皇室典範改正にフルスロットルで突っ走った「麻生氏」のモチベーションはどこにあったのか
ネックになっていたのは
皇族数の確保に向けた改正皇室典範が成立した。今国会での成立をリードしたのは自民党の麻生太郎副総裁だった。表向きこだわりについてのみ熱っぽく語り続けたが、細かなことについては触れずじまい。本心はどこにあったのだろうか。
これまでの経緯と今後の課題について長くなるが、おさらいをしておこう。今回、皇族の減少に歯止めをかけるため、以下の2点が制度化された。
・現在皇族ではない旧11宮家の男系男子を養子として皇室に迎えることが可能になる。その養子に生まれた男子には皇位継承資格が与えられる。
・女性皇族が結婚後も身分を保持することが可能となる。

2021年の有識者会議報告書提出からこう着していた皇族数確保策の議論は2月の衆院選を経て「巨大与党」が誕生したことによって7月に成立することになった。
「改正皇室典範の成立が今国会で見込まれ始めたとき、女性皇族が結婚後も身分を保持する点について異論は少なく合意形成は比較的容易だと見られていました。が、旧11宮家の男系男子を養子として皇室に迎えることが可能になり、子孫に皇位継承資格が与えらえれる件については“なかなか微妙”という反応が永田町で少なくなかったですね」
と、政治部デスク。
第2次安倍政権時代の調査
実際、政府案の全容が明らかになると、野党のみならず自民と連立を組む日本維新の会も一部に難色を示したが、麻生氏は維新の藤田文武共同代表との交渉に自ら乗り出して説得に成功。国会審議がストップした際には、麻生派出身で麻生氏が衆院議長に送り込んだ森英介氏が皇室典範改正案を最優先で協議するよう与野党幹部に諭す場面もあった。
法案が成立しても問題は山積している。まずは養子となることを希望する者が出てくるか否か。旧11宮家のうち賀陽、久邇、東久邇、竹田の各家に未婚の男系男性がおり、悠仁さまと同世代の15〜30歳以下の未婚の男系男子は少なくとも6人いるとの説がある。
「第2次安倍政権時代(2012年12月〜2020年9月)のある時期に、警察庁の中で“養子の有資格者に関する調査”を担った組織があったそうです。同庁出身で官邸の枢要を担った杉田和博官房副長官が関与している可能性は高いと思いますが、当時も今も当事者らに養子を希望するか否かの確認は行っていないと聞いています」(同)
養親になれるのは
「野党幹部からは“実は誰も望んでいない”といった話もオフレコで聞こえてきました。となると意思確認が何らかの形で行われていたことになるわけですが、それ以上の真相は現時点でわからずじまいでした」(同)
一方、養子を迎えるということは養親が存在することになるわけだが、養親になれるのは、上皇ご夫妻、天皇、皇后両陛下、秋篠宮ご夫妻以外の皇族だ。具体的には、以下の通り。
・常陸宮家:常陸宮さま(90)、華子さま(85)
・寛仁親王妃家:信子さま(71)
・三笠宮家:彬子さま(44)、瑶子さま(42)
・高円宮家:久子さま(73)、承子さま(40)
常陸宮さまは唯一の男性皇族だが90歳とご高齢で、養子を迎えて育てることのハードルは極めて高そうだ。残る3家はいずれも女性皇族が当主や構成員となっている宮家ということになる。仮に養子が残る3家に入ったとしても宮家を継いで当主になるわけではない。
すでに配偶者を亡くされて長い時間が経つ70代の久子さまや信子さまのもとに、血のつながらない若い男性が「息子」としてやってくるというのは、一般的な家族の感覚から見て違和感があるとの指摘は現時点でもなされていることだ。これから実際に実務が動き出す中で、その点はより生々しくリアルな問題として浮き彫りになっていくのかもしれない。
麻生氏の動機
では、今回の改正について麻生氏がかなり積極的に動いた動機は何だったのか。
「麻生氏は自民で『安定的な皇位継承の確保に関する懇談会』の会長を務めています。ことあるごとに“今国会において皇室典範の改正を”と訴えてきました。が、なぜ今なのかについてはオンでもオフでもハッキリ語ることはありませんでした。並々ならぬ思い入れを抱いているとされていただけにしっくりこない印象をいだいたのは事実です。積極的だった動機の1つは宿願説。信子さまは麻生氏の実妹でもありますし、進め方は別にして外部からはうかがい知れないほど皇統の継続に思い入れがあった、との見方です。仮にそうだとして、麻生氏が皇族方に対して何らかのアプローチを今回の件に関して行っていたとの話は聞こえてきていませんが」(同)
もっとシンプルな見方もある。今年9月で86歳になることから「置き土産」のようにレガシーを残したかったのでは、というのだ。
「レガシーとして皇室典範改正と憲法改正を成し遂げたいとの思いがあったと指摘する関係者はいます。首相としては何もしなかった、できなかった人ですから。ほぼ前例がない規模の巨大与党が誕生し、自民唯一の派閥を組織し、総裁・首相の生みの親として各方面ににらみを利かせられるタイミングは今しかないとの判断が働いたことは間違いなくあったと思います」(同)
もっとも、大手紙は軒並みこの改正のプロセスに異論を唱えており、政権の支持率を上げる要因とはなっていない。86歳のフルスロットルは英断だったのか、単なる暴走だったのか。
デイリー新潮編集部
