット(ミニチュアとフル・スケールのもの)が素晴らしかったとのことですが、どのような感じでしたか?

L:さっき言ったジャングルのセットも観たんでしょうし、インテリアのセットもあるんです。ローレンス・フィッシュバーンの演じるキャラクターが住んでいる所の。それも観たんじゃないかと思います。彼は(プレデターの惑星で)ずっと生き残っていたサバイバーという設定なんです。10年くらい洞窟の中に住んでいたんです。

G:彼はキング・オブ・サバイバルという設定ですか?

L:そうですね。彼はファイターだけど逃げるのも上手な設定です。

G:オザワさん自身もミニチュアセットを観たのですか?

L:ミニチュアを撮影するのではなく、それはあくまでモデルでして、それを元に大きなセットを組んで撮影しています。それがコンテナ内の「ハンティング・キャンプ」です。

G:ハンティング・キャンプというのはどういうセットですか?

L:どう言ったらいいでしょう。肉とかがぶら下がっているんですよ。

G:という事は森のようなものではなく、屠殺場のようなものですか?

L:そう。バーベキューのピットみたいな感じ。絶えずスモークが焚かれていて……

G:スモークが焚かれているっていうのは、例えば「ブラックレイン」のシーンのように?

L:実は僕の剣道の先生が「ブラックレイン」に出演しています。高倉健さんの息子さん役です。本当は高倉健さんと10歳しか変わらないんですが。もう昔の話ですけど……(笑)

◆「Predators(プレデターズ)」のストーリーについて


G:ネット上のあちこちで行き交っている本当かどうかよくわからないストーリー説明によると、今回の「プレデターズ」では、プレデターの故郷の惑星に放り込まれて狩猟のターゲットにされた人間たちの死闘を描くそうですが、オザワさんは「プレデターズ」に「Hanzo(ハンゾウ)」という名前で出演するとクレジットされています。どのような役なのでしょうか?

L:キレたヤクザの役です(笑)
(プレデターに)誘拐されたヤクザの役ですね。

G:なぜ、誘拐されることに?

L:彼は親分でもなくチンピラでもない。(組織の中での地位は)たぶん2番目、3番目の人だと思います。とても恐れられている怖い人です。そしてスキルを持っているんです。銃のスキルもあるし、刀剣でも戦えます。

G:そういうスキルを持っているからプレデターに目をつけられて誘拐されたということですか?

L:だと思います。実はあまりその部分は説明されません。誰もがいきなり(誘拐されてプレデターの狩り場であるハンティング・キャンプに)落とされて、一体なぜ自分が落とされたのか、どこにいるのかわからないのです。それがだんだん状況がわかってくる。周りの人間の事も、自分たちの置かれた状況に関しても。

G:ハンゾウ役はやりやすかったですか?

L:いや、ちょっと難しかった(笑)
とても無口な人なんですよ。ほとんどしゃべらない。僕はふざけたり、人と話すのが好きなのですが、ハンゾウ役はクールで常に冷静でいなければなりませんから。

G:ハンゾウは平気で人を殺すような人なのでしょうか?

L:(設定上)昔はそうだったと思うけれど、彼が(狩り場に)着いた時には、彼は既に簡単に人を殺すような人間でなくなっていると僕は思います。その辺りは脚本には書いていないけれど、作品を観れば分かります。

G:ハンゾウのスタイルはどのようなものですか?

L:グレーのスリーピースで肩にべレッタ。それに刀は(ストーリーの流れの中で、狩り場で)自分で見つけます。その狩り場に残された15世紀のサムライの残した刀です。過去にそこで殺されたサムライだと思います。


G:ローレンス・フィッシュバーンはいつからその惑星にいるのでしょうか?

L:たぶん10年くらいかな。一人で10年間も!どんなものを喰っていたのか分からないですよね。気持ち悪いものを喰っていたのかな。

G:どういうストーリーなのかはおそらく契約で明らかにできないと思うのですが、もとになった「プレデター」の各シリーズのうち、どれに一番近い感じが現時点ではしていますか?

L:1作目に一番近いですね。1作目のレコメンドも入っていると思います。キャラクター達もよく観れば、特にファンはなんとなく1作目のキャラクターに似ているな、なんて思う場合もあると思います。僕の演じるハンゾウにアーノルドを感じる人も多いです。

G:もう一度1作目を見て復習した方がいいですか?

L:だと思います。僕も昔から好きでしたが改めて見直すとやはり名画ですね。今見てもとてもオリジナルな映画ですね。

G:プレデターにはサムライ的なイメージもありますが、そんなイメージを持つクリーチャーも初めてでしたよね。

L:そうですよね、でも髪型はラスタファリアンですけれどね(笑)ジャパニーズとジャマイカンのハーフです(笑)
アーマーは侍だけど、頭はジャマイカンですね。そしてSMみたいなフィッシュネットを着ている(爆笑)

G:そもそもどういう経緯でこの「Predators」に出演することになったのですか?

L:分かんない(笑)
ま、オーディションを受けたんですが。なんとなく静かなパワーがあって、僕は昔から剣道をやっていたのでその辺もあったのかな。他のキャラクターとの絡みもあったのかな。まだ監督とそういう話をした事はないけれど、今度聞いておきます。他の日本人も候補にあがったらしいのですよ。FOXからは本当にルイは日本人ですかって聞かれました、最後の最後まで(笑)
だから僕も母親は日本人で、父親は台湾人なんだけど、二人とも日本に住んでいて、日本で出会って…と僕のストーリーを全部説明しました(笑)


だから(ハンゾウの戦うシーンの)アクションスタントにも日本人として色々と指摘をしました。最初にスタントの人達を観た時に、彼らはとても優れたスタントマン達でしたが、これは駄目だと思いました。動きがカンフーっぽいのです。考えてみると「キル・ビル」でのファイトシーンも舞台は日本であっても動きはカンフーなんですね。だから僕に全部やらせて下さい、それから僕の剣道の先生を使って下さいとお願いしました。実は監督(注:ニムロッド・アーントル監督)も剣道が好きで、それでOKが出ました。

ちょうどそのファイトシーンの撮影のタイミングは、僕の剣道の先生にとっても八段の昇段試験があったのです。撮影自体も天気の影響で延び延びになったのですが、先生は昇段試験よりもテキサスでの撮影を優先してくれました。もう五歳からその先生から剣道を習っているのですが、もう今や先生というよりは第二の父親です。

G:最後に何かアピールがあればどうぞ!

L:是非観て下さい(笑)
日本では夏くらいの公開かな?まずは劇場で!それからDVDも買って下さい!

……というわけで、これが20世紀フォックス映画から送られてきた年賀状。この時点では「プレデターズ」の監督はニムロッド・アーントル。制作がロバート・ロドリゲス、エリザベス・アヴェラン。キャストはエイドリアン・ブロディ、トファー・グレイス、アリス・ブラガ、ウォルトン・ゴギンズとなっています。


このインタビューが掲載される頃にはもう撮影は終了する訳なので、早ければ春頃には予告編ムービーが出るのかも。ここ最近はこういった荒唐無稽な映画がありそうでなかったので、非常に期待大です。

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