巧妙な手口とその費用とは(metamorworks / shutterstock.com)

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「大金を用意するより、日本人と結婚した方が早い」

 制度が厳格化され、日本在留の壁が高くなった。それでも日本にとどまり続けたい人たちの中には“抜け道”を利用する者もいて……。SNS上に存在する「日中お見合いパーティー」や「結婚相談所」を掲げるアカウント。中国人「偽装結婚」の実態をルポする。【奥窪優木/ライター】

(2026年7月3日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました)

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「本気で結婚する気あるんですか?」

 5分前に出会ったばかりの20代半ばの中国人女性は、筆者に突然そう問いただした。中国のチャットアプリ「WeChat」のコミュニティーで募集されていた「日中お見合いパーティー」での出来事だ。20歳近くも年上の中年男性に、結婚の意思を確認する彼女には、とあるもくろみがあった。

巧妙な手口とその費用とは(metamorworks / shutterstock.com)

「4年前に留学で来日して、語学学校を出た後に中国系企業に就職したけど、いつかは独立して貿易業をやろうとお金をためていた。でも去年から、経営・管理ビザの資本金要件が3000万円以上になった。そんな大金、用意するのにあと何年かかるか。だったら日本人と結婚した方が早いと思って……」

「紹介料として私たちに80万円。男性に謝礼として年間80万円」

 筆者は、知人の中国人女性、陳さん(仮名)に協力を依頼。「日本人男性との結婚希望者」として、結婚相談所にメッセージを送ってもらったところ、24時間以内に二つのアカウントから返信があった。うち一つは、「今から電話で詳細を話したい」と積極的だ。

 取材時の「設定」まで細かく考えていなかった筆者は、冒頭のお見合いパーティーで会った中国人女性から聞いた婚活の動機を陳さんに流用してもらうことにした。

 WeChatの通話機能で呼び出したところ、応対したのは40代と思われる女性。開口一番、「今はどういう状態?」と尋ねてきた。

 陳さんは「経営・管理ビザの条件が厳しくなったから、いっそ結婚した方が早いと思って」と筆者との打ち合わせ通りに返答。すると業者の女性は「偽装結婚相手を探しているのね」と率直に切り出し、言いなれたせりふのようにこう畳みかけた。

「あなたは今、就労ビザを持っているから、簡単よ。1年以内に入籍すれば配偶者ビザをもらえるし、順調にいけば5年後には帰化か永住許可の申請ができる。費用は紹介料として私たちに80万円。男性に謝礼として年間80万円。帰化か永住許可を取得したら離婚すればいいし、その後は費用は一切不要よ。東京に住んでいるなら、静岡か福島の男性が便利がいいわね。東京入管が管轄する関東甲信越は、チェックが厳しいから避けた方がいいのよ」

「昔の偽装結婚は男との行為も条件だったりしたけど……」

 女性がひととおり話し終えると、陳さんは「男性の家で一緒に住む必要はないのか?」と質問。しかし女性は「その必要は全くない」と断言した。

「配偶者ビザの審査の際に要求されることがある『交際中の写真』をあらかじめ撮っておく必要があるのと、面接のために現地の入管に出向かないといけないこともあるけど、基本的に今のままの生活ができる。昔の偽装結婚は男との行為も条件だったりしたけど、今は違うから安心して。相手は大体おじいちゃんだし」

 しかし入管は偽装結婚への対策として、抜き打ちによる訪問調査も行っているはずだ。陳さんはそのこともぶつけたが、女性は「没問題(メイウェンティ)(問題ない)」と一蹴するだけだった。

「たしかに入管が調査に来ることもあるけど、一緒に生活しているかどうかを形式的に見に来るだけ。相手の男性の部屋に女物の服とかを置いて、一緒に生活しているように見せかければいいの。私が世話した50件の結婚で、入管の調査で偽装結婚がバレたことは一度もないわ」

 最後に、偽装結婚の相手となる日本人男性は、どういういきさつでこの業者にたどり着いたか聞いてみた。しかし、「お金が欲しい人たちで、本当の妻が欲しいわけではない。彼らにとってあなたは雇用主みたいなもの」と答えるだけで、多くを語らなかった……。

「新潮QUE」にて公開中の関連記事【在留資格厳格化が引き金? 活発化する中国人「偽装結婚」驚きの実態】では、驚異の「偽装結婚ビジネス」の裏側についてより詳しく報じている。

奥窪優木(おくくぼゆうき)
ライター。1980年生まれ。上智大学経済学部卒業。ニューヨーク市立大学を中退して現地邦字紙記者に。中国在住を経て帰国し、日本の裏社会事情などを取材。著書に『転売ヤー 闇の経済学』『ルポ 新型コロナ詐欺』などがある。

「週刊新潮」2026年7月9日号 掲載