小泉進次郎元環境相

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“新しモノ好き”

 候補者が乱立する自民党総裁選の「本命」、小泉進次郎元環境相(43)がついに出馬会見を行った。さっそうたる立ち居振る舞いと歯切れの良い弁舌はいつも通りだったが、その背景でPR会社はどのような戦略を練っていたのか。多くの国民が注視した出馬会見の全舞台裏。【前後編の前編】

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 自民党の派閥や大物議員の事務所が置かれ、さまざまな権力闘争の舞台になってきた砂防会館。東京・平河町にあるその建物の右斜め前、ガラス張りの1階にカフェが入っている6階建てのビルが、シェアオフィス「みどり荘」だ。自民党総裁選に挑む小泉進次郎元環境相の選挙対策本部事務所はそこに置かれている。

小泉進次郎元環境相

「議員会館やホテルに総裁選の選対を置くような古い自民党のイメージを払拭するため、そのシェアオフィスが選ばれました。また、議員だけではなく民間業者などが集まりやすい、という利点もあります」(小泉陣営の関係者)

“新しモノ好き”の進次郎氏らしい選択なのである。

「全く中身のない懇談」

 そのシェアオフィスに全国紙などの「平河キャップ」、すなわち自民党担当キャップが参集したのは9月4日昼のことだった。

「小泉陣営からの呼びかけで、急に“平河キャップ懇”が行われたのです。番記者を飛び越えていきなり平河キャップを呼び出すという手法には“まだ首相にもなっていないのにいかがなものか”との声が上がっています」(永田町関係者)

 そこで進次郎氏が胸襟を開いて話せば平河キャップたちにとって意味ある懇談となったのかもしれない。しかし、

「全く中身のない懇談だったようですね。そこで進次郎氏は野球をやっていた高校時代の話をしたそうです。何でも、最後の夏の大会で満塁の好機に“当てにいって”投手ゴロ併殺に終わったことを後悔しているらしく、何事もフルスイングしないとダメだ、と」(同)

 進次郎氏は翌5日に神奈川の進学校・聖光学院を訪れた際にも野球部員たちの前で全く同じ話を披露しており、

「彼の“話のバリエーションのなさ”が透けて見えます。進次郎陣営としては出馬表明を控え、平河キャップを懐柔しておきたかったのでしょうが、そのもくろみは外れたといっていいでしょう」(同)

改革を強調

 そして迎えた6日の出馬会見も「みどり荘」で行われた。会見取材は事前申請制で、130近い席はほぼ満席。30台以上のカメラがフラッシュをたく中、さっそうと登場した進次郎氏の首元にはブルーのネクタイ。また、やはり爽やかな青色で彩られた背後のパネルには白い文字で〈決着 新時代の扉をあける〉とあった。

「事前申請するとメールでQRコードが配布され、それぞれ番号の付いた座席が割り振られます。しかし会見当日、QRコードの読み取り機が機能せず、QRコードを見せるだけで会場に入れるようになっていました」(政治部記者)

 スタートは午前11時。時折、手元にある原稿に目をやりながらもよどみなく進むスピーチの中で、進次郎氏は「改革」という言葉を連呼。首相に就任したあかつきには「早期に衆院を解散し、国民の信を問う」とした上で、憲法改正など、これまで議論が続いてきた問題を「決着」させる、と意気込んだのだった。さらに、解雇規制の緩和、選択的夫婦別姓制度の導入法案提出、「ライドシェア」の完全解禁などを「1年で実施する」と断言するなど、まさに「改革」の大盤振る舞い。その一方、「政治資金パーティー裏金問題」に関係した議員の党公認については「新執行部で厳正に判断する」とした。

フリー記者による「不規則質問」

 熱のこもったスピーチは30分で終了。続いて行われた質疑応答では、

「最初、NHKや朝日新聞の記者など、進次郎氏側が名前を知っているらしい大手メディアの記者ばかりが指名されたので、“顔見知りばかり当てるな”と怒る声も上がっていました」(同)

 すでにネットなどで話題になっている“不規則質問”が飛び出したのはその後のことだった。フリー記者の田中龍作氏から、

「首相になってG7に出席されたら『知的レベルの低さ』で恥をかくのではないかと、皆さん心配しております」

 などと指摘され、

「私に足らないところがあるのは事実だと思います。そして完璧ではないことも事実です。しかしその足りないところを補ってくれるチーム、最高のチームを作ります」

 進次郎氏はそう返したのだった。

永田町でも高評価

 得意の瞬発力を発揮してうるさ型の記者をうまくいなしたわけだが、

「エネルギー政策関連の質問などの際には、付箋がびっしりと貼られた手元の資料やモニターのようなものをチラチラ見ながら答えていました」

 と、全国紙デスクは言う。

「そのおかげか、質疑応答で答えに詰まることはありませんでした。全体的に歯切れが良く、分かりやすく自分の主張を打ち出せており、永田町でも評価する声が多かった」

 自民党のさるベテラン議員に聞いても、

「非常に良かったんじゃないですか。はっきりしてて。本人がやりたいことも明確だし。選挙をすぐにやると言ったのは重要ですよね。新しい総理総裁になるわけだから、すぐに国民に信を問うというのは正しい。さすがだと思いました」

 と、好印象だった様子。

「政治家として不可欠な資質に著しく問題を抱えている」

 しかし、進次郎氏と一緒に仕事をしたことがある政府関係者はこう話す。

「小泉進次郎さんというのは、定型的な場所、演説とか、出馬会見のような場においてお話しするのは非常に上手な方だと思います。ただ、政治家として本当に必要な資質とは、複雑な問題を総合的に判断し、的確に決断を下していく能力です。彼はそういうことは丸っきりできない方。政治家として不可欠な資質に著しく問題を抱えている、と私は確信しています」

 どういう姿を見てそのような印象を持ったのか。

「こちらが一生懸命説明しても、何も理解してもらえない、という感覚があるのです。他の議員の先生方とは明らかに様子が異なっていた。理解してもらっている感触、反応が得られないのです。理解することに関心がないのか、とさえ思ったこともあります」

 間近で共に仕事をした人からそこまで言われてしまう進次郎氏。会見では「最高のチーム」を作って難題を乗り越える、としたが、

「彼には状況を“判断する力”も、その上で“決断する力”もない。つまり、刻々と変わる状況に臨機応変に対応し、適切に決断することができないわけで、とても首相の職が務まるはずがない」(同)

 後編【滝川クリステル側は「突き放すようなコメント」を… 小泉進次郎氏が総裁選で苦戦する理由 「後見人・菅前首相の健康問題も」】では、進次郎氏の心もとないサポート体制などについて、詳しく報じる。

「週刊新潮」2024年9月19日号 掲載