「教育費だけで精いっぱい…老後資金まで手が回りません」〈46歳・男性会社員〉家計を見直して気づいた盲点
教育費の負担が重い時期は、老後資金づくりが後回しになりがちです。子どもの進学費用を優先するのは自然なことですが、「今は仕方ない」と先送りすると、教育費が落ち着いた頃には老後まで時間が残されていないこともあります。
「大学までは出してやりたい」増え続ける教育費
直樹さん(仮名・46歳)は、妻と高校2年生の長男、中学2年生の長女の4人で暮らしています。年収は約680万円。妻はパート勤務で、世帯年収は約780万円でした。
住宅ローンは月10万円。長男の予備校代と長女の塾代を合わせると月8万円ほどかかり、季節講習の時期にはさらにまとまった請求が届きます。
「教育費だけで精いっぱいだよ。老後資金まで手が回らない」
直樹さんは妻にそう漏らしていました。夫婦の預貯金は約500万円ありましたが、その多くは大学進学費用に充てる予定でした。
長男は私立大学を希望し、県外へ進学する可能性もあります。長女も私立高校を選択肢に入れていました。
文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』によると、子ども1人当たりの年間学習費総額は、公立高校で59万6,954円、私立高校で117万9,261円です。公立でも塾などの学校外活動費を含めれば、家計への負担は小さくありません。
ある日、長男から予備校の追加講座を取りたいと言われました。
「志望校対策だから、受けたほうがいいって」
費用は約18万円。直樹さんは迷いながらも「将来に関わることだから」と申し込みました。
その夜、妻が言いました。
「私たちの老後、大丈夫なのかな」
「子どもが卒業してから貯めればいいだろう」
しかし、長女の大学卒業まで考えれば8年以上あります。その頃直樹さんは50代半ばです。
不安を感じた直樹さんは、勤務先の家計相談を利用しました。家計表を作ると、教育費以外の負担も見えてきました。
生命保険と医療保険は夫婦で月4万8,000円。車の維持費は駐車場代や保険を含めて月4万円近く。通信費や定額サービスも家族全体で月3万円を超えていました。
「教育費だけが原因だと思っていたけど、違ったのか」
直樹さんは、家計の盲点に初めて気づきました。
教育費を削るのではなく…
相談員から指摘されたのは、教育費を優先すること自体ではありませんでした。
「教育費が終わってから老後資金を始めるのではなく、少額でも並行して積み立てる仕組みが必要です」
総務省『家計調査報告 2025年(令和7年)平均』では、二人以上の勤労者世帯の実収入は月65万3,901円ですが、税金や社会保険料を差し引いた可処分所得は53万2,408円です。額面収入のすべてを生活や貯蓄に回せるわけではありません。
夫婦が保険を確認すると、保障が重複している契約がありました。必要な保障を残して整理すると、保険料は月2万円ほど減りました。通信プランと使っていない定額サービスも見直し、車は次回の車検を機にカーシェアへ切り替えることにしました。
毎月確保できた約4万円のうち、2万円は教育費の予備費、残り2万円は老後資金として積み立てます。ボーナスも全額を学費に回さず、一定額を老後用口座へ移すことにしました。
金融庁は、安定的な資産形成の基本として「長期・積立・分散」を示しています。ただし投資には元本割れの可能性があるため、近く使う教育資金と長期で備える老後資金を分け、無理のない範囲で行う必要があります。
直樹さん夫婦は、子どもとも進学費用について話しました。希望を否定するのではなく、自宅外通学になった場合の費用や奨学金の返済も含めて考えることにしたのです。
教育費は、単純に削ればよい支出ではありません。しかし、「余ったら老後に回す」という考えでは、老後資金はいつまでも残りにくいものです。複数の目標を両立するには、使い道を先に分け、少額でも同時に備えることが大切なのかもしれません。
