記事のポイント

初開催のRetail Media Summit 2024は、2000人以上を動員し、リテールメディアの成長領域としての注目度を示した。

米国との進化の過程の違いや、1stパーティデータの活用がリテールメディアの課題および可能性として議論された。

サードパーティCookie廃止を背景に、リテールメディアがデジタル広告の重要な役割を担い始めている。



日本でも急速に注目が高まるリテールメディアに焦点を当てたビジネスカンファレンス「Retail Media Summit 2024 リテールメディアの現在地」が10月8・9日に都内で開かれ、最新動向の共有や、課題と未来に対する活発な議論が行われた。初開催ながら、メーカー企業や代理店、小売業者など、予想を大きく上回る2000人の来場者を記録し、リテールメディアが広告業界全体で注目される成長領域であることを示した。

多彩なセッションを通じ、リテールメディアの定義や活用事例、今後の展望などを取り上げた同イベントで見えたリテールメディアの価値とは何か。主催企業アドインテの副社長である稲森学氏に、Retail Media Summit 2024の成果、また、同イベント通じて感じた日本のリテールメディアの課題や未来などについて聞いた。

驚異的な注目度と多様な参加者



Retail Media Summit 2024は当初、2日間で約1000人の来場を想定していたが、実際には申し込みが3700人、来場者が2000人に達するという盛況ぶりだった。稲森氏は「リテールメディアが広告に関わる業界全体で注目されている領域であることを改めて実感した」という。

来場者の内訳を見ると、特に多かったのはメーカー企業だった。「リテールメディアに関連するさまざまなイベントに参加してきたが、ここまでメーカー企業の方々が集まるイベントはなかったと感じる。業種も多岐にわたり、日用雑貨品や飲料、食品といった幅広い分野の参加が見られた」と稲森氏。日本では、昨年2023年をリテールメディア元年と呼ぶことが多く、小売企業の進出が加速しているが、「メーカー企業でもここ数年で専門部署を設ける動きが見られるなど取り組みが本格化してきた。今回のイベントは、メーカー自身がリテールメディアを試行錯誤するなかで感じていた可能性や課題について、共通認識を持つ機会にもなったのではないだろうか」という。

進化と市場構造 米国との違い



日本のリテールメディアの可能性を探る上で、リテールメディアがもっとも進化しているとされる米国との違いにも焦点が当てられた。稲森氏は、日本と米国では進化の過程が異なることを指摘する。米国の場合、リテールメディア1.0においては、ECを起点にメディア化が進み、ウォルマートをはじめとするECプラットフォームやアプリ内での広告配信が中心だった。その後の2.0時代には、データやIDを活用した広告が主流になり、コネクテッドTVやオフサイト(外部メディア)への配信が進んだ。そして3.0時代に突入したいま、実店舗の価値が見直されるようになり、リアルな顧客体験に注力する流れが生まれているのだという。

これに対して、日本では、まず実店舗のデジタル化が先に発展し、最近になってアプリ内広告やデータ活用によるオフサイト配信が本格化したという。この点について、稲森氏は、「日本とアメリカでは進化の順序が真逆なのが特徴であり興味深い点でもある」という。

両者の市場構造の違いも大きい。米国では、小売業界の上位4〜5社がリテールメディア市場の90%以上を占めており、メーカーが広告を展開しやすい環境が整っている。一方、日本では、「上位2社を合わせても市場シェアは30%に満たず、小規模な企業が乱立している。そのため、広告主は広告出稿の効率化や予算配分、効果測定の標準化などに課題を感じている」という。また、小売企業の課題として、「多くの企業が独自のレポート形式を採用しているため、広告効果を一律に評価することが難しい状況」にあり、ネットワーク化や効果測定の標準化を求める意見もあがっている。

加えて、リテールメディアの定義についても話題に上がった。「店舗のサイネージやチラシ、店内放送まで含まれることがあり、定義づけは非常に広義で難しい。小売業、メーカー、ベンダー、それぞれの立場によって捉え方や課題感が異なるのも一因だ」。

1stパーティデータをいかに活用していくか



効果測定の標準化や定義の共通認識は、リテールメディア市場の成長を促す一助になるだろう。しかし、稲森氏は、「リテールメディアを必要以上に複雑に捉えられている面があるのではないだろうか」とも話す。リテールメディアの一環として、小売業の持つ1stパーティデータを使って、たとえばYouTubeに広告を配信する場合、その配信の仕組み自体は通常のデジタル広告と変わらない。「むしろ目を向けるべきなのは、1stパーティデータをいかに活用していくかという点であり、『デジタル広告 with リテールデータ』という考えが正しいと感じている」からだという。

「私がリテールメディアに注目しはじめたのは、2017年のITP(Intelligent Tracking Prevention)アップデートがきっかけだった」と稲森氏。このアップデートは、SafariブラウザでサードパーティCookieが使えなくなるというもので、「iPhoneのシェアが約80%を占めていた日本では特に、デジタルマーケティングに大きな影響を与える可能性があったからだ」と振り返る。

だが、日本市場でリテールメディアの取り組みが本格化したのは、ここ数年のことだ。「日本では、IT技術の発達はもちろん、コロナ禍でのECの台頭や、実店舗の価値の見直しなどが、取り組みを加速させた。特にアプリやデータ活用に焦点を当てる動きが進み、その重要性が改めて認識されるきっかけとなったと感じている」。

サードパーティCookieの利用制限もその動きに拍車をかけた。「Googleが段階的にクッキー廃止を進めるなかで、1stパーティデータの重要性が増していくのは避けられず、リテールメディアの市場拡大に向けた重要なトリガーとなる」と見る。「リテールメディアは1stパーティデータの活用を軸に、新たな価値を生み出す取り組みでもある。この領域に目が向けられるようになったことをポジティブに捉えている」。

デジタル広告の重要な一角を担う存在に



稲森氏は、Retail Media Summitを今後も継続して開催していきたいという。「早くも来年の登壇依頼やスポンサー意向も頂き、予想以上の好評を得ることができた。このイベントを通じて、リテールメディアがデジタル広告の重要な一角を担う存在であることを広く認識してもらえたと感じている。来年以降も、業界や競合の有無は関係なくフラットな業界を盛り上げるイベントとして開催し、リテールメディアの活用方法や最新動向を発信し続けたい」。

また、「特に重要なのは、単なる議論ではなく『どう活用するか』という具体的な方法に焦点を当てること」だといい、「大きなポテンシャルを秘めたリテールメディアの価値を最大化するには、ほかの企業や業界との連携を深めることも鍵となる」と強調した。

Retail Media Summit 2024の動画を公開中



Retail Media Summit 2024の主なセッションを動画で公開中。この動画を通じて、日本におけるリテールメディアの現在地と未来へのヒントを掴んでほしい。

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