――その後はどんな道のりで芸人に?

中山:運動はとにかく出来なかったので、ふざけたりとかしてましたね。友達の前で、高校の同級生とコントをやったり。その前には、ギャグ漫画を書いてまして、漫画家にもなりたかったんですけど、絵が上達しなかったので断念しました。

――好きだった漫画家は?

中山:吉田戦車先生です。断トツで影響を受けました。たまたま小さいときに、お父さんが「伝染るんです。」を買ってきたんですよ。レベルの高いものに幼いときに触れたというので、興奮しました。吉本新喜劇のときもそうですし、ダウンタウンさんを見たときもそうでした。

――漫才にも興味があった?

中山:好きでしたね。大木こだま・ひびき師匠とか、小さいときに面白いなと思ってましたし。でも、自分でコンビでやるとなったときに、出来なかったんですよね。単純にそのときにコントがやりたかったっていうのがありました。今となっては、より憧れがありますけどね。一人やったら出来ないものですから。一人漫才っていうのも、作ってみたんですけど、ただの分裂症になってもうたので、やめておきました。

――NSC(吉本総合芸能学院)に入ったのは?

中山:高校卒業してすぐです。高校の文化祭とかで、一緒にネタやった当時の相方と入りました。

――そのコンビはなぜ解散したのですか?

中山:早い段階から、バッファロー吾郎さんにお世話になっていて、在学中にイベントに呼んでいただいたりしていました。僕としては、励みになっていたんですけれども、オーディションになかなか受からなくて、木村さんに相談したりして、ちょっとずつウケるネタ作りみたいのが分かってきた頃やったんですけど、あまりにもオーディションに落ちすぎて、相方がある日突然、「辞める」と言い出しまして。4日後くらいにオーディションが控えていたんですけど、ライブ終わって、「おつかれした」って言って、「俺、じゃあ今日でおつかれした」って。「え? 今日でってどういうこと?」。「いや、辞めるわ」って。とてもあっさりしたものでした。バイトでもあんな風にはならないですよ。結局、そのオーディションには一人で出たんですよ。間を空けたら、辞めてしまいそうな気がしたので。

――結果はどうでしたか?

中山:そのゴングショーに受かったんですよ。内容は、無茶苦茶なんです。座布団を向こうから投げてきて、そこに座って、急に「落語します」って言うてみたり。合格して、喜んでいたら、後で作家さんに「解散して一人で出て、あまりにかわいそうやったから、合格さしてもうた」って言われました。「これからも頑張れよ」っていう意味の合格だったみたいです。その当時は、本当にふざけてましたね。ただレタスを5分間、めくり続けたこともあります。「手品します」って言って。

――ウケましたか?

中山:スベってました。300人おって、投票結果が0票やったらしいです。

――でも、発想が面白いですね。

中山:なんでもやりたかったんですよね。その3カ月後に先輩に誘われてコンビを組むんですけど、その前まで、相方に「セリフを一言一句、間違わずに言ってくれ」というタイプ。それが嫌で辞めていったと思うんですけど、逆に先輩とコンビ組むってなったら、自分のボケとかじゃないわけなんですよね。これは僕は出来ないと思いました。迷惑かけたんですけど、2カ月で解散して、それから、一人です。本腰を入れました。上の立場でやっても無理、下の立場でやっても無理。そこで、自分はピンでやっていこうと思いました。

――今年は「R−1ぐらんぷり」で優勝しました。その後、生活は変わりましたか?

中山:あんまり変わってないですね。営業は増えましたけどね。それはありがたいです。地方を回らせていただいたおかげで、優勝できたと思ってますし。地方に行ったら、どんなネタが受けるか分かるんですよね。田舎の人でも、ここは共感してくれるとか、子供はここで笑うんやとか。あと、東京の出たことが無いテレビ番組に出させていただいたりしました。

――親戚は増えませんでしたか?

中山:200人ぐらいから、電話やメールがあって、「あ、こんなに知り合いがおったんや」と思いました。親父も電話くれました。「おめでとう」って言ってくれるのかと思ったら、第一声が「調子に乗るなよ」でした。「なんや、こいつ」と思いましたけどね。厳しい親父だったんですよ。お笑いが嫌いやし。「まだ、認めてへんのか」と思いました。

――でも、ちゃんと見てくれてたんですね。

中山:気にはなっていたみたいですね。

――R−1王者になって、何か得したことはありますか?

中山:賞金をもらったので、それを使い果たそうと思って、いま、すごい使ってますね。後輩と美味しいものを食べたり、母親にNSCのお金を返したり。とにかく飲み食いとかアホな使い方をしようと思っています。お金がゼロになったくらいで、東京に行って、心機一転、頑張ってみようと思っています。

――その経験がネタになったりするのでしょうか?

中山:飲みの席とかも、すごい大事やと思うんですよ。もともとそういうタイプじゃなかったんですけどね。しゃべったことの無い後輩とか、先輩のアドバイスとか、普段しゃべっているときに出来るノリとか。特にピン芸人は、「アイツ、堅いのかな」と思われがちですが、このDVDを見て、「結構、声を張り上げて突っ込むんや」とか思っていただけたらと思います。