農業総合研究所会長・及川智正【2026 日本の成長を図る】〈AIで農作物の需給バランスを予測〉
「豊作貧乏」をなくすため農業の流通にメス
「豊作貧乏をなくす。日本を良くするには農業が持続可能でなければ」─。こう話すのは、「農業×IT」で既存の流通に新しい風を吹き起こしているベンチャー企業・農業総合研究所会長の及川智正氏。
及川氏は祖父がコメ農家で、子どもの頃から農家は儲からないという現実を自分の目で見てきた。令和5年度の農林水産省の調査では、主業経営体の農業所得は404・2万円。個人経営体を含めた全農業経営体での農業所得は114・2万円。
農業に携わる人は口を揃えて「農家は儲からない」と言う。その結果、65歳以上の農業従事者が7割を超えるという現状。政府は近い将来、日本の農業を担う人材がいなくなるという危機感は大きいが、どこから手を打てばいいのか身動きが取れない状況が続く。
全国の農業経営体88万のうち、JAを通じて農業経営をするのが大半である。
「農家が儲からないのは、需給バランスが崩れていることと、流通の選択肢が少なく、自分で売価や売り先を決められないことにある」と及川氏。そこで同社は、生産者が自分で末端売価を決められ、売り先の小売店を自分で決められる仕組みを構築。
従来農家は生産物をJAに納めた後は、自分のつくった野菜がどこに行きいくらで販売され、誰に食べられているかもわからなかった。
また、規格外野菜は出荷するより破棄コストの方が安く、出荷ができなかったが、同社の物流を使えば、今までやむを得ず破棄していた商品でも自分で決めた売り先に自分で決めた価格で販売することが可能で、生産者は手取りを増やすことができるという仕組みである。
通常の流通を通すとスーパーの店頭に並ぶのは4~5日かかるが、同社独自の物流を使えば翌日朝にスーパーに並ぶため、鮮度と熟度が高い商品で付加価値の高い商品として売ることができる。これがスーパー内に見かける、他の野菜とは別スペースで売られている「農家の直売所」の正体である。
