写真はイメージです(以下同じ)
<亀山早苗の不倫時評>

 不倫相手の子を産む決断をした既婚女性がいる。すでに安定期に入り、あとは生まれてくるのを待つばかり。この決断をするまで大きな葛藤があった。そしてそれ以前から、彼女はかなり過酷な人生を歩んできた。

◆初めての女の子だとわかって

 少しふっくらとしたお腹に、ほんわかとした笑顔。レイコさん(40歳。以下、登場人物は仮名)は、おっとりとした雰囲気を醸しだしながら待ち合わせ場所にやってきた。

 結婚して13年、12歳を頭に男の子が3人いる。今度は4人目、初めての女の子だとわかっている。

「ただ、この子は夫の子ではないんです。私が生まれ初めて心から愛した人の子。だから産みたいと思った」

 夫はもちろん、そのことを知らない。初めての女の子だから楽しみにしている。不倫相手もまた、子どもをともに育てることはできないけれど楽しみだと言ってくれているという。

 だが、この決断をするまで、彼女にはもちろん、大きな葛藤があった。

「私は自尊心というものがまったくといっていいほどなかったんです。彼に会って初めて、自分が生きていていいんだと思えた。それくらいめんどうくさい女だったと思います」

◆父からの虐待、母は見て見ぬ振り

 幼いころから父親に暴力をふるわれた。父は何かあると母を怒鳴りつけるタイプだったが、その母が父を避けて夜は近所の飲み屋に入り浸るようになると、父は幼い娘をターゲットにした。高校を卒業するくらいまで、彼女は「殴られて育ったようなもの」だという。

「母は知っていながら知らんぷりでしたね。自分が狙われるのがイヤだったんでしょう。7歳離れた妹がいたんですが、妹に危害が及ばないよう私が黙って殴られるしかなかった。グレてやろうと思ったこともありますが、そうしたら負けだという意識もありました」

 家を出るには勉強して、父が黙るようないい大学へ行くしかない。彼女は必死に勉強し、見事に合格。父は学費は出してくれたが、暴力はやまなかった。

「今になって思えば、父は母、つまり自分の妻への苛立ちを私にぶつけていたのかもしれません」

 耐えられなくなって家を出た。それからは住み込みのバイトをしながら大学に通った。だが、結局、自分で学費を払い続けることができなかった。

「友だちもいなかったし恋愛もしたことがなかった。何のために生きているんだろうといつも考えていましたね。私なんていてもいなくてもいい存在だし、誰か必要としてくれる人がいるわけでもない。何かを変えたい。痛烈にそう思いました」

 そのために彼女が足を踏み入れたのが風俗の世界だった。お金を貯めて、もう一度大学に行こうと思っていたのだが、お金が貯まるとひきこもって過ごした。結局、4年近くたってようやく目標の数百万円が貯まった。

◆過去を詮索しない男性と結婚

「そんなとき、夫となるタイチと知り合ったんです。彼は2歳年下で、ちょうど就職が決まったところでした。彼と知り合ったのは偶然。街で私がちょっと過呼吸気味になったところを助けてくれたんです」

 そこからつきあいが始まった。彼女が風俗店に勤めていたことも話したが、彼は動じなかった。エンジニアとして仕事が決まっていた彼は、「ちょっと変わったオタク系の人」だという。

 彼にとって、彼女は初めての女性だった。そして何も詮索せず、すべてを受け入れてくれた。

 彼女は予定を変更して、ある専門学校へ入学、2年後に資格をとって仕事を始めると同時に、彼のプロポーズを受けて結婚した。

「私は親と疎遠になっていましたから、結婚式などは挙げたくなかった。彼はそれでもいいと言ってくれて」

 そこから彼女の人生は、大きく開かれていくはずだった。だが、仕事をしながら子どもを3人、産み育てていく中で、彼女はいつも息苦しいような鬱屈感を抱いてた。