東京メトロ都営地下鉄の乗り継ぎ切符をうまく活用すると安く移動できる。写真は東京メトロ総合研修訓練センターの模擬施設(撮影:尾形文繁)

鉄道マニアの間でよく行われている「大回り乗車」をご存じだろうか。

これはJRの大都市近郊区間において、実際にはどんな遠回りのルートで乗車しても運賃は最短経路で計算されるというルールを活用し、初乗り140円切符で関東一円の各線をぐるっと回って帰ってくる……という「乗り鉄」を楽しむものだ。

これは途中の駅で改札を出ないことが条件なため、できることは純粋に「電車に乗る」だけであって、どこかへ用事がある場合には使えない。

だが、東京の地下鉄では「ある条件」に当てはまると、事実上の途中下車が可能な大回り乗車ができる。そこで今回のテーマは、この「ある条件」を使って、片道当たり140〜160円程度、つまり初乗り運賃より安く地下鉄に乗ろうという話である。

メトロと都営の乗り継ぎを上手に活用

ある条件とは「東京メトロ都営地下鉄の連絡駅で、改札を出て乗り継ぐ駅を目的地とする場合」で、かつ「発駅から着駅までメトロと都営地下鉄の乗り継ぎ切符で移動する場合」である。

東京メトロ都営地下鉄の改札外乗り換え駅(本稿で対象となる駅)は以下のとおりだ。

中野坂上、新宿、青山一丁目、六本木、麻布十番、月島、清澄白河、門前仲町、上野御徒町・仲御徒町、本郷三丁目、春日・後楽園、飯田橋、東新宿、新宿西口、押上、浅草、人形町・水天宮前、日本橋、東銀座、新橋、新宿三丁目、市ヶ谷、神保町、小川町、岩本町、住吉、大手町、日比谷
※ 白金高輪や九段下など、改札内で都営・メトロ乗り継ぎができる駅は対象外。

簡単にいえば、これらの駅周辺に用事がある際にメトロ・都営の乗り継ぎ切符を使うと、お得に移動できるかもしれないということだ。

都営地下鉄東京メトロの乗り継ぎ切符は、両者の運賃を合算して70円の乗り継ぎ割引が適用される。この切符、実際の乗り継ぎルートにかかわらず、運賃は最短経路で計算するというルールがある。

例えば、渋谷から新宿まで東京メトロ都営地下鉄を使う場合、渋谷―(メトロ銀座線・半蔵門線)―青山一丁目―(都営大江戸線)―新宿が最短ルートだが、渋谷―(メトロ銀座線)―浅草―(都営浅草線)―馬喰横山/東日本橋―(都営新宿線)―新宿、というルートをたどっても問題ないのだ。

東京メトロの路線同士、または都営地下鉄の路線同士でいったん改札を出て乗り換える場合は、60分以内に乗り継ぐことが運賃通算の条件だ。だが、紙の切符を利用して都営地下鉄東京メトロを改札外で乗り継ぐ場合は、乗り継ぎ時間の制限がない。

つまり乗り継ぎの駅周辺が目的地であれば、60分を超える用事を済ませたり、買い物や観光などを楽しんだりすることが可能なのだ。上述の渋谷から新宿までの切符であれば、メトロと都営地下鉄の乗り継ぎ駅である浅草で観光することができる。

浅草「乗り継ぎ」で散策を楽しむ

では、実際どんな区間ならおトクに使えるか。筆者が最初に試したのは、新宿から浅草に行き、浅草を散策して新宿に戻ってくるというルートだ。

新宿―浅草間は、東京メトロで往復すると484円(ICカードの場合)。だが、都営地下鉄東京メトロの乗り継ぎ券なら280円で、なんと200円もおトクだ。通常なら1駅乗るだけでも168円(ICカード運賃)のところが実質片道140円! これならGo To キャンペーンなんてやらなくても運賃42%OFFが簡単に実現する。

