公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

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 プロ野球の契約交渉で選手代理人の資格を制限したのは独占禁止法違反の恐れがあるとして、公正取引委員会は19日、日本野球機構(NPB)の内部組織でセ・パ両リーグの野球連盟や12球団によって構成する「日本プロフェッショナル野球組織」に文書で警告した。警告は同日付。問題となった行為はすでに是正されたことから法的措置は見送った。

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 公取委などによると、プロ野球組織はプロ野球選手会からの要望を受けて、2000年に代理人制度を導入。その際、選手と球団の契約交渉などに当たる代理人について、日本弁護士連合会所属の弁護士に限定すると資格を制限。さらに、1人の弁護士が代理人を務められるのは1選手に限り、複数の選手と代理人契約を結ぶことを認めないとの条件を設定した。

 独禁法は「事業者団体による構成員の活動の不当な制限」を禁じている。公取委は、代理人に関する資格制限や条件設定が球団と選手間の自由な交渉を妨げている恐れがあるとみて、今年8月から調査に着手していた。

 これに伴い、プロ野球組織は今月2日、資格制限などを撤廃し、各球団に対応を委ねることを決定。今後は球団が認めれば、選手は他の選手の代理人を務めている人物などを代理人に選ぶことができるという。

 プロ野球選手の代理人を巡っては、選手会が「ノウハウを蓄積した代理人が少なく、選手の選択の自由を害する」として規制緩和を要望してきた。だが、選手間の利益相反や、スーパーエージェントと呼ばれる代理人による契約金のつり上げなどの懸念を理由に拒否されてきた。

 スポーツ分野は独禁法上のグレーゾーンとされてきた経緯があり、公取委は18年、フリーランスに関する有識者検討会の報告に基づき「スポーツ選手も独禁法の保護対象となり得る」との見解を示した。20年には、プロ野球のドラフト指名を拒否して米メジャーリーグなど海外でプレーした選手が帰国後の一定期間、日本の球団と契約できないとしたプロ野球組織の申し合わせについて、独禁法が禁じる「共同の取引拒絶」に該当する疑いがあると指摘。「田沢ルール」と呼ばれた申し合わせは撤廃された。【渡辺暢】