【日本株】PBR1倍超でも割安株は見つかる、理論株価で探した注目銘柄15選
足元のように、株価が短期間で大きく上昇すると、「さすがに買われ過ぎではないか」と不安になることがあります。ここでいう「買われ過ぎ」とは、将来の業績拡大への期待を織り込んでもなお、株価が高すぎる状態を指します。
言い換えれば、投資家は無意識のうちに、ファイナンス理論でいう理論株価、すなわち妥当株価やフェアバリューを意識していると考えられます。実際の株価が理論株価を大きく上回っていれば、その上振れ部分は期待先行による過熱、場合によってはバブル的な評価とみることができます。
そこで今回は、残余利益モデルを用いて理論株価を試算し、現在の株価と比較することで、理論株価の観点から見て相対的に魅力があると考えられる銘柄を確認します。
理論株価は「将来の価値」を現在の価格に置き換えたもの
理論株価の基本的な考え方
実は、理論株価を算出するモデルにはさまざまな種類があります。しかし、その多くは共通した考え方に基づいています。その考え方とは、株式を保有して株主になると、企業から配当を受け取ることができるというものです。投資家が将来にわたって株式を保有し続けると、配当を受け取り続けることが期待できます。そこで、将来受け取ると期待される配当を現在の価値に換算し、その合計額を理論株価と考えるのが基本的な考え方です。
「でも、自分は株式を永遠に持ち続けるわけでなく、株価が上がったところで売却するつもりなので、このような理論株価は役に立たないのではないか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、それは少し誤解があります。
身近な例で考える、理論株価が重要な基準である理由
もう少し身近な例で考えてみましょう。例えば、毎年安定して家賃収入が得られるアパートがあるとします。このアパートを購入する人は、将来受け取れる家賃を期待して価格を決めます。そして、数年後にそのアパートを売却するときも、次の買い手は将来の家賃収入を期待して価格を決めます。
株式も同じです。株価は「次に買う人がいくらで買ってくれるか」で決まりますが、その買い手も企業が将来生み出す利益や配当を期待して価格を決めています。つまり、自分が将来の配当をすべてもらう必要はなく、将来の配当を期待する次の投資家に売却することで、その価値を受け取ることができるのです。
このため、短期間しか保有しない投資家であっても、その売却価格には将来の配当価値が反映されています。したがって、理論株価は長期投資家だけでなく、短期・中期の投資家にとっても、株価が割高なのか割安なのかを判断する上で重要な基準となります。
PBRでは測れない企業価値を超過利益モデルで評価する
理論株価を求める代表的な手法:超過利益モデル(残余利益モデル)
今回用いる理論株価は、将来の配当を直接予想するモデルではありません。しかし、その考え方は先ほど説明した「将来生み出される価値を現在価値に換算する」という考え方と同じです。実務では、将来何十年にもわたる配当を予想することは非常に難しいため、配当の代わりに企業の利益や自己資本を利用して理論株価を求めるモデルが数多く考案されています。今回利用する超過利益モデル(残余利益モデル)も、その代表的な手法の一つです。
超過利益とは
では、このモデルがどのような考え方なのか、図表1を使ってイメージをつかんでみましょう。
【図表1】超過利益モデルによる理論株価のイメージ
写真を拡大 出所:マネックス証券作成 図表1の青色部分は、1株当たり純資産です。これは企業が保有する資産から負債を差し引いた、株主に帰属する価値です。株価がこの純資産と同じであれば、PBR(株価純資産倍率)は1倍になります。
しかし、実際には多くの優良企業でPBRは1倍を超えています。だからといって、必ずしも株価が割高というわけではありません。
その理由は、企業の価値は貸借対照表に載っている資産だけではないからです。貸借対照表には、土地や建物、工場、設備などは計上されていますが、ブランド力、技術力、人材、販売網、顧客との信頼関係など、企業の競争力の源泉となる価値の多くは資産として計上されません。
こうした目に見えない強みを活かすことで、企業は株主が期待する利益を上回る利益を生み出すことがあります。この「株主が要求する利益を上回る利益」を超過利益と呼びます。
したがって、企業の価値は、現在の純資産に加え、将来にわたって期待される超過利益を現在価値に換算した金額を加えたものと考えることができます。これが超過利益モデルの基本的な考え方です。
理論株価はどのような考え方で評価されるのか
ここから先は少し専門的な内容になります。そのため、まずは読み飛ばして、後半の図表3で示す「理論株価から見た足元の魅力的な銘柄」を先にご覧いただいても構いません。
ただし、株価がどのような考え方で評価されるのかを知っておくことは、投資判断をする上で役立ちます。数式そのものを覚える必要はありませんが、「理論株価はどのような考え方で算出されるのか」というイメージだけでもつかんでおくと、その後の分析結果も理解しやすくなるでしょう。
株主が期待する利益をどれだけ上回る利益を将来生み出せるか
さて、超過利益モデルの一般形は、次のような数式で表されます。理論株価は、「現在の1株当たり純資産」と、「将来生み出すと期待される超過利益を現在価値に割り引いた合計」として表されます。
上式の「∞」は、企業が将来も事業を続けることを前提としていることを意味します。もちろん実際に何百年先まで利益を予想するわけではありません。実務では数年先までを詳しく予測し、その後は利益が安定すると仮定して理論株価を計算します。 数式を見ると難しく感じるかもしれませんが、考え方は「現在の純資産」と「将来期待される超過利益」を合計して企業価値を評価するというシンプルなものです。