たどったルートは、新宿から東京メトロ丸ノ内線に乗り、赤坂見附で東京メトロ銀座線に乗り換えて浅草へ行き、1時間半ほど散歩と甘味を楽しんだ後、今度は都営浅草線で東日本橋に向かい、同駅と連絡する馬喰横山から都営新宿線で新宿へ、というものだ。


新宿―浅草―新宿の乗車ルート(筆者作図を基に編集部作成)

このルートになぜ280円で乗れるのか。それは前述の「最短経路」の考え方による。

丸ノ内線の新宿駅から都営新宿線の新宿駅に電車で行く場合、最短のルートは新宿三丁目駅乗り換えだ。同駅は新宿の隣の駅なので両線とも初乗り運賃となり、東京メトロは170円、都営地下鉄は180円。両者を合算したうえで、70円の乗り継ぎ割引が適用されて280円となる。

運賃の計算上はこのルートとなるが、制度上は必ずしも最短ルートを通らなくてもいい。このため、浅草で乗り換えても同じ運賃となるのだ。

ほかにも、実質的に往復となり、利用価値が高そうな区間を考えてみた。いずれも運賃は280円だ。

・新宿から上野広小路・上野御徒町へ(アメ横でショッピング!)
往路:新宿―(メトロ丸ノ内線)―赤坂見附―(メトロ銀座線)―上野広小路
復路:上野御徒町―(都営大江戸線)―新宿西口
*都営大江戸線で往復した場合=440円(実質37%安くなる)

・新宿から後楽園・春日へ(野球観戦に!)
往路:新宿―(メトロ丸ノ内線)―四ツ谷―(メトロ南北線)―後楽園
復路:春日―(都営大江戸線)―新宿西口
東京メトロで往復した場合=398円(実質30%安くなる)

・新宿から六本木へ(六本木ヒルズへ!)
往路:新宿―(メトロ丸ノ内線)―霞ケ関―(メトロ日比谷線)―六本木
復路:六本木―(都営大江戸線)―新宿
都営大江戸線で往復した場合=440円(実質37%安くなる)

・新宿から新橋へ(仕事での移動などに)
往路:新宿―(メトロ丸ノ内線)―赤坂見附―(メトロ銀座線)―新橋
復路:新橋―(都営浅草線)―大門―(都営大江戸線)―新宿
東京メトロで往復した場合=398円(実質30%安くなる)

気を付けるべき点は?

最近はICカード乗車に慣れてしまって忘れている方も多いと思うが、改札外乗り換えをするときは必ず「オレンジ色の改札機」を通ること。でないとその駅で切符は回収されてしまう。

また、もう1つ重要な注意点がある。出発駅からメトロと都営の乗り継ぎ駅までの片道運賃が切符の額面を上回る場合は、ルール上利用できないのだ。具体的な例を示そう。

たとえば荻窪から浅草経由で新宿に行くケースだ。乗車ルートは荻窪―(メトロ丸ノ内線)―赤坂見附―(メトロ銀座線)―浅草―(都営浅草線)―東日本橋/馬喰横山―(都営新宿線)―新宿になる。

この場合、運賃計算上の最短ルートは荻窪―(メトロ丸ノ内線)―中野坂上―(都営大江戸線)―新宿となる。両線とも初乗り運賃圏内なので前述の例と同様、280円で問題なさそうに思える。だが、荻窪から浅草までのメトロ線片道運賃は290円(紙の切符の場合)のため、最短ルートの乗り継ぎ切符の額面である280円を突破してしまう。浅草駅で改札を出ようとすると、運賃不足という扱いになってしまうのだ。

いかがだったであろうか。コロナ禍が来ても来なくても、どっちにしても節約を強いられている方は相当数おられるのではないだろうか。私もそんな1人である。そしてコロナ不況が続く中でも、社会保障のためと言いながら、大企業の法人税減税補填のために消費税を搾り取られ続けている今、ケチにならずして、何になれというのだろうか!? 庶民に対するエコノミック・ハラスメントに打ち勝つべく! ケチの美学を、追求していこうではありませんか!