セダンとハッチバックで表情の異なるシルエットに

 昨年11月にロサンゼルス自動車ショーで世界初公開され、日本でも今年2月の大阪オートメッセ2019に展示されて以降、大きな注目を集めている新型「マツダ3」。その国内仕様が5月24日、ついに発売された!

 東京都内で行われた発表会では、まず丸本 明 代表取締役社長兼CEOが登壇。2020年に100周年という節目を迎える、けっして大きくないマツダが、次の100年に向けて行っていくことは、人と共に創るマツダの独自性を打ち出していくことだと説明。そしてそうした考え方、人間中心の開発哲学に基づいて生み出されたクルマこそがマツダ3であるとコメントした。

 続いて開発主査の別府耕太さんが車両を説明。マツダ3は自分が自分らしくいられるクルマであり、心にゆとりが持てるクルマであると話した。初心者から熟練ドライバーまで自然と運転を楽しむことができ、また乗員すべての心と体に余裕が生まれ、乗るひとの毎日を鮮やかに彩ることができるクルマだという。

 3代続いた日本名「アクセラ」あらため「マツダ3」となるこの新型が、単にアクセラのフルモデルチェンジに留まらず、マツダ車全体のデザイン、プラットフォーム、パワートレインの世代交代を意味することは、過去にも幾度となく報じられているので、読者の皆さんもご存じのことだろう。

 その核となるのが、新世代の「魂動デザイン」と「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」、そしてSPCCI(火花点火制御圧縮着火)ガソリンエンジン「スカイアクティブX」だ。

 新世代「魂動デザイン」は、日本の伝統的な美意識「引き算の美学」に基づいて不要な要素を削ぎ落とし、シンプルかつ立体的で滑らかな面構成を与えることで、繊細な光の移ろいによって豊かな生命観と上品な美しさを表現する、というもの。

 新型マツダ3では、「凜とした伸びやかさ」をテーマとした4ドア「セダン」に伝統的な水平基調の3ボックスフォルムを採用しつつ、サイドパネルの前後方向にキャラクターラインを通すことによって、伸びやかかつ優雅なフォルムを形成。

 一方「スポーツ」改め「ファストバック」となった5ドアハッチバックは、「色気のある塊」をテーマとして「引き算の美学」をより徹底しており、ボディサイドにキャラクターラインを設けることなく立体的かつ滑らかな面を与えることで、繊細な光の移ろいを表現している。

 この新型マツダ3のエクステリアは写真や展示会場で見ても充分以上に優雅だが、走行中に光や景色の映り込みがボディの曲面に沿って艶めかしく変化するその様子は、まさにため息が出るほどの美しさだ。

 インテリアもこの「引き算の美学」に基づいて構築されており、マイナーチェンジ後のアテンザよりも一層シンプルかつ洗練された水平基調のデザインに進化。さらに、スイッチ類やメーター、エアコン吹出口などをドライバー中心に左右対称かつ正対するよう配置しつつ、視覚的ノイズとなる要素を極力減らすよう細部にまで工夫を凝らしている。

引き算の美学でシンプルながら存在感は抜群

 新世代「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」は、ボディ・シャシーのみならず、タイヤやシート、前述の運転席まわりも含め有機的に連携させることで、『運転姿勢を人間の歩行状態に近い状態に近づけ、長距離移動でも疲れにくく意のままに操れる挙動特性と運転環境を構築する』という考えに基づき設計されている。

 これらの考え方の多くは昨年マイナーチェンジしたアテンザやCX-3に先行採用されたが、新型マツダ3ではすべてのメカニズムが刷新されている。はたして日本の公道を走ったとき、この思想がどの程度狙い通りに実現されているか、大いに期待したいところだ。

 そして「スカイアクティブX」は、圧縮着火によるリーン燃焼の制御にスパークプラグを用いることで、従来考えられていたHCCI(予混合圧縮着火)では低回転・低負荷域に限られていた圧縮着火をほぼ全域で可能にし、ディーゼルエンジンの高トルクとガソリンエンジンのスムースさを両立。

 さらに、回生した減速エネルギーをベルト式ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)で電力に変換して24Vのリチウムイオンバッテリーに蓄え、モーターアシストなどに活用する「Mハイブリッド」と組み合わせることで、さらなる燃費改善を図っている。

開発段階からこだわったオーディオにも注目

 予防安全技術「i-アクティブセンス」もさらなる機能の充実が図られている。前進時に側方の死角から接近する車両を検知し警告する「前側方接近車両検知(FCTA)」、高速道路での渋滞時などに加減速と操舵をアシストする「クルージング&トラフィック・サポート(CTS)」、ドライバーの状態を赤外線のカメラとLEDで監視し居眠りや脇見を検知・警告する「ドライバー・モニタリング」を新たに設定。

「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)」も、ハイビームの遠方照射性能を高めつつハイビーム用LEDを20分割して、前方車両を検知した際のハイビームOFF範囲を縮小するなど、よりきめ細かな配光制御を可能にしている。

 そのほか、音の大きさ・方向・時間変化に着目し、車両設計段階から理想の音響特性を追求しスピーカーレイアウトを決定した、8スピーカーのオーディオシステム「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」を全車に標準装備。インフォテイメントシステム「マツダコネクト」も、8.8インチワイドディスプレイを採用しながらコマンダーの操作ロジックも見直すことで使い勝手を改善している。

 そして、新たに車載通信機を搭載し「コネクティッドサービス」に対応。D-Call Netやオペーレーターサービス、専用スマートフォンアプリ「MyMazda」との連携による各種通信サービスを利用可能とした。

 気になる車両本体価格は、先代アクセラに対し20万円ほど上昇しているものの、それ以上の価値が備わっているのは間違いない。

 日本仕様のマツダ3には2LスカイアクティブXのほか、1.5Lおよび2Lのガソリンエンジンおよび1.8Lディーゼルを設定。このうち1.5Lガソリンと1.8Lディーゼルは5月24日に発売され、2Lガソリンは同日より予約受注を開始し7月下旬に発売予定となっている。スカイアクティブXは7月に予約受注が始まり10月に販売開始される見込みだ。