山本貴大・山本海苔店社長

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海苔の大不作時代到来


 当社・山本海苔店は1849年に日本橋で商い始めたのは、ちょうど日本にペリーが来航した頃で、今年で176周年目になります。

 遡れば、海苔は縄文時代から食べられてきた食品です。日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が海苔を食べていたという文献もあり、海苔は大変高価で貴重なものでした。日本で最初の法律書である大宝律令(701年)に、朝廷への調(税の一種)として高級品として海苔が記載されています。

 かつて海苔は生態系が解明されていなく、養殖方法は確立されていませんでした。当時は海の適当な場所に網を出して、たまたま獲れた年は「運がいいね」ということで、別名「運草」とも言われていました。

 つまり海苔は縁起物で、例えばお年賀で海苔を渡すのは、「今年もあなたに良い運がきますように」という思いが込められていたのです。この素敵な話を強く伝えてこなかったことは海苔業界の怠慢であり、大きな反省だと感じています。

 日本で海苔の消費量はだいたい80億枚をキープしています。日本人の人口が約1億人とすると、ひとりあたり年間80枚食べている計算になります。かつては110億枚収穫できた時もありましたが、ここ10年くらい前からさまざまな環境要因や人的要因により、供給は60億枚台になってしまいました。最近では更なる海苔の不作が続いており、価格が高騰しています。

 2022年の生産量は48億4千万枚で、50年に一度の大不作と言われました。そしてその翌年も49億36百万枚でまた不作、そして今に続き3年連続不作になってしまいました。


おいしい海苔がある世界を


 海苔というのは、海苔の海藻を短い段階で獲るほど品質が良いものができます。

 生育期間を伸ばすことで量を獲ることはできますが、その分、味、香り、色艶は落ちていきます。これまで海苔業界はお中元お歳暮という巨大市場に支えられていました。

 しかし、その文化もだんだんとなくなっていっている現状、需要を支えているのはコンビニのおにぎりの海苔でした。量を優先した生産に流れ、品質が良いおいしい海苔をつくる生産者さんが減ってしまうことを非常に危惧しています。

   わたしどもが何もせずにいたら、おいしい海苔をつくろうと思ってくれる生産者さんがいなくなってしまいます。

 われわれは常に新たな取り組みに挑戦していき、高付加価値の新たな市場を作らなければならないと思っています。

 ここ数年では家庭用とギフトの間にあるお土産市場を攻める戦略や、プチギフト市場を強化しました。11月には本店でおいしい海苔の体験ができるお店を作ろうと思っています。これまでの味と信頼は絶対に守りつつも、伝統にとらわれず時代に合った新しいおいしい海苔を表現していきたいと思います。

   価格高騰により失われつつあるおいしい海苔文化を再度復活させ、業界全体を活性化させていきたいと考えています。