中国の国旗

写真拡大

 中国当局が重電大手・富士電機の関係者ら日本人2人を「国家輸出入禁止貨物密輸」容疑で拘束した事件で、当局は、2人が規制対象の「レアアース(希土類)磁石」を製品に組み込んで日本に輸出後、取り出したとみて捜査していることが、関係者への取材で分かった。

 日中関係の悪化後、対日輸出が減少したレアアース磁石の必要量を確保しにくくなったことが背景にある可能性がある。

 2人は5月18、25日にそれぞれ遼寧省大連で税関当局に拘束された。日中関係筋や関係者によると、2人の容疑は同一事案という。中国の法曹関係者によると、日系企業関係者がレアアースの密輸絡みで刑事事件に問われるのは初めて。

 関係者によると、2人がレアアース磁石を取り込んだ形で製品を輸出し、日本で取り外して磁石の流用を図ったと疑っているという。問題視された行為の具体的な時期は不明だ。富士電機の現地法人は、モーターに使われる電磁開閉器(マグネットスイッチ)などを製造している。

 国家輸出入禁止貨物密輸罪は中国の刑法で定められ、個人の罪なら5年以下の懲役刑が科される。「重大事案」なら懲役5年以上となる。企業犯罪と判断されれば、企業に罰金が科される。2人の拘束は1か月以上に及んでおり、正式逮捕や起訴など司法手続きが進む可能性がある。

 昨年11月の高市首相の台湾有事を巡る国会答弁を受け、中国政府はレアアースを含むデュアルユース(軍民両用)製品の対日輸出規制を発動した。今回問題となったとみられるレアアース磁石の対日輸出量は首相答弁以降、減少傾向にあり、税関当局のデータによると、5月は約123トンで前月比34%減だった。現地の日系企業からは、民生用を含め輸出審査が滞るなど供給網への影響を懸念する声が出ていた。

 中国当局は規制逃れ対策などの強化に動いている。7月1日には、レアアースなどの戦略物資について、改造や分解、組み立てによって輸出許可手続きを逃れる行為の通報を促す規則が施行される。商務省が6月24日に発表しており、2人の拘束を受けた措置である可能性がありそうだ。第三国を経由した規制逃れについても通報を事実上求めている。摘発姿勢がより厳しくなるのは確実だ。

 中国では、反スパイ法が施行された2014年以降、日系企業関係者を含めて日本人17人がスパイ容疑などで拘束されてきた。ただ、今回の事件は「反スパイ法違反のような問題行為が全く不明な事案とは異なる」(日中関係筋)という。日本政府は現地の日系企業に関連法令への注意を呼びかける方針だ。