世界中で絶賛される日本食。しかし、食事にかける時間の「短さ」については、驚く外国人も少なくありません。「ゆっくり食べること」で有名なフランス人に、率直な感想を聞いてみました。

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餃子、牛丼、ラーメン……と、フランスでも大人気の日本食。旅行で日本を訪れた際には、ほとんどのフランス人が一番心に残ったこととして「日本食のおいしさ」を挙げています。

しかし、日本人の「食べるスピード」にはフランス人もびっくり。日本に何度も旅行したというフランス人に、どんなことに驚いたのか、詳しく聞いてみました。

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滞在時間は10分以下の立ち食いそば

今回お話をうかがったのは、フランス・パリ出身のMさん(仮名/男性)。日本を訪れたのは2016年が初めてで、以後、4度の訪日経験があります。パリの会社で会社員として働くMさんは、夏季休暇を利用して日本へ向かうことを「とても楽しみ」にしているそうです。

そんなMさんは過去、たまたま入った立ち食いそば店で、日本人の「早食い」を見て驚いてしまったのだとか。

「まず、料理を注文してからテーブルに到着するまでが相当早いですね。それから、早い人だと2、3分で食べ終えてしまう。ほとんどの日本人が1人で来ていて、しかも無言でランチを済ませていました。私は牛丼も好きで旅行のたびに牛丼店に行くのですが、同じ光景が広がっています。ランチは特に急いでいるという印象を受けました。食券もそうです。食券を販売機で購入して、店員さんに渡して……。みんな無駄のない動きをしていると思いました」

フランスに食券の販売機はないのですか?

「フードコートにはタブレットで注文できるパネルが置いてありますが、全員がゆっくり選んでいます。選ぶ人も、食べる人も、作る人もみなゆっくり(笑)。なので、日本の食券販売機の前では、後ろの人に迷惑がかからないように急いで選ぶようにしています」

日本の「うまい・早い・安い」お店が大好きだというMさん。ただ、入店から食べ終わるまで10分もかからない日本人のスピードには、「毎回驚いてしまう」ということでした。

お昼休憩は長めのフランス。時間オーバーでも気にしない?

確かに、フランスのランチ休憩は「ゆっくり」というイメージがあります。それも、誰かとワイワイしゃべりながら。フランスの会社では、急いで仕事に戻るということはしないのですか?

「プロジェクトの有無や、時期にもよりますが、基本的には日本のように厳格ではありません。私の会社はお昼休憩が2時間で、12時にデスクを離れて、14時に戻るという決まりになっています」

2時間も! ランチに行く場所はレストランが多いのですか?

「いろいろです。レストランに行く日もあれば、テイクアウトでランチボックスを買って、公園で食べる日もあります。その後は時間が余るので、同僚とスマブラ(ゲーム)をやったり、ジムに行ったりすることもあります」

お昼休憩の長さは会社や職種による、とのことですが、やはり日本よりはゆったりとしているイメージですね。またMさんは、日本人が急いで仕事に戻ることについて、「もう少しゆっくりでもいいと思いますが、日本人は仕事に対していつも完璧で真摯。信頼できますし、それが業界全体の正確さとスピーディーさにつながっているのだと思います」と語ってくれました。

飲み会はフランスより長い! 夜遅くまで語り合う日本人

一方でMさんは、「日本の飲み会は長い」という印象を持ったそうです。居酒屋でサラリーマンが夜遅くまで語り合っている姿を見て、「フランスとは違う」と感じたのだとか。

「フランスでは仕事関係の人とあまり飲みに行きません。行くとしてもランチか、木曜日に1杯か2杯、20時くらいまでです。日本人は普段、食べる時間は早いですが、同僚との飲み会ではゆっくりと時間を取って、とことん話し合っているイメージです」

夜遅くまで続く「飲み」は、フランスではごく親しい友人とだけ。Mさんは、仕事後にお酒を通して熱くなる日本人を見て「興味深い」と思ったそうです。

「これはフランスのメディアでは知り得なかったこと。日本人は仕事上のつながりを大事にしているのですね」とのことでした。

食事時間が「世界で最も長い」フランス、効率的でスピーディーな日本

経済協力開発機構(OECD)が2015年に行った調査によると、フランス人の1日の平均食事時間は2時間11分。「世界で最も食事の時間が長い国」として知られています。これついてMさんにうかがってみました。

「前菜・メイン・デザートと順番どおりに食べる文化が関係していますが、それ以外の理由としては、“しゃべりながら食事をしている”ことが挙げられるでしょう」

実際に、フランス人はおしゃべりが大好き。食事時間そのものというよりは、準備する側も時間をかけていて、一皿一皿の間隔が長い、というイメージがあります。Mさんいわく、「こうした間をおしゃべりでつないでいるので、ついつい長くなる」のだそう。

対して日本は、食べる方もサーブする方もスピーディー。特別な日を除けば、効率と時短を意識した食事スタイルです。そんなスピード感から生まれる日本食の素晴らしさに、Mさんはより一層の興味を抱いているそうです。

この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)