関西で「王将」といえば、身近なソウルフード的存在だ。しかし実は王将は2つある。京都発祥の「餃子の王将」と、大阪発祥の「大阪王将」だ。どちらも全国で展開する人気の中華チェーンだが、違いを聞かれると、意外と答えに困るのではないだろうか。

筆者の住む京都では、「王将」というと、やはり「餃子の王将」を思い浮かべる人が多い。店舗数も多く、家族連れから学生、会社員まで幅広い層に親しまれている。どちらかというと「大阪王将」のほうが洗練されたイメージで、大阪在住の友人たちは「大阪王将」推しが多い。2つの “王将”は、関西人の中では微妙に立ち位置が異なっているのだ。



この2つの王将は、ルーツをたどると創業者一族につながる“親戚”のような存在だが、まったく別の企業。「餃子の王将」は1967年に京都・四条大宮で創業し、現在は全国に700店以上を展開している。“安くて上手い餃子”といえば、まず頭に浮かぶだろう。一方の「大阪王将」は1969年に大阪・京橋で創業し、店舗数は約350店。冷凍餃子などでも存在感を放っている。

どちらの王将も身近といえるが、そういえば食べ比べたことはなかった。そこで今回、「餃子の王将」と「大阪王将」で餃子、チャーハン、ラーメンを注文し、その違いを確かめてみた。

餃子の王将」といえば、赤・黄・緑でおなじみのあのビジュアルだが、筆者が今回訪れたのは、京都・烏丸御池にある「GYOZA OHSHO」。黒を基調としたシックなデザインで、従来の王将とは一線を画す新コンセプト店舗。限定メニューやアルコール類も充実している。

「GYOZA OHSHO 烏丸御池店」ニューコンセプト店舗らしく、外観に“餃子の王将”感はないが……

雰囲気こそ、おなじみの「餃子の王将」と大きく異なるが、餃子、チャーハン、ラーメンなどの定番メニューは通常店舗と共通。そのため、味の比較には問題ないと判断した。

大阪王将 阪急桂駅前店」

いっぽうの「大阪王将」も京都市内、阪急桂駅の東口ロータリーすぐにある阪急桂駅前店を訪れた。キャパシティはそれほど大きくないが、好立地もあって、普段から人がよく入っている印象だ。

○まずは看板メニューの餃子を食べ比べ

両店の違いがもっとも分かりやすく表れていたのが、やはり看板商品の餃子だ。

まずは大阪王将。こんがりと焼かれた皮はパリッとしていて香ばしい。ひと口食べると、まず肉の旨みがしっかりと感じられる。



ショウガは主張が強すぎず、肉の味を邪魔しない絶妙なバランス。噛み進めるとキャベツの甘みも広がり、具材のおいしさがストレートに伝わってくる。



皮は比較的やわらかめで、箸で持ち上げると餡のジューシーさが伝わる。肉と野菜の存在感も十分。餃子そのものの味わいを楽しみたい人には魅力的な一皿だろう。

いっぽう、餃子の王将。運ばれてきた餃子を見てまず感じたのは、焼き上がりの美しさだ。



皮はしっかり閉じられており、箸で持ち上げても破れにくい。表面はパリパリで香ばしく、中にはジューシーな餡がたっぷり詰まっている。肉汁もしっかり閉じ込められており、一体感のある仕上がりだ。



肉や野菜の存在感を楽しみたいなら大阪王将、パリパリ感とジューシーさのバランスを求めるなら餃子の王将、という印象だ。

○好みが分かれるチャーハン

中華チェーンの実力が表れるメニューのひとつがチャーハンだ。両店とも甲乙つけがたいおいしさだが、味の方向性は明確に違っていた。



大阪王将のチャーハンは、ほどよくパラパラ。近年は「パラパラ至上主義」のような風潮もあるが、こちらはパラパラ感としっとり感のバランスがちょうど良い。



塩味は強すぎず、口に入れると出汁のような旨みが広がる。お肉にもしっかりと存在感があった。卵も全体に均一に行き渡っており、どこを食べても味のムラがない。派手さはないが、レンゲを持つ手が自然と止まらなくなるタイプのチャーハン。今回の食べ比べでは、個人的にかなり好印象だったメニューでもある。



