読む鉄道、観る鉄道 (16) 『ハチ公物語』 - 変わりゆく渋谷で語り継がれる珠玉のエピソード
渋谷駅で手続きをする菊さんと駅員(泉谷しげる)のやり取りがおもしろい。
映画と史実のハチ公には違いがいくつかある。
まず、ハチ公の晩年は野良犬ではなかった。
菊さん夫妻はずっと生きていて、ハチの世話をしていた。
忠犬ハチ公像を作るときは、モデルのハチを彫刻家のアトリエまで連れて通ったという。
ハチは自分の像の除幕式にも参列している。
1匹で渋谷駅前に現れた頃は駅員や露天商にいじめられていたけれど、新聞に載って広く知られるようになってからはかわいがってもらったらしい。
予防薬も与えられず、ハチはフィラリアにかかり、最期は渋谷駅前ではなく、目立たない場所でひっそりと死んでいたとのこと。
病気はかわいそうだったけれど、それなりに世話をしてもらい、幸せな「犬生」だったと思いたい。
ところで、渋谷駅はいま、大変革の真っ最中だ。
東京メトロ副都心線の開通、渋谷ヒカリエの開業に続き、東横線の地下化、地下鉄銀座線と埼京線のホームの移設、駅ビルの建て替えなどが行われる。
渋谷区の「渋谷駅街区土地区画整理事業」によると、事業の完成は14年後の2026年。
ハチ公前広場はどうなるかというと、道玄坂と国道246号線を結ぶ道路を閉鎖し、大きなバス・タクシー乗り場が整備される。
ハチ公前広場は現在の約1.5倍の広さになるようだ。
新しくなる渋谷の街で、ハチ公のエピソードは今後も語り継がれるだろう。