ブランクを経て働くということ
日本では、団塊世代が後期高齢者となる2025年にかけて毎年100万人規模が労働市場から消えていく。構造的な人手不足に直面する中、多様な人材の活躍は社会にとって喫緊の課題。しかし子育てに一区切り付いた50代主婦は、政府が旗を振る「1億総活躍社会」や「女性活躍推進」といった施策の「蚊帳の外」にあるとシンシアさんは憤る。
「国は若い子育て世代には共働きを奨励してきました。ここへきて人手不足の解決策として外国人労働者の受け入れ拡大も表明しました。一方で、労働市場を畑に例えれば、50代以上の専業主婦が占める一角は『耕作放棄地』同然に放置されているのが現状です」
サービス産業を中心に、主婦を即戦力と積極活用する動きは広がっている。だが、その多くは代替可能な安価な労働力と捉えているのが実情だ。
「『社会人の学び直し』を推奨するなら、ブランクのある主婦層のスキルアップに、もっと目をむけるべきです」
政府は、宿泊や介護など5分野を対象に、外国人材の新たな在留資格を創設する方針だ。シンシアさんは「その影響を真っ向から受けるのが、現在、パートや派遣で働く主婦層」と危惧する。
「だからこそ人材流動を促す上で、実践的なスキルを高めるトレーニングの重要性が増しているのです。レストランでの接客ならプロとしての正しいサービスを教え、ファミリーレストランから将来は三つ星レストランにステップアップできる形で可能性を提示する。ホテルなら、スタートこそ清掃であっても予約業務などへ仕事の幅を広げる選択肢があっていい。本人の努力次第であることは言うまでもありませんが、同じ仕事に固定化されたままでは、主婦パートは、より若く安い労働力に代替される構図から脱却できません」
教育に二つの視点
国も「キャリア・リターン応援制度」をはじめ育児や介護などを理由に仕事を辞めた主婦らの再就職を後押している。ただ、パソコンスキルや面接対策だけでは長期的なキャリア形成には限界がある。
「ブランクを経て仕事に復帰する上で、トレーニングには二つの観点が必要です。一つ目は、レストランやホテルを例に述べたように、キャリアアップにつながる実践的なスキルの習得。人手不足で繁忙を極め人材教育の余力がない企業に代わり、自治体や大学、あるいは人材サービス企業などと連携する仕組みが現実的でしょう。もう一点は、組織で働く上での基本的な姿勢や人生は自ら舵取りしてくものだといった心構えを示すプログラム。甘えと決別し、本気で仕事に臨む『マインドセット』が狙いです」
自身は、常に「新しいスキル」を意識的に習得してきた。外交官の夫を支え、ナイジェリア、オーストリア、米国など5カ国で過ごし、日本に帰国後、就職活動を始めた時は50代を迎えていた。タイ駐在時代に、一人娘が通うインターナショナルスクールのカフェテリアのマネージャーとして働き始めたのが仕事復帰の第一歩となったものの、とりわけ日本では年齢とブランクが大きな壁として立ちはだかった。どうにかつかんだのは会員制クラブの電話受付のパートだった。