餃子の王将のチャーハンにもパラパラ感はあるが、大阪王将ほど強くはない。特徴的だったのは、脂っこさのなさ。出汁の旨みに加えて感じる胡椒のアクセントだ。スパイシーさがほんのり効いて、後味が引き締まる。卵も具材の肉も主張しすぎず、ご飯とのまとまりがいい。



旨みの厚みなら大阪王将、シンプルさと食べやすさなら餃子の王将、だろうか。もちろん、食べ合わせるものにもよるだろうし、好みも分かれるだろうと思う。

○ラーメンは異なる味で比較

今回注文したラーメンは、大阪王将が醤油ベース、餃子の王将が醤油豚骨ベースとタイプが異なる。条件はそろっていないが、それぞれの店が“推す”味での比較として、ご容赦願いたい。



大阪王将のミニラーメンは、醤油ベースのあっさり味。トッピングは海苔、ねぎ、チャーシューとシンプルな構成だ。

チャーシューにはしっかり脂のコクがありつつ、スープが軽やかで重たさを感じない。麺はやや硬めで、小麦の風味もしっかり伝わってくる。ランチセットの一品としては十分満足できる仕上がりだった。全体としては奇をてらわない、安心感のある一杯という印象だ。

いっぽう、餃子の王将のラーメンは、ひと口スープを飲んだ瞬間、コクがぐんと感じられた。単なる醤油ラーメンとは違う奥行きがある。豚骨の脂身があるが、不思議とあっさりしていて食べやすい。



トッピングも豊富だ。メンマ、もやし、卵、海苔、ねぎ、チャーシューが入り、見た目にも満足感がある。

特に印象に残ったのはチャーシューと海苔。チャーシューは下味がしっかり入りながらも柔らかい。海苔は磯の風味が強く、スープとの相性も良かった。メンマの歯応えも心地よく、トッピング一つひとつに存在感がある。全体として香りの豊かさが際立つ一杯だった。

シンプルで親しみやすい大阪王将、香りや旨みの層が厚い餃子の王将。あっさり派か重厚派かでも、好みが分かれそうだ。

○食べ比べてわかった、それぞれの魅力

今回あらためて食べ比べて感じたのは、両店は想像した以上に別物だということだ。大阪王将は、具材の存在感や旨みをストレートに楽しめる中華。餃子の王将は、全体の完成度やバランスの良さが光っていたように思う。

大阪王将の「元祖焼餃子」310円、「ハーフセット」990円

2つの王将には、それぞれに思い入れが強いファンが多い。「宇都宮で餃子を食べたけど、餃子の王将のほうが美味しかった」という声を聞いたこともあるくらい、 “王将愛”が強い人が、関西には多いのだ。

実際、筆者も週末になれば「餃子の王将」で餃子をがっつり食べ、冷凍庫には「大阪王将」の冷凍餃子を常備している。そんな筆者も今回あらためて食べ比べてみて、「2つの王将は、こんなに違っていたのか」と驚かされた。

餃子の王将「ラーメンランチ」1,279円

ガツンとした旨みを求める日は大阪王将。安定感とバランスを求める日は餃子の王将。そんな選び方も楽しいかもしれない。

後藤久美子 言葉の運送屋こと、京都のゴクミ。「ちゃんと聞いて、ちゃんと書く」をモットーに、ビジネス・旅・グルメなど幅広い分野で執筆。取材企業は600社以上。社長の熱い想い、職人のこだわり、地元の隠れた名店―掘れば掘るほど「もっと知ってほしい!」が止まりません。 この著者の記事一覧はこちら