世間は平昌オリンピック一色である。日本選手団が過去最高のペースで表彰台に上がっているから、テレビをはじめとするメディアが前のめりになるのも当然だろう。羽生結弦や小平奈緒が金メダルにつなげたパフォーマンスは、確かに何度見ても飽きることがない。
 
 ほとんど話題にのぼっていないが、女子アイスホッケーの五輪初勝利も大きな一歩だ。この競技は、8か国しか出場できない。五輪のリンクに立った時点で、すでに世界のトップ7入りしていると言っていい。トップ「8」ではなく「7」なのは、開催国の南北合同チームがランキング下位だからだ。

 サッカーのW杯なら大躍進と見なされる立場で、スマイルジャパンこと女子アイスホッケー代表は戦っているのだ。メダルの無い彼女たちが脚光を浴びることはまずないが、20日の5位決定戦で勝利すれば大変な成果だ。スイスに負けて6位に終わっても、チームの奮闘は称賛に値する。

 さて、平昌五輪が最終盤に差し掛かる今週金曜日から、2018年シーズンのJ1、J2リーグが開幕する……という事実を、果たしてどれだけの日本人が知っているだろう? 

 地上波のテレビを中心とするメディアが、オリンピック関連のニュースに時間を割くのは当然だ。プロ野球だって追いやられているほどである。

 それにしても、話題性に乏しいのではないか。

 6月にはロシアW杯が開幕する。今シーズンのJ1リーグは、W杯の代表入りを賭けたアピールの舞台でもある。例年よりも見どころがあるのに、一般的な認知度は低いと言わざるを得ない。

 日本代表が不甲斐ないからだと言われれば、率直に言って答えに窮してしまう。先週再開されたチャンピオンズリーグに日本人選手の姿はなく、欧州主要リーグで目を引くプレーを──1点取ったとかではなく、持続的な活躍を──見せている選手もいないから、報道しようにも手が付けられないのかもしれない。

 ならば、Jリーグからの発進はできないものか。リーグ戦をライブストリーミング配信する『DAZN』のTVCMがユーチューブで解禁されだが、情報の送り方としては限定的と言わざるを得ない。

 新橋駅前で街頭インタビューに答えるサラリーマンや、銀座の歩行者天国でマイクを向けられる主婦が認知することで、Jリーグの開幕が広く一般に知れ渡っていくはずである。情報の受け手として意識すべきなのはデジタルネイティブな世代に止まらず、もっともっと間口を広げていかなければいけないはずだ。

 たとえば、JRや地下鉄の構内、新宿の地下街といったところにポスターが貼ってある、という状況を作れなかったものか。あそこで見かけた、ここでも見かけた、という環境を作ることで、Jリーグがサッカーに関心のない人たちの話題になっていく。上映前の映画が、テレビや電車内や街中を見事にジャックするように、である。

 長野五輪が行われた98年当時は、2月の時点でも日本代表選手の「顔」が見えていた。2018年のいまはどうか。日本代表に定着しているJリーガーも、代表入りが期待されるJリーガーも、名前と顔が一致しないとの声を聞く。そもそも誰が日本代表にいるの、とも。

 代表の競技力がいまひとつなのだとしても、Jリーグの「いま」を知ってもらうプロモーションに欠けているのではないだろうか。目にする機会、耳にする機会が増えれば、自然と理解が深まっていく。4年の一度の冬季オリンピックがこれだけ盛り上がるのに、毎年開催しているJリーグの主役クラスが名前さえ憶えられていないのは、どう考えても寂しすぎると思うのだ。