好投も「めっちゃ、悔しい」沖永良部・奥間

沖永良部・奥間 卓斗

 樟南は初回、先頭の1番・今田 塊都(3年)がセンターオーバー三塁打で出塁。4番・河野 勝丸(3年)の内野ゴロが悪送球を誘い、先制した。2回以降は樟南・浜屋 将太(3年)、沖永良部・奥間 卓斗(3年)の両先発左腕の好投で、1点を争う緊迫した展開に。

 6回、樟南は二死一塁から、代打・吉内 匠(3年)の打球はセンターへの大飛球。センターが追いついたかと思われたが、風でひと伸びがあり、貴重な2点目のタイムリー二塁打となった。沖永良部は4度、先頭打者が出塁し、得点圏にも進めたが、タイムリーが出ず、浜屋、畠中 優大(3年)の継投の前に14奪三振を喫し、本塁が遠く、好投の奥間を援護できなかった。

 昨秋の九州大会8強、今大会第2シードの強豪・樟南を相手に6安打2失点。投手としては「100点の出来」(沖永良部・前田直紹監督)だが、エース奥間は「めっちゃ、悔しいです」と本気で悔しがった。

 本気で優勝を目指すなら、たとえ相手が樟南だろうと、自分の最高の投球をして勝利を導くしかない。そんな覚悟と決意でマウンドに上がった。いきなり三塁打を浴び、エラーがらみで失点と、投手としては試練な立ち上がりだったが、動じる様子はなかった。

「今までで一番苦しい冬練習を乗り越えたから、精神的には強くなった」レンガの重りをもって何度も何度もダッシュして走り込んだ苦しさを思い出せば、どんなピンチも平常心でいられた。先制されたが、一冬で磨き上げた直球の球威と、変化球のキレは、樟南打線にも十分通用した。球威に押され、打ち上げるシーンが何度もあった。

 以前はマウンドで喜怒哀楽を出すことが多かったが、今はどんなに良い投球ができても、逆にどれだけ打たれたり、味方のエラーがあっても、平常心で投げられるようになった。「油断しないこと」だけをマウンドでひたすら心掛けた。

 1月の新人戦で県ベスト16入りしたサッカー部と、両輪で学校を引っ張り、互いに全国を目指そうと切磋琢磨している。奥間のクラスメートにもサッカー部がいて「良い刺激になった」。野球部は昨秋、そして今春と初戦敗退。全国を目指す手ごたえはつかめなかったが「力は持っている。この2つの負けから自分たちの足りないものをどう学ぶか」と前田監督は夏までのカギに挙げる。「もっと走りこんで、仲間から一番信頼される投手になる」ことを奥間は、自分の課題に挙げていた。

(文=政 純一郎)

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