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農林水産省の発表によると、2022年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は38%だったそう。そのようななか、「いざ食料危機が起きたとき、大都市の住民は真っ先に飢えることになる」と訴えるのは、経済アナリストの森永卓郎さん。そこで今回は、東京大学特任教授・鈴木宣弘先生と森永さんの著書『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』から一部を、お二人の対談形式でお送りします。

【写真】森永卓郎さん「少なく見積もっても、富裕層は庶民の100倍、極端な数字では1万倍の温室効果ガスを排出しているんです」

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富裕層は庶民の1万倍も環境を汚染している

森永 グローバル資本主義はもう限界に近づいています。きわめて近い未来、具体的に言えばあと2年ぐらいで崩壊すると思っています。

鈴木 あと2年ですか。

森永 ええ。マルクスは『資本論』で資本主義の崩壊を予言しています。私は大学生のときに『資本論』を読もうとしましたが、3回挑戦して3回とも挫折しました。そのくらい難解な本です。

東大の斎藤幸平先生が説明してくれていますが、資本主義の発展がピークに近づくと、社会における所得格差が許容できないほどに広がります。

ちなみにオックスファムという国際NGOの調査によると、世界人口のうち、所得が低い下半分にあたる38億人の金融資産と、所得上位26人の資産額は同じだそうです。つまりマルクスの予言がいまや現実になっているのです。

また、地球環境の崩壊もマルクスは予言しているそうです。世界のGDPと温室効果ガスの排出量って、見事に比例しているんですよ。

多くのエネルギーを使う

森永 しかも、格差が拡大すると温室効果ガスの排出量も増えるんです。推計によって違うんですが、少なく見積もっても、富裕層は庶民の100倍、極端な数字では1万倍の温室効果ガスを排出しているんです。

アメリカの富裕層が、買い物や仕事にプライベートジェットを使うからです。そんなエネルギーの使い方をしているから、庶民の1万倍もの温室効果ガスを出してしまう。


『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(著:鈴木宣弘・森永卓郎/講談社)

アメリカの富裕層ほどではなくても、タワマン住民は庶民よりも環境に負荷をかけています。タワマン最上階のペントハウスまでエレベーターに1回乗るだけで、何十円という電気代がかかっています。

タワマンってベランダに洗濯物を干せないので、乾燥機で乾かすことになる。しかも全室空調完備で、人がいないときにも空調が作動している。水だって電動ポンプで汲み上げなければならない。

なにもかもが電気で動いているので、庶民的な生活より多くのエネルギーを使うことになる。

地球環境はあと5年で壊れる

森永 2023年7月は世界中が猛暑でした。世界の平均気温は史上最高を更新し、「歴史上最も暑い年」と言われています。

パリ協定では世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べてプラス1.5℃までに抑えるとしています。そうしないと地球環境が壊れてしまうんです。

しかし、世界気象機関という国連傘下の組織が、2023年5月にその地球環境が壊れる水準まで今後5年以内で到達する可能性が66パーセントと発表しています。

地球環境はあと5年以内に壊れちゃうんですよ。3分の2の確率で。

鈴木 そんなに切迫しているんですか。

森永 ええ。2023年8月、埼玉県ではずっと雨が降らなかったんです。

私、くわで畑を耕しているんですが、通常は土を少し掘れば水分がある。でも2023年は掘っても掘ってもまったく水分がないんです。こんなことは初めての経験でした。

干ばつが起きると地面にひび割れが走りますが、まさにあの状態になってしまったんです。作物もみなダメになってしまった。トマトは花が咲いていないし。

例年はだいたい12月上旬くらいまで収穫できるんですが、2023年はぜんぜんダメ。

一番被害を受けた作物

森永 一番被害を受けたのがスイカ。スイカって、水がなくなると、ボンッて割れるんです。2023年は夏まで絶好調で60個近くできていたんですけど、猛暑で半分が割れてしまいました。

鈴木 それは水を補給してももう間に合わないんですか。

森永 水を補給したんですけど、自転車で運ぶから、1日に撒けるのはせいぜい100リッターぐらいが限度なんです。

それくらいじゃぜんぜん足りなかったんですよ。もっとトン単位で撒かないといけないぐらい、土がカッサカサになっちゃってて。

私が農業の素人だからそうなったのかと思ったんですが、本業の農家に聞いても似たような状況だったようです。

※本稿は、『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(講談社)の一部を再編集したものです。