冬のほうが食中毒が起きやすいって本当?

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梅雨から夏にかけて「食中毒予防」を呼びかけるポスターを見かける機会が増えるが、じつは寒い時期のほうが食中毒の発生率が高いのはご存じだろうか。

傷んだ食品がおもな原因と思われがちだが、食べ物を介して感染すれば「食中毒」扱いになるので、秋から冬にかけておいしいキノコやカキの「自然毒」、冬季に流行する「ウイルス性の感染症」も原因となる。おいしいものが増える秋〜冬は、食中毒の危険性も高まっているのだ。

■カキやきのこの「自然毒」にご用心

2013年で食中毒にかかった患者数を、四半期ごとに集計すると、

・1位 … 1〜3月(33.8%)

・2位 … 4〜6月(25.7%)

・3位 … 10〜12月(23.1%)

・4位 … 7〜9月(17.2%)

と、食品が傷みやすいイメージに反して7〜9月が最下位だ。10〜3月:4〜9月の半年単位で比較しても57:43となり、“食中毒=夏”のイメージとは裏腹に、寒い時期のほうが1.3倍も多い。これは、食べ物を介して具合が悪くなれば、「食中毒」扱いになるので、食材自体がもつ「自然毒(毒素)」やウイルス性の「感染症」も食中毒にカウントされるからだ。

原因となる食品をジャンル分けし、発生頻度を四半期ごとに集計しても、

【魚介類】

・1位 … 7〜9月(41.5%)

・2位 … 1〜3月(33.4%)

【きのこ】

・1位 … 10〜12月(59.4%)

・2位 … 7〜9月(40.5%)

【肉類及びその加工品】

・1位 … 10〜12月(44.6%)

・2位 … 7〜9月(28.7%)

【野菜及びその加工品】

・1位 … 4〜6月(65.5%)

・2位 … 10〜12月(15.2%)

と、10〜3月の寒い時期に多く発生していることがわかる。

魚介類やきのこによる食中毒が寒い時期に増えるのは、食材が持つ「自然毒」が原因で、カキなどを十分加熱せずに食べてノロウイルスに感染したり、毒きのこの誤食が増えるからだ。

■最大の原因はウイルス

ウイルス性の食中毒で、最も脅威なのはノロウイルスだ。

カキに「あたる」と表現されるものの、原因は傷んでいるからではなく、海水に含まれるノロウイルスを取り込んでしまうからだ。そのため養殖業者は、海域のウイルス・チェックや人工浄化をおこなうため安全に生食できるのだが、ノロウイルスの感染経路は、

・経口感染 … 汚染された手指で調理したものを食べた

・接触感染 … 排泄(はいせつ)物や嘔吐(おうと)物に触れた

・飛沫(ひまつ)感染 … 排泄物や嘔吐物が、床などに飛び散った後の飛沫

があり、カキ以外の原因のほうが圧倒的に多い。感染した子供を介抱した母親が十分に手洗いせずに調理すれば、他の家族に二次感染させてしまう恐れがあるし、同様に、レストランの厨房などで調理に携わる人がノロウイルス感染に気づかずにいれば、「食事特定」と呼ばれる集団食中毒をひき起こしかねない。

2013年の食中毒患者数をみると、ノロウイルスに汚染された学校給食など「食事特定」のケースが約70%を占め、その約60%が10〜3月に発生している。つまり4割近くが寒い時期に起きているのだ。

予防が大切なのは言うまでもないが、発生した際に感染拡大を最小限におさえることが最重要課題だ。薬用石鹸での手洗い、マスク着用、塩素系漂白剤で消毒が効果大なので、すぐにでも衛生管理をおこなおう。

■まとめ

食中毒は、夏季より寒い季節の方が多く発生する

・秋〜冬の食中毒は、自然毒やウイルスが原因

・2013年の食中毒患者数の約70%は、いわゆる集団食中毒

これからの季節は衛生管理を、暖かくなったら食材の保存方法に注意しよう。

(熊田 由紀/ガリレオワークス)