2大会連続の8強進出は“必然” 弱小国だったモロッコを変えた国王の大号令 105億円を投資した文武両道の意識改革「おとぎ話ではない」【W杯】

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カナダとの激闘を制したモロッコ。その力を疑う者はもはやいない(C)Getty Images

「アフリカ勢で初のワールドチャンピオンになる可能性が高い」

 北アフリカの精鋭軍団の躍進が止まらない。

 現地時間7月4日、北中米ワールドカップ(W杯)のラウンド・オブ16でモロッコ代表はカナダ代表と対戦。序盤から相手に押し込まれる苦しい展開が続いたが、最後は地力を見せつける形で3-0と圧勝し、2大会連続のベスト8進出を決めた。

【動画】一発で仕留める決定力 モロッコの快進撃を支えるウナヒの得点シーン

 どちらかといえば劣勢と言える序盤を耐えたモロッコは、50分にセットプレーからアゼディン・ウナヒが先制点をゲット。これで流れを掴んだ。徐々に運動量が落ち、焦燥感を募らせていったカナダイレブンを尻目に、82分にウナヒ、アディショナルタイム8分にソフィアン・ラヒミがそれぞれネットを揺らして開催国のカナダを突き放した。

 この試合でモロッコが放ったシュート数はわずか5本。ゴール期待値も0.79とカナダ(0.86)を下回ったが、それでも枠内に飛ばした計4本のうち3本を決める驚異的な決定力で勝利を掴んだ。

 ベスト4まで駆け上がった前回のカタール大会と同様に勢いに乗るモロッコ。ラウンド・オブ32でオランダ代表を破った力は、やはり本物だと言わざるを得ない。もはや「まぐれ」とは言えない強さには、世界の関心も強まっている。

 英公共放送『BBC』は「どれだけ内容が悪くともモロッコは勝利を掴み取る。偉大なチームの証は、泥臭い戦い方でも勝つ方法を知っていることだ」と強調。国際大会において直近34戦無敗という勝負強さをふまえて「彼らをワールドカップの優勝候補として真剣に評価しなければならない」と記した。

 また、同局は解説を務めた元イングランド代表FWクリス・サットン氏が「試合開始時のモロッコの怠慢ぶりには驚いた。彼らがカナダチームを軽視していたのは、少し傲慢があったと言わざるを得ない」と指摘したことを紹介。その上で「それでも彼らをアフリカ勢で初のワールドチャンピオンになる可能性が高いことは疑いの余地がない。一夜にして作られたおとぎ話ではないのだ」と論じ、国王であるモハメド6世の熱心な投資が強化に繋がったと強調した。

サッカーを「国家プロジェクト」に。全てを変えた国王の決断

 2008年、モロッコ国内スポーツ振興の指針を決める「国家スポーツ会議」において、モハメド6世は施設の老朽化や組織運営の拙さを糾弾。サッカー界の強化を国家プロジェクトとして2009年に王立の育成組織「モハメド6世アカデミー」を設立。6500万ドル(約105億円)を投資し、教育施設を含めた充実の設備とインフラの整備を徹底。文武両道の強化を図ったことで、ユセフ・エン=ネシリやウナヒなど現代表を支えるスターを幾人も輩出した。

 無論、アシュラフ・ハキミやブラヒム・ディアスに代表されるように、国外で生まれた移民系の実力派の選手たちをA代表に引き込めたのも大きなポイントではある。それは欧州全土に張り巡らせたスカウティングの賜物だ。

 しかし、国王のサポートは代表チームにとって何よりの支えである。モハメド・ウアビ監督は「今、我々の国のサッカー界で起きていることは、すべてモハメド6世のおかげだ。ここ数年で、組織に多大な投資をしてくれた」と証言。それがいかにモロッコ代表を変えたのかを論じている。

「正直、今は勝ち続けることに何も驚かなくなっている。人々がモロッコについて語るとき、真の強豪国、つまり『サッカー強豪』として語っている。それは大きな誇りだ。これはまだ始まりに過ぎない。今後も長年にわたって、我々は快進撃を続けられることを願っているし、私たちは前進し続ける。もう立ち止まりたくない」

 サッカーを「国技」として捉え、強化に本気で取り組んだ。それによって選手や指導者たちの意識も劇的に変わった。かつて「弱小国」のレッテルを貼られるまでに堕ちたモロッコの変貌ぶりは、あらゆる国にとって一つのヒントなるのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]