【Mr.tsubaking】石油不足で二郎系ラーメンが大ピンチ「野菜マシマシは利益率が低いんです…」ラーメン店の率直な本音
各家庭の財布を直撃している物価高騰の波。とりわけ連日報じられている通り、原油やナフサの不足により、あらゆる商品で値上げラッシュが加速している。
帝国データバンクが主要食品メーカー195社に調査したところ、この6月に値上げを行う品目は合計1078品目にも及ぶ。さらにこの傾向はしばらく続き、来月は2000品目をも超える見込みだ。
石油不足によって値上げの波に苦しむものに、我々の日常の生活に必須である「野菜」がある。なぜなら野菜などを入れるトレーや包装フィルムは石油由来だからだ。ならば、家庭のみならず野菜を多く使う業種は、悲惨な状況になっているのではないか――。
「野菜マシマシ」という呪文とともに、丼の上にキャベツやもやしといった野菜がこんもり盛られる、いわゆる「二郎系」ラーメンもまた、この影響は免れない。
使うキャベツともやしの量は1.5トン
現場ではどんなことが起こっているのか。九州地方の二郎系ラーメン店で、先日まで店長を務めていたTさん(40代男性)に話を聞いた。
麺が見えないほど、山のように野菜が盛られる二郎系ラーメン。そもそも、どれだけの野菜を使っているのか気になるところだ。
Tさんによれば「うちの店は、もやしとキャベツを使っていますが、合計で月に1.5〜1.7トンです」と語る。そもそも、量の単位がキロではなく「トン」であることに思わず衝撃を受けたが、計算すれば驚くほどではないという。
「二郎系ラーメンのコールでお馴染みの『野菜マシマシ』では、1杯で600gの野菜を使います。もやし500g・キャベツ100gです。小さい店ですが、平日で100人くらい、土日だと160人くらいのお客さんが来るので、大体このくらいになります」(Tさん、以下「」も)
マシマシでおよそ600gだというTさんの店の野菜量。すべての客がマシマシを頼むわけではないが、1杯あたり平均360gを消費すると計算しても、月間で3700杯ほど販売するため単純計算で1.3トンほどは確実に必要となる。余裕をもった在庫を加味すれば1.5〜1.7トンもうなずける。
月単位でこれほどの野菜を仕入れているとなれば、わずかな値上げでも大きく経営に響くのは明白だ。
「ただ、野菜は作っている業者さんから直接仕入れているから、一般のスーパーマーケットほど大きな変動はしにくいんです」
「利益率はめちゃくちゃ低いんです」
しかし、それは“物価の優等生”とも言われるもやしに限っての話。キャベツについては、そうもいかなかったようだ。
「お店がオープンしたのはコロナが終わるあたりの時期だったのですが、仕入先の価格が当初は198円(1玉)くらいでした。それが、最高で850円(1玉)まで行きました。もちろん、もやしを多めにして、キャベツを減らす対策は店としてもやりました。お客さん的には見た目の『大盛り感』が大事なようで、『キャベツが減ったじゃないか!』といった声はなかったです」
しかし、あまりにも急峻なキャベツの価格高騰に、割合を変える程度の対策では焼け石に水だった。急激な価格高騰により、同店では提携していたキャベツの仕入れ先からの納入を、たまらず停止。スタッフが東奔西走し、地域のスーパーやディスカウント店で、1円でも廉価なキャベツを探すようになった。
「元の仕入れ先には『価格が落ち着いたら、また連絡して』と伝えていましたが、結局連絡は来ず。なんとか、スーパーで450〜500円くらいのキャベツを見つけられましたが、それでも原価は高い。買いに行く手間や時間を考えるとかなりしんどかったです」
トッピングも比較的少なめでシンプルな豚骨ラーメンが主流の九州地方で、二郎系を経営し続けるとなれば、やはり野菜の『盛り』が何よりの差別化になる。
「やはり二郎系ラーメンの需要はありますね。特に、物価が上がってからは『スーパーの野菜が高くなったから、野菜を食べに来たよ』と、常連さんの来る頻度は確実に増えました。もちろん、来てもらえることはありがたいのですが、彼らはマシマシ注文率が高い。なので、利益率はめちゃくちゃ低いんです」
「仕入れる米のランクを下げる」苦労も…
しかし、Tさんは「お客さんからのマイナスな反応があったのは、野菜ではなく実は米のほうなんですよ」と説明する。
「米に関してはお店がオープンした頃に比べて5kgあたり2000円近く上がっています。たまらず外国産とのブレンド米を使うようになったのですが、ひとくち食べたお客さんから、『これ、なんかマズい』と突き返されたことがありました。しかも一度ではなく複数回。僕らも、申し訳ないと思いながら出していたので、即返金しましたが……」
仕入れ先からの納入を止める、野菜の割合を変える、仕入れる米のランクを下げる……考えうる対策は何でも講じてきたTさん。それでも、歯止めのかからない原価率の上昇に伴う利益率の縮小が続く。
「長く働いていたアルバイトも数人いなくなったし、系列の別店舗でも社員が何人か辞めることになりました。実は、僕も不景気が理由でつい最近、首を切られてしまったんです。オーナーは飲食店を中心に複数の店を展開していますが、この物価高騰の前にはどうにもならないようで、店舗を閉じて事業は縮小し始めているみたいです。まあ、飲食業界は一部を除いてどこも厳しいってことですね」
物価高騰について軽く考えているわけではないだろうが、メディアでは「食卓に影響」などの言葉が飛び交う。
しかし、空前のこの物価高騰で、職を失った人もいるのである。誰もが気づいている通り、個人や小さな法人の努力では、どうしようもないところまで来ている。一刻もはやく、国の抜本的な対策が講じられることを願ってやまない。
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