上式の右辺には (ROEt-資本コスト)×1株あたり純資産(t-1)という部分があります。これが超過利益を表しています。
例えば、1株当たり純資産が100円あり、投資家が期待する利回り(株主資本コスト)が8%だとします。この場合、株主は少なくとも 100円×8%=8円 の利益を企業に生み出してほしいと考えます。
一方で、企業が実際にはROE10%を達成できるのであれば、利益は 100円×10%=10円 になります。このうち、投資家が期待していた8円を上回る 2円 が超過利益です。
つまり、超過利益モデルでは、「株主が期待する利益をどれだけ上回る利益を将来生み出せるか」 が企業価値を決めるポイントになります。ROEが株主資本コストを継続的に上回る企業ほど、将来の超過利益が大きくなり、理論株価も高く評価されることになります。
そして、(1+資本コスト)tは、将来のある時点(t期)に得られる超過利益を、「今の価値」に換算するための部分です。一般に、お金は将来よりも今受け取れる方が価値が高くなるため、その分を考慮して現在価値に割り引いています。
超過利益モデルを用いた理論株価の算出
理論株価を算出するには、将来の超過利益がどのように推移するかを仮定する必要があります。そのためには、将来のROE(自己資本利益率)と株主資本コストをどのように設定するかが重要になります。
今回の分析では、株主資本コストはCAPM(資本資産価格評価モデル)の考え方を用いて算出しました。具体的には、直近の10年国債利回りをリスクフリーレートとし、市場全体の期待リターンは、1994年8月以降のTOPIX配当込みリターンの単純平均から、同期間の10年国債利回りの単純平均を差し引いて推計しました。また、市場リスクプレミアムが極端に小さくなることを避けるため、2%を下限として設定しています。
一方、ROEについては、まずアナリストコンセンサスによる今期・来期予想を利用します。その後、3~5年目は過去3期間(実績・今期予想・来期予想)のサステナブル成長率の平均を用いて利益を予測しました。サステナブル成長率とは、利益のうち社内に留保した資金を活用して、企業が無理なく持続的に成長できる利益成長率です。実際には、ROE(自己資本利益率)に、利益のうち配当として支払わず社内に残す割合(内部留保率=1-配当性向)を掛け合わせて計算します。
さらに6年目以降は、企業間の収益性の差は徐々に縮小すると考え、ROEが16年目に株主資本コストと一致するように毎年線形に収束するものと仮定しています。将来の1株当たり純資産は、前年の純資産に当年の内部留保分を加えて算出します。
【図表2】超過利益モデル:ROE・資本コスト・超過利益のイメージ
出所:マネックス証券作成 理論株価から見えてきた割安企業ランキング
このような前提のもとで、2026年6月26日時点の理論株価を算出しました。
分析対象は、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除いた企業です。さらに、流動性を考慮し、東証プライム市場に上場する時価総額3,000億円以上の企業に限定しました。また、ROEの算出に用いる今期・来期予想の1株当たり利益には、QUICKコンセンサスを利用しています。
さらに、一定の収益性を有する企業に絞るため、今期予想ROEが8%以上という条件も加えました。
投資実務では、理論株価と実際の株価を比較する指標として、「理論株価倍率」が用いられます。これは理論株価を株価で割って求める指標で、倍率が高いほど、理論株価に対して実際の株価が割安であることを意味します。
図表3では、この理論株価倍率が高い順に銘柄を並べています。第1位となった九州旅客鉄道(9142)の理論株価倍率は1.67倍でした。これは、超過利益モデルで算出した理論株価が、実際の株価の約1.67倍の水準にあることを意味します。
さらに今回は、2つの追加条件を設けました。第1に、PBRが1倍以上の企業に限定しています。一般にPBRが1倍を超える銘柄は割高と受け止められがちですが、それでも将来期待される超過利益を考慮すると理論株価が株価を上回る企業を抽出することが目的です。第2に、図表1で示した「現在の1株当たり純資産」と「2期目までの超過利益」だけを用いて算出した保守的な株価試算でも、実際の株価の0.8倍以上となる企業に限定しました。遠い将来の超過利益を過度に織り込まなくても、一定の企業価値が裏付けられている銘柄を選別するためです。
つまり図表3は、超過利益モデルによる理論株価だけでなく、より保守的な前提で評価してもPBRが1倍を超えながらも割安感が認められる企業を抽出した結果といえます。企業価値を評価する一つの手法として、銘柄選別の参考にしていただければ幸いです。
【図表3】スクリーニング結果:理論株価倍率が高い順に15社
写真を拡大 (注) 理論株価は2026年6月26日時点のデータを用い、超過利益モデル(残余利益モデル)により算出。対象はTOPIX構成銘柄(金融業を除く)のうち、東証プライム市場上場かつ時価総額3,000億円以上、今期予想ROE8%以上の企業。理論株価倍率は理論株価÷株価。PBR1倍以上、かつ「現在の1株当たり純資産」と「2期目までの超過利益」のみを用いて算出した保守的な株価試算でも0.8倍以上となる企業を対象に、理論株価倍率の高い順に掲載した。出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成 吉野 貴晶 マネックス証券 チーフ・マーケット・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ 投資工学研究学長

