発足から間もなく1年半となる米国の第2次トランプ政権で、閣僚の辞任が相次いでいる。

 トランプ氏への忠誠心ばかりを重視し、資質のチェックをおろそかにしてきた人事が招いた混乱と言えよう。トランプ氏への権力集中が加速し、独善的な政策に一層歯止めがかからなくなる事態を懸念する。

 中央情報局(CIA)などの情報機関を統括するトゥルシー・ギャバード国家情報長官が今月で辞任した。対イラン軍事作戦をめぐってトランプ氏と対立したことが原因とされる。

 だが、就任前にはロシアの主張に同意するような発言が目立ち、そもそも情報機関トップとしての資質が問題視されていた。

 2期目のトランプ政権での閣僚の辞任は今年に入り、国土安全保障長官、司法長官、労働長官に続いて4人目となる。

 いずれもトランプ氏を礼賛する姿勢が評価されて起用されたものの、飲酒などを巡る不祥事に加え、政権の看板政策である不法移民対策などでトランプ氏の意に沿わない結果を招いたとして、事実上更迭されたとみられている。

 トランプ氏は1期目政権で、国防長官や国家安全保障担当大統領補佐官などの要職に軍人ら専門知識を持つ人材を起用した。政界とは無縁の民間人出身だったため、政権運営に専門家は欠かせないと当初は判断していたのだろう。

 だが、トランプ氏は次第に専門家の意見具申を疎ましく思うようになり、いずれも更迭した。2期目に入り、専門家を排除する傾向はより顕著になった。

 実業家のイーロン・マスク氏を政府効率化省(DOGE)のトップに据え、各省の職員を大量に解雇した。途上国で人道支援にあたる米国際開発庁(USAID)は組織そのものが解体され、1万人が職を失ったとされる。

 米国では閣僚のほか、各省の高官や大使など1000以上のポストが政治任用されるが、半数近くが今も埋まっていないという。

 影響は外交にも及ぶ。195の大使ポストのうち半数以上の107が空席となっている。ロシアの侵略下にあるウクライナ、中東の大国サウジアラビアなど、米外交にとって重要な国も含まれる。

 米国はイラン攻撃に踏み切ったが、イランからホルムズ海峡封鎖などの反撃にあい、停戦合意後も和平協議は難航している。専門家が去り、トランプ氏のイエスマンばかりで固めた体制の問題もあるのではないか